第五の島
ジグルドのおかげで四個目の島も無事に攻略した。
これで、ようやく三分の一が終わったのだ。
それでいて、ジグルドは既に満身創痍といった感じ。
先程、魔力のほとんどを注ぎ込んだ技を放ったのだから当然だ。
そして、あの技を繰り出さなければ戦いは長引いていただろうし、下手をすれば負けていたかもしれない。
あの選択はゼノンも正しかったと思っている。
そんなジグルドを気遣うゼノン。
「大丈夫か? もし、お前が限界と言うのならこの先は私が
出ても構わぬぞ」
ジグルドの目をしっかりと見てそう話す。
そして、彼の目。 正確には骨の為、目はなく真っ黒ではあるが
彼からは未だ闘争心が煮えたぎっているのを感じられた。
「いえ、この先の二戦で休憩すれば大丈夫です。 それに、先程も言った通りゼノン様の出る幕は恐らくありません。
ちゃんと我々がこの十二の島を攻略するので」
魔力は枯渇しかけており、体の傷もまだ癒えてはいない。
それでも、これだけ大口が叩けるのだからゼノンが手を出すのは無粋というものだ。
ジグルドの応えに笑みを浮かべると、再び湧き上がった橋を進む一行。
次なる島が見えてくる。
今までとは全く違う環境だ。
何より天候もどんよりとした雲が一面を覆っている。
更にはそこら中で雷鳴が鳴り響いていた。
地上は岩でゴツゴツしており歩きにくい。
このフィールドだけでもその危険性がよく分かる。
そんな時、暗雲の中より落雷と共に一匹の竜が舞い降りる。
体を雷が迸っており、体は緑色。
頭には長い立派な角が二本。
紛れもなく、相手は龍だ。
「ほう。 ここにも龍がおるとはのう。 それも地上世界では見たこともない容姿じゃ。 ふむ。 悪いがこの相手は妾がやらせてもらうぞえ」
誰も反論はしない。
元々ジグルドは休む予定だったし、レビルも下手にシエンを刺激すると返しが怖いので何も言わない。
「シエン、本物の龍というものを見せてやれ」
前を歩くシエンの後ろより聞こえる激励の言葉。
ゼノンはそんなに長くは語らない。
だが、その短い言葉でも三柱にとっても大きな言葉となり支えとなるのだ。
シエンは振り返らず微笑むと、体を発光させる。
「ぐおおおおぉぉぉぉおおおッ!!!!!!」
シエンも本来の姿である、古代の龍の姿へと変わった。
流石に人間の姿のままでは相手にならない。
それに手加減して倒せる相手でも無いようだ。
「こんなに強力な力を持った竜に会うのは初めてじゃな。
だが、妾は龍王。 負けることは許されぬ!!! 龍の息吹」
口より強力な獄炎魔法を放つ。
しかし、相手の龍も易々と受ける訳でもなく、反撃とばかりに
口雷が迸り、稲妻が解き放たれる。
互いの技がぶつかりあり、火が舞い雷が飛び交う。
まさにその光景は天災だ。
ゼノンが自身と仲間に障壁を張っているが、それ以外の地面は粉々になったりマグマが流れている。
地形変動が凄まじい。
互いにぶつかり合い、爪で裂き、牙で砕く。
力は互角。
魔力も互角。
つまり、互いの体力や気力勝負になるだろう。
長引きそうな戦いではあるが、一瞬たりとも目が離せない。
徐々に互いの体は傷が増え、魔力も消費しいった。
恐らく最後にドカンと大きな技を互いにぶつけるだろう。
「ここまで強い竜は初めて見るのう。 だが、負けはせぬ。
妾の勝利を待つ者が、妾の勝利を信じるものがいる!
これで終いじゃ! 古代龍の怒り」
これまでのフレアとは比較にならない程、猛烈な熱量を出している。
その火炎放射のような光線が通る道は一瞬で溶け、全てが灰すら残さず消えてく。
そう。この炎は燃やす炎では無い。
消す炎なのだ。
存在を否定する炎。
それも一瞬で。
さすがの竜もこの技にぶつかるのはまずいと予知する。
だが、回避行動を取ることはない。
なぜなら、ソレをすれば相手から逃げると言うことになるからだ。
竜も反撃とばかりにありったけの魔力を使い技を解放する。
空から次々に竜へと雷が降り注ぐ。
まるで、雷が吸い寄せられるかのように。
そして、竜は蓄電するとそのまま口より雷撃を解き放つ。
周りの木々が一瞬で灰になったかと思ったら塵と化す。
この雷もまた、生存を否定する雷である。
互いの技が、周り岩や木々を消し尽くしながら距離を詰める。
「どごぉぉおおおおんッ!!!!!」
激しい轟音と衝撃波が辺りを襲う。
ゼノンも、先程より更に強化した障壁を張る。
でないと自分達も消し炭になってしまうからだ。
その間も辺りをマグマが流れ、雷が降り注ぐ。
ここはまさに地獄を具現化した様な場所だった。
レビルやジグルドも思わず唾を飲む。
今までの戦いとは比べ物にならないほどの激戦だ。
お互い龍同士なのだら派手なのは当然だが、それ以上に何か見入ってしまう何かがあった。
そして、二体の龍は未だに口から攻撃を放っていた。
切らした方が恐らく負けだ。
どちらも魔力は残りわずか。
そうして、見守っていると、なんと先に切れたのはシエンだった。
シエンが口を閉じても尚、雷撃を放ち続ける竜。
竜も勝ったと心の中で思ったはず。
だが、シエンは魔力が切れたわけではなかった。
敢えて口を閉じたのだ。
空高く飛び立つと、新たに残ってる魔力を解き放ちフレアを放つ。
まさかの行動に竜も反応が遅れ、思わず回避行動を取ろうとしてしまうが、遅かった。
モロに直撃してしまい、悲痛な断末魔を上げながら光の粒子へと変わっていった。
地上へと降り立つシエン。
既に人間へと変化していた。
そして、彼女もまた満身創痍であり、足元がふらついている。
あれだけの激戦を繰り広げたのだから当然だ。
それでも気丈に振る舞い笑顔でゼノン達に手を振るう。
が、とうとう気を失ってしまった。
その場に倒れそうになるシエン。
レビルとジグルドが駆けつけようとするも、その必要はなかった。
「ふむ。 よくやったなシエン。 お前の戦いはしかと目に焼き付けたぞ」
ゼノンが既にシエンを抱えていたからだ。
こうして、激しくギリギリの戦いをシエンが制して五個目の島も無事に攻略したのであった。
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