最強の相手
レビルとシエンがふらつきながらもゼノンとジグルドの待つ場所へと歩み寄る。
かなりの激戦であり、これまでの疲労もあるため満身創痍だ。
レビルは辛いながらも勝利した事に微笑んでいたが、シエンはどこか寂し気な表情をしている。
恐らく、あの羊になんらかの感情を持っていたのだろう。
それでも、顔を下げることなくしっかりと前を向き歩いていた。
「よくやった二人とも。 共に辛い戦いであっただろう。
残るは恐らく三体。 ここで十分に休息を取ってから行くとしよう」
流石にこのまま行く、もしくは小休止だけでいけるほどの
相手では無い。
「残る島は五個。 そして、残る魔物がいる島は三個。
次の相手を倒せばゴールのはずです」
「せやな、ようやくこの試練も終わりか。 マジで毎回ギリギリやで」
「楽勝の相手と戦っても成長する事はあるまい。 恐らく次が妾達の壁となろう」
三大恐慌がそれぞれ談話する。
この光景を地上世界の者たちが見たら驚愕するだろう。
それほどに恐れられているのだから。
だが、その三大恐慌を持ってしても、毎回綱渡りのような戦いを行っている。
そして、シエンの言う通り、次の相手は勝てるかも分からない。
このまま順当にいくのであれば、残り三つの島は今までよりも更に強い魔物がいるはず。
最悪の場合はゼノンも出ようと思っている。
もちろん、仲間が死ぬ前に。
だが、そんな事は起きないとも信じていた。
ゼノンの頼もしい仲間ならやってくれるだろうと。
「ゼノンはん、わいめちゃくちゃ腹減ったんやけどなんかあらへん?」
この緊張した場には不釣り合いな発言。
だが、それでいい。
レビルの空気を読めない発言がかえって皆の緊張を和らげる。
彼の存在は精神面で大いに助けられることとなるだろう。
「シリュウが作ってくれた非常食ならある。
ちょうどいい。 ここで食べるとしよう」
「では私も味を楽しむために人間に戻りましょう」
「骸骨だと味覚もへったくれもあらへんのう!」
「これが最後の晩餐とならぬ事を祈ろうぞえ」
その後も四人は談話しながらもシリュウお手製の料理を食べ
しっかりと体力を回復した。
「では行くぞ」
ゼノンの言葉に皆が頷く。
次の島へ進むべく、橋を渡る。
遠目から見える島だけ、何やら天候が悪い。
雷雨が激しく降り注ぎ、竜巻も起きている。
まるで空災が凝縮されたような場所だ。
「どうやらここは妾の方が良さそうじゃな」
そう言って一歩前へと進みでる。
何故ならばここの魔物は、、、
「あれは鳥、、、いや、不死鳥?」
「いや、違うな。 不死鳥とは違うなにかだ」
この悪天候の中、悠々と空を飛び交う一匹の鳥。
それもただの鳥ではない。
かなりの大きさを持ち、体は何やら帯電している。
この天候はあの鳥の仕業だろうと皆が予測する。
「頼んだでシエン」
「我等の中でも最強と謳われるあなたが負けるはずもありません」
「また帰ってこいシエン」
皆から背中を押される。
シエンにも龍の住処には家族が沢山いる。
だが、こういった仲間の存在もいいものだとここにきて実感してきた。
何故ならば気付くと自分が微笑んでいることに気が付いたから。
「ふっ、異種族の仲間か、、、必ず勝って戻るから待っておれ」
そうして、魔力を一気に解放する。
「これが最後の戦い。 妾の名はシエン! 古代の龍のシエン! 勝負じゃ!!!」
一気に龍形態へと変身し空を舞う。
そして、鳥もシエンの姿を目視に捉えると同じ高さまで降りてきて向かい合った。
やはり、鳥もかなりの大きさを有している。
シエンと並ぶとよくわかる。
互いに向かい合い、互いを観察し合う。
緊迫した空気がレビル達を襲う。
「先に動くは凶となる。 そうおもってるんやろうな」
「えぇ、互いに」
「あの鳥は私でも手を焼くかもしれぬな」
「ッ?!」
ゼノンをもこう言わせる程の相手とは思いも知らず驚く二柱。
だが、それと同時に勝てる。ということを教えてくれた。
それならばシエンにも可能性はある。
レビルもジグルドも、そしてゼノンもシエンの勝利を願う。
「龍の伊吹」
対峙して早々、いきなり攻撃を放つシエン。
様子見などしていい相手では無い。
隙あらばこちらから攻撃を繰り出す。
鳥は巨大な翼でもって旋風し、シエンと鳥の間を遮る程の竜巻を起こすと風によりシエンの放った火は消え去る。
が、竜巻の陰に隠れ突如現れるシエン。
もとより、この攻撃が喰らうとは思っておらず、竜巻を目隠しに
距離を詰めていたのだ。
「龍の爪撃」
鋭い爪から繰り出される斬撃。
完全に不意をついたつもりであったが、鳥も冷静に脚の爪で斬撃を飛ばし相殺する。
「龍の双爪撃」
二つの腕でもって更に連撃を繰り出す。
だが、それでも尚鳥も反撃をしてシエンの攻撃を凌ぐ。
二体が暫く近接戦を繰り返すと、シエンが魔力を高める。
「龍の怒り」
超近距離から繰り出すシエンの上位魔法。
攻撃範囲、威力、共に抜群であり喰らえば死ぬか、良くて重症となる。
それでいてこの距離である。
シエンの前を一面炎が埋め尽くす。
「ヒュンッ!」
突如物凄い突風がシエンを襲う。
そして、体の一部が切り裂かれる。
鳥が炎の中、体を回転させながら突っ込んできたのだ。
先程、シエンがやっとように鳥もシエンの炎を目隠しに使いやり返してきた。
「くっ、、、小癪な!!!」
同じことをやり返された事への怒りと傷への痛みに震えながら
シエンは鳥を睨み付ける。
まだ戦いは始まったばかりだが、鳥が僅かに押しているのであった。
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