短期決戦
「ホンマに凄かったわー。 ワイも更に新しい技を作らないとこの先勝てへんやろな」
「そうですね。 私もシエンさんの戦いの後ずっと考えていました」
レビルもジグルドもわかっていた。
この先もあの鳥のような魔物が出れば自分達は負けるだろうと。『今のままなら』だ。
だから、進化する必要があると。
技の進化。
もしくは新たな技を。
ジグルドはまだしも、レビルまで静かに真剣に考えながら進んでいた。
残りの島は4つ。
そして、魔物がいる島は2つ。
次なる相手は既に見えている。
「あれは犬というより、、、猛獣か?」
「あの見た目、、、たしか聞いたことがあります。
『三つ首の番犬 ケルベロス』。 地獄を守護するものだと聞いております」
「ほう? 確かムムが読んでいた本に出てきていたな。
まさか本当に実在するとは」
三人でその巨大な犬を見上げる。
鋭い牙に鋭利な爪、真っ赤な目。
まさに地獄の番人である。
こんな迫力満点の相手だ。
早速レビルとジグルドも飲まれていった。
「なんやコイツ、、、ワイが恐怖するなんてゼノンはん以来やで」
「確かに恐ろしい、、、ですが---」
だが、恐怖を打ち払い、一人前へと進む。
ジグルドだ。
「地獄の番犬、大いに結構。 ですが私も不死の王と言われております。 同じ黄泉の国同士お相手願いましょう」
ジグルドがお辞儀をすると、犬は睨み付けた。
獲物を見つけた。
口元からはヨダレを垂らし、ジグルドをただの餌としか見ていない様子。
「さて、普通に戦っては一瞬で粉々にされてしまいますね。
まずは盾を、そして剣を、、、死者の国より出よ」
すると地面より裂け目が出来、巨大な腕が伸びる。
その得体の知れない者は、自力で裂け目を広げ這い出てきた。
さらにもう一体も続けて飛び出す。
飛び出してきたのは『死の炎王と
死の土王』
共にケルベロスと同じくらいの大きさであり、見るからに
イフリートが剣、ゴーレムが盾のようだ。
そして、この二体共にSランク級を遥かに超えているとゼノンは
看破した。
これだけの戦力を二体同時に出した事に、ジグルドの成長が伺える。
「中々に強いな。これで戦況は五分に持ち込めただろう」
「なんや、ジグルドの奴。 ワイと戦った時はあんなん出さなかったやないか!」
「恐らく、この連戦で手に入れたのだろう。 恐らくまだ他にも控えているのだろう」
ゼノンとレビル、そして、レビルの背中で眠るシエンの二人は
ジグルドの戦況を見守った。
その光景はまさに怪獣バトル。
ジグルドは毎回、大きい相手には大きい仲間を当てる為、毎回
戦いに迫力が出る。
今、目の前では二体の化け物と一体の化け物が争っていた。
ケルベロスの牙や爪をゴーレムが防ぎ、反撃とばかりに後ろからイフリートが炎魔法や打撃でケルベロスへと攻撃を仕掛ける。
とはいえ、ケルベロスも頭が三つあるので、事実二体三だ。
もちろん、ジグルドが召喚した二体も無限に出てられる訳では無い。
常時ジグルドの魔力を吸い取り、その体を保っていられる。
つまり、ジグルドの魔力が切れた瞬間、二体共消えてしまうということだ。
そのため、ジグルドは魔力が切れる前にこの戦いの蹴りをつけなければならない。
「ゴーレムよ、二体の首を抑えるのです。 イフリート、残り一体の顔を集中攻撃しなさい」
ジグルドが的確な指示を飛ばし、現在はジグルド達が優勢となっている。
それでも、ケルベロスの力は凄まじく、ゴーレムの体にも次第に亀裂が入っていた。
長期戦になればなるほど、ジグルドの魔力切れはもちろん、ゴーレムが破壊されてしまう。
つまり短期決戦。
だから、ジグルドも初っ端から攻めの手を緩めず猛攻を加えていたのだ。
「イフリート、地獄の業火です。ゴーレムよ地獄の地震」
二体の魔物がそれぞれ必殺技を使用する。
イフリートの放つ、この世に存在しない黒い炎がケルベロスを包み込み、その拳で巨大地震を起こせる技を直接ケルベロスに殴りつける。
ケルベロスは燃え続け、更には内蔵が破裂し、断末魔を上げる。
「地獄の業火はあなたが絶命する迄燃え続け、地獄の地震はあなたが絶命する迄体の組織を破壊します。 つまり、私の勝ちです」
危なかった。
この技はかなりの魔力を消費する。
魔力が満タンの時でも三分の一は減ってしまう。
それを二回も使ったのだ。
つまり、既に三分の二以上の魔力を失っていた。
もう少し長引けば負けたのはジグルドだったかもしれない。
そう安堵していると、突如イフリートの首が落とされ、ゴーレムの体が粉々になった。
「ッ?!!!」
ジグルドはまだ二体の魔物を片付けてはいない。
となれば、攻撃を受けたからこうなった、、、しかし、相手の姿が見えないのだ。
いや、見えないけど見えた。
未だに燃え続けるケルベロスの内、頭が一つ無くなっているのだ。
三つあった首が二つになっている。
つまり、分離したということ。
そして、そいつが二体の召喚した魔物を殺したのだ。
だが、ケルベロスの姿が全く見えないし感知できない。
その時、ゼノンが声を張り上げる。
「ッ?! ジグルド! 上だ!」
ゼノンの声にジグルドは上を見上げる。
するとそこには首が一つとなったケルベロスの姿が。
てっきり首だけかと思ったが、どういう訳か五体満足の状態だ。
そして、何よりその速さが凄まじかった。
「ザシュッ!!!」
ジグルドの体が粉々になる。
他に骸骨の姿が見えない為、変わり身もできていない様子。
(悔しい、、、私はこんな形で死んでしまったのか?
慢心から来た隙。 もっと修行したかったですね)
ジグルドの頭蓋骨の瞳から生気が失われ真っ黒となった。
ジグルドは死んでしまったのだ。
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