第六の島
次の島へ行く前にシエンの回復を待とうと思ったが、次の島が終わればちょうど半分の為、次を攻略したら休もうという案になった。
その為、ゼノンがシエンを抱え次なる島をめざす。
橋を渡っている最中、暇になったのかレビルが口を開く。
「なぁ、ゼノンはん。 ゼノンはん的に三大恐慌の中で誰が一番手強かった?」
唐突な質問ではあるが、ジグルドも気になる様子で耳を傾けている。
そして、そんな他愛もない質問に思わず笑みを零すゼノン。
「ふっ、誰が一番手強いか、か、、、それぞれが得意分野を
持っており、それぞれが苦手分野もあった。
つまり、三柱とも同じくらいだな。 だが、この三大恐慌以上に苦戦した相手はいなかった。 いや、一人だけいたな」
三大恐慌よりも強い相手?
一体誰だと、レビル達は疑問に思うもその答えは直ぐに閃いた。
「あぁーーー、奥方やな? 確かに、わいらでも精霊王には勝てんやろうな」
「確かにそうですね。 というより、私は以前戦いましたよ。 ゼノン様程ではないにしろ、完敗でしたね」
そう。ゼノンに次いで地上世界で最強と言われているのが
精霊王たるメフィーロだ。
彼女は元々ゼノンよりも強く地上最強の生物と言われていた。
そして、その存在は幻の存在となり、今では本に出てくる存在と認知されている。
つまり、実在しないと思っている人がほとんどなのだ。
だが、ゼノンが弛まぬ訓練を積み、とうとうメフィーロにも勝ったのだ。
つまり夫婦して、一位二位を独占してる状況となった。
「せや、この戦いが終わって自分に自信がついたらその時はまた戦ってくれやゼノンはん!」
突然の案ではあるが、ジグルドも賛成のようで賛同しだした。
とはいえ、この二人とも久しく戦っていない為、それもアリなのかもしれない。
そうこうしているうちにようやく次なる島が見えた。
いや、島と言うよりもここは・・・・・・。
「海、、、やな?」
「海、、、ですね」
「海と言うよりは湖か?」
そう。目の前には島の中心に大きくある湖。
その湖はとても美しく澄んでいる。
だから、中にいるものも丸見えであった。
「あれは蛇のようですね。 それもとてつもなく大きな」
海底には黒く長い影が見えている。
一体何mあるのか。 下手をすると何kmもあるかもしれない。
だが、レビルは微笑んでいた。
なんたって、
「ならわいの得意分野やな! 水はわいの十八番や!
そんじゃ、行ってくるわ!」
レビルは勢いよく湖に飛び込む。
そして、レビルの飛び込んだ場所が光り輝く。
海の皇帝へと姿を変えたのだ。
その体長はとてつもなく大きく、相手の蛇とほぼ同じ。
レヴィアタンの体長は1kmほどある。
つまり、相手の蛇もやはり1km程の長さを持っていることになる。
互いに水深深くにいる為、上からだとあまり見えないが、それでもその巨体の為、影で見て取れた。
「なんや蛇助! わいは蛇の王やぞ? 勝てると思ってるんか?」
わざわざ挑発する。
だが、レビルにはわかっていた。
相手の方が魔力量は上だと。
恐らく普通に戦ったら負けるのはレビル。
その為、相手に技をたくさん使わせ、魔力がトントンになった所でこちらも攻撃をする。
そういった作戦でいこうと思っていたのだが、思惑は外れた。
数百mはあろう距離をとっていたにも関わらず、蛇が一気に加速して近接してきたのだ。
てっきり魔法を撃ってくるものだとばかり思っていたが故に
初動が少し遅れてしまう。
「ちッ!!! いきなりこっち来んなや! 水流速」
自信の素早さを上げる魔法を使い、その場から瞬時に退避する。
相手に使わせたかったのに、コチラが魔力を消費してしまった。
初っ端から思うようにいかず、僅かに苛立ちを覚える。
「こうなったら、わいの魔力が切れる前に蛇助を殺してやるよ!
龍激波!!!」
レビルの口が大きく開かれ、数多の水龍が水中を泳ぎ蛇へと向かう。
その龍一匹一匹がレビルの半分の力を持つ。
それが数十体居るのだから、喰らえば蛇であろうと致命傷は避けられないだろう。
レビルの技が迫る中、さすがの蛇もまともに喰らうのは得策では無いと判断したのか、魔力を溜めて解放した。
レビル同様、蛇の口からいくつもの水龍か飛び出す。
この魔法は水中系究極魔法の一つであり、地上世界で使えるものは誰一人いない。
だが、蛇は使えた。
それが神の領域に住む生き物の強さだ。
そして、レビルも驚きはしない。
自分だけの技だと慢心すること無く、相手も使えるだろうと予測していた。
予測していたからこそ、追撃を既に放っていたのだ。
「わいの専売特許やなかったかいな。 まぁいい。 断水波!」
レビルの口から放たれる波動。
水中であるにも関わらず、その波動が通った場所には水がなかった。
綺麗に空気の道が出来ているのだ。
水が無くなるほどの、その力。
蛇には目の前の水龍で見えなくなっていたが、突如一体の水龍の
腹に穴が空き、蛇目掛けてその波動は飛んできた。
流石の蛇もこの距離では避ける事が出来ず、胴にその技を喰らい
肉が抉れてしまった。
堪らず悲痛の叫びを上げる。
どうやらかなり効いた様子。
レビルはしめたと言わんばかりに、先程の技を連発する。
蛇は先程の痛みからか動きが鈍くなっており、次々に被弾する。
そして、体がどんどんボロボロになっていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、これでしまいや! 断水波」
蛇の頭目掛けて飛び出す。
トドメの一撃だ。
「グサッ!!!」
突如レビルの体に痛みが走る。
見れば自身の体に蛇の尻尾が突き刺さっていたのだ。
それも奥まで貫通している。
蛇が攻撃する素振りは見えなかったし、現に見ていない。
それなのに、何故喰らったのか理解が出来なかった。
「なんでや! くっ、、、そうか、わいが龍を目隠しに使ったようにお前もワイの断水波を目隠しにして技を撃っていたんか!」
蛇の尻尾は剣の様に鋭利となっており、更に先端は超振動で切れ味を増していた。
だから、レビルの硬い鱗をものともせず貫通してきたのだ。
「くっ、肉を切らせて骨を断つ、、、か。 流石にこのダメージはキツイのう」
真ん中の骨を抉り取られた。
体を動かくのも億劫である。
更に、悪い事に魔力も残り僅か。
もしかしたら、相手が蛇だからと油断したのかもしれない。
(くっ、、、わいは負けるんか? ジグルドとシエンが繋いでくれたのに負けるんか? ゼノンはんが信じて待ってくれているのに負けるんか?・・・・・・否や!!! 断じて否や!!!)
突如レビルの魔力が一気に増幅しだした。
「命賭水得!!!」
自らの寿命を糧に、水より力を得る。
これは禁忌技の一つであり、海の皇帝の奥義だ。
そして、もう一つ。
「これがわいの本気の本気や。 これが防がれたらわいの負けや。
行くぞ! 皇帝の天災」
突如大気が震え波が揺れる。
島全体が揺れ動いているのだ。
そして、次の瞬間蛇の居る列の水が一気に引いてしまった。
まるで、水が蛇を避けるのかのように。
慌てる蛇であったがどうしようも出来ない。
技が出ないのだから。
そして気付けば自身を覆う大きな影。
何百mもありそうな程の高い津波となって押し寄せていた。
それも両端から。
その全てが水龍へと変貌しているのだ。
防ぎようの無い水龍の津波。
そして、蛇は一瞬にしてその大津波に飲み込まれた。
まさに天災である。
この技が地上世界で発動されたら、皆が為す術なく死ぬことになるだろう。
ゼノンもさすがに障壁を強化しなくては破られる可能性があった為
強化していた。
それほどに、強力な技であり、海の皇帝に相応しい究極の魔法であった。
どのくらい経っただろうか。ようやく荒ぶる波も穏やかになると、
水面下から光の粒子が舞い上がる。
それを見て、皆が確信した。レビルが勝ったのだと。
そして、光の粒子を見て安堵する三人。
長い戦いであったし、格上相手であったが、なんとかレビルが勝利をもぎ取るのであった。
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