第二の島
鼠の様な生き物を倒すと次なる島への橋が架かった。
「なるほどな。 島の魔物を倒していけば次なる島へと進めるわけだ。 12個の橋の先には私以上の魔力を持っている者がいるようだ」
ゼノンの言葉に驚くも、神なのだから納得ではある。
「要は、まずこの12個の島を攻略していけばいいという訳ですね?」
「せやな! わいは今の戦いで疲れたから次は他の人がやってや?」
「ふん。 あの様な鼠一匹で疲れるとは、やはり『蛇』も大した事ないのう」
煽るシエンに、憤怒するレビル。
「な、なんやと?!!! 見たやろあの鼠!!!
あんなのが地上に居ったらそれこそ三大恐慌ならぬ四大恐慌になるほどの実力やで!!! 相手の力量もわからないなんてさすがは『トカゲ』様やな!」
互いに煽り合う。
すると、当然今度はシエンの眉間に皺が入り、怒りを顕にしていた。
そこから始まるのは幼稚な言い争いである。
そんな二柱に頭を悩ます不死の王たるジグルド。
ジグルドとは彼の生前の名だ。
親しいもののみがその名を口にできる。
つまりゼノンだ。
いや、今では家族皆も不死の王をジグルドと名前で呼んでいた。
「やれやれですね。 これからまだたくさん戦わないといけないというのに、ここで争っては時間の無駄ですよ。
ほら、ゼノン様はもう先に行かれてしまった」
ジグルドの言葉に二柱は目をゼノンに向けると、既に橋を渡っていた。
途端に二柱は恥ずかしくなり、仕方ないと言わんばかりにゼノンの後を追う。
「乳くりあうのもいいが、集中しろ。
レビルの言う通り、この先も一筋縄ではいかぬぞ。
お前達も強くなりたいのなら、この12個の島はお前達だけの
力で打破しろ」
ゼノンのその言葉に、先程まで喧嘩してた二柱も途端に真面目な面持ちへと変わる。
確かに油断出来ない相手だ。
そして、恐らくこの島々で鼠が一番弱い。
一番弱くてアレなのだ。
三人は再び集中し、次なる島へとゼノンと共に向かった。
「あれは・・・・・・牛やな? それも普通の牛・・・・・・」
四人の目の前に現れた次なる相手は、なんと『牛』だった。
ミノタウルスの様な人獣型の魔物ではない。
本当にただの四足歩行の牛なのだ。
心做しか、牛の表情もとても穏やかである。
強いて言うなら普通の牛よりも巨大であり、二回り、、、
いや、三回り、四回りくらい大きい。
つまり、とにかく大きい牛が目の前に居た。
「油断するなよ。 恐らく、先程の鼠より強いぞ」
いきなりの牛の登場に麺を食らったが、ゼノンの言葉で再び気を引きしめる三柱。
次は誰が出るのか。
すると、一人の男が前に歩み出す。
「では、次は私が行かせてもらいましょう」
不死の王たるジグルドだ。
他の二柱とは違い、ジグルドは油断など一切していない。
崇拝するゼノンの言葉もあるが、それ以前にジグルドは
どんな相手でも油断は見せないのだ。
「ジグルド・・・・・勝て」
ゼノンは一言だけ伝える。
すると、笑みを浮かべそのまま歩み出した。
「お任せ下さい我が主」
牛の前に立ちはだかる。
そして、目の前の牛の大きさに改めて驚く。
だいぶ見上げているのだから。
「ふむふむ。 これでは一瞬で潰されてしまいますね。
では、参りましょう。 骨の巨獣」
ジグルドが手を前にかざすと異空間が開き、そこから次々に骨が噴出する。
その骨達は次々に組み上がり、いつの間にか牛と同じ大きさ程の
骨の怪物が出来上がった。
まずは大きさのアドバンテージを無くしたのだ。
「さぁ、力比べです。 行きなさい!」
骨の怪物が牛目掛けて走り、そのまま突っ込む。
「ドッシーーーッン!!!」
辺りに余波が来るほどの衝突。
大きい魔物同士の戦いは迫力が凄かった。
それほどに、骨の怪物の突進は力強かったのだ。
こんなのを喰らえば流石の牛も多少傷を負うだろう。
そう思っていたのだが、安直であった。
目の前には無傷の牛が。
それも、屁でもないといった様子でいるのだ。
それにはジグルドも頭を悩ます。
「やれやれ。 これが効きませんか。 ですが、まだ勝負は始まったばかりです! 骨の矢、骨の槍、骨の弩砲」
遠距離から連撃を繰り出すジグルド。
地上ならSランクの魔物でも原型が無くなるほどの攻撃だ。
多少は傷を付けれたものの、牛は痛みに怒り出してしまった。
「ぶもぉぉおおおッ!!!!!!」
骨の怪物目掛けて今度は牛が突進をする。
その威力は先程食らわせた突進とは比べ物にならない程に強力であった。
骨の怪物は、ジグルドが魔力で強化しているにも関わらず、一瞬にして瓦解してしまったのだ。
こんな芸当が出来るのは地上世界ではゼノンか三大恐慌くらいのものだ。
容易に破壊され、再び頭を悩ますジグルド。
「困りましたね。 私の大切な守りが一瞬で無くなってしまいました。 それに、小さな攻撃も全然効いている様子がありません」
そんな困り果てた姿を見ていたレビルやシエンは不安になる。
「なぁ、シエン、、、変わった方がええんちゃう?」
「そ、そうだな。 まだ二つ目だというのにこんな場所で挫けたらこの先が思いやられるのう。 ゼノンはん、どうじゃろうか?」
二柱はゼノンを伺うも、表情は変わっていない。
そして、ゼノンはジグルドが無理だとは一ミリも思っていたなかった。
「心配する必要はない。 あのものの力はこんなものでは無い。
私の最強の配下だぞ? 見ていろ」
ジグルドが不利に思われるが、絶対の信頼を持っているようだ。
ゼノンにここまで言わせたのだから、流石にシエン達も邪魔をするのは無粋というものだと理解する。
三人は再び戦いに目を向けた。
「その硬さ、そして力。 地上世界では見たことがありませんね。 だいぶ骨が折れそうですよ・・・・・・骨ジョークです。
冗談は置いておいて、我が主が見ているのです。
無様な姿は見せられません。 そろそろ降りてくる頃ですね」
ジグルドが指を上に指す。
すると牛やシエン達も上を見る。
なんと、隕石が降っているのだ。
熱を帯びて業火を纏っている。
よく見れば中身は骨の塊だ。
「流石の硬さでも、隕石は防げないでしょう。
少しは強かったですが、まだまだです。
では眠りなさい。 骨の隕石」
牛は冷や汗をだすも既に遅い。
力はあっても、守りは固くても、スピードがなかった。
最早避ける時間もなかったのだ。
「どごおおおおんッ!!!!!」
牛目掛けて直撃する隕石。
その衝撃波は先程の突進とは比べ物にならないほどの余波だ。
こんなのが直撃したのだから、牛はたまったものでは無い。
現に、土埃の中からは光の粒子が上へと舞っていた。
つまり、牛は今の一撃で死んだのだ。
なんだかんだ、余裕のある感じで牛を倒したジグルド。
彼はゆっくりとゼノンの元へと向かってきた。
「如何でしたか? これは私が最近創った魔法です。
魔力の消耗は著しいですが、それなりの威力です
楽しんで頂けましたか?」
確かにジグルドの魔力は三分の二くらいは減っていた。
つまり、あれが効かなければジグルドが負けていたということだ。
とはいえ、倒せたのは事実。
ゼノンは少し微笑みジグルドを労う。
「うむ。よくやった。 さすがは不死の王だ。
まさに王の一撃であったぞ」
ジグルドも満更ではないようで口元が緩む。
「ありがたき幸せ。 いつか私が強くなったのならまた勝負していただけますか?」
最初にボコボコにされて以来、ゼノンに勝負を仕掛ける意思は完全に消えていた。
それほどに実力差を感じていたからだ。
だが、今回の戦いで再び高みへと目指したくなった。
そして、ゼノンへも挑戦したくなっていたのだ。
そんなジグルドに手を出すゼノン。
「もちろんだ。 だが、まずはここの戦いに勝利してからだ」
ジグルドもゼノンの手をしっかりと握り返し頷く。
こうして、第二の関門もジグルドの力でクリアするのであった。
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