神への門
楽しい家族旅行もあっという間だった。
レオンやイヴ達と狩りの練習をしたり、フレイにまた氷を張ってもらいアイススケートを楽しんだり。
一番はやっぱり綺麗な海で泳いだ思い出がみんなの頭の中に残っていた。
そして今、、、ゼノンの目の前にはレイラが創った神への扉が置かれている。
一見普通の扉に見えるが、実力のあるものならばこの扉が如何に危ないものなのかは瞬時に理解できるだろう。
扉から放たれる神々しくも禍々しいオーラが漏れているのだ。
まだその扉は閉まっているというのに。
「はぁ、はぁ、はぁ、お、お父様、、、すみません。
私の魔力では開くことは叶いませんでした」
そう。目の前の扉はただ置いてあるだけだ。
開かれてはいない。
というよりも、地上に住む者でこの扉を開ける者などゼノンとメフィくらいなものだろう。
いや、ゼノンを持ってしても開かないかもしれない。
それほど、神への道は生半可な力ではいけないのだ。
「謝る必要は無い。 むしろ、お前一人でよくぞここまでやってくれた。 娘として誇りに思うぞレイラ」
レイラの頭に大きくて暖かい手が優しく触れる。
思わず微笑むレイラ。
レイラに限らず皆がゼノンに褒められると喜ぶ。
心の底から喜べるのだ。
ゼノンに褒められるとはそういう事である。
しかし、その嬉しい時間もあっという間に終わり、ゼノンは
険しい表情で扉を見詰める。
「レイラ、私の後ろに下がっていろ。 私の全力の魔力に充てられたら恐らく死ぬことになるだろう」
ゼノンの言葉に青ざめると、何度も頷きゼノンの後ろへといく。
準備は整った。
ゼノンは瞳を閉じる。そして、大きく呼吸を吸う。
緊張が走る中、レイラはゼノンの一挙手一投足を見逃さなかった。
ゼノンが目を開いた瞬間、扉に向かい全ての魔力を放出する。
あまりにも強大な魔力。
一般人ならば何万人もの魔力分となるだろう。
そして、あまりの勢いに時空が若干捻れている。
空気でさえ耐えきれていないのだ。
途中でレイラは見ているのも辛くなり、目を思い切り閉じてゼノンにしがみついた。
(くっ、あと少しで開くのだろうが、私の力を持ってしても開かれぬか・・・)
このままではゼノンの方が先に魔力が切れてしまう。
一度中断すれば恐らくまた一からやらなければいけない。
だが、レイラの魔力でも足りないだろう。
苦悩していると、突如後ろから三人の気配が。
「むっ、、、お前達、何故ここに?」
ゼノンの言葉でレイラも目を開け、後ろを振り向くと
そこに居たのは、、、
「何故でしょうか? 私にも分かりませぬが、使命感みたいなものを感じたのです」
「せやせや! ゼノンはんの元へ行かないといけない。 みたいな直感やな!」
「こヤツらが何を言っているのか訳がわからないじゃろう?
じゃが、本当にその通りなのじゃ。 妾達はお主に引き寄せられてここへ来たのじゃ」
三大恐慌の三柱がそこに揃っている。
『不死の王』
『海の皇帝』
『古代の龍』
世界一危険な三柱がここに揃っているのだ。
この事を国の重鎮達が耳にしたならば、この周辺は直ぐに避難勧告が出るだろう。
いや、実際この三柱が暴れたのならばこの大陸に逃げ場はない。
それほどにこの三柱の力は凄まじいのだ。
そして、先程も言ったようにゼノンに吸い寄せられて集まった三柱は、すぐさま行動に移す。
ゼノンと共に自分達も魔力を放出し始めたのだ。
ゼノンでは少し足りないその分を三柱が補う。
そんな光景に思わずゼノンは口から笑を零していた。
信頼出来る仲間が窮地に駆け付けてくれた。
ゼノンは強すぎるが故に、そしてなんでも出来てしまうが故に
頼る事があまりない。
だが、今回はこの三柱が来てくれなければ神への道は永遠に閉ざされていただろう。
そう思うと、三柱への感謝、そして三柱が来てくれたことへの
安堵から思わず微笑んだのだ。
「ジグルド、レビル、シエン、本当に助かった。
お前達と友でいられることを誇りに思っている」
ゼノンは心から想った感謝の言葉を述べた。
「まだ御礼は早いですよ」
「せや! まずはこの門を開かなあかんのやろ?」
「いや、大丈夫じゃろう。 主がここまでやったのじゃ。
残りくらい妾達でやらねば三大恐慌の名を腐すというものじゃ」
そして、シエンの言葉通りゼノンの魔力切れを防ぐ為にも残りは
三大恐慌が魔力を一気に放出した。
どのくらいたっただろうか。
三大恐慌の面々も額に汗を浮かべている。
それでも、その手は休ませない。
ゼノンの後を繋ぐためにも必死に魔力を出し続ける。
「ギギギッ」
その時だった。
ようやく、その重い扉は開かれたのだ。
中からは神々しい光が湧き出る。
暗いその部屋を一瞬にして明るく照らした。
「こ、これが神への道、、、なんて美しんでしょう」
扉から見る中の景色はとても美しい白を基調とした橋に花がたくさん咲いた地面があった。
「ふむ。 間違いない。 この先に尋常ではない力を感じる」
「ゼノンはんがそう言うんやからかなりの大物やな」
「神なのだから当然と言えば当然じゃろう」
「こんなに神々しいと骨の私も浄化されてしまいそうですね」
冗談を交えながら目の前の光景に空いた口が塞がらない一行。
ようやく、神への道が開かれたのだった。
「面白いな、続きが読みたいなと思ったらブックマーク、高評価をお願いします。そして誤字脱字や意見などあったら是非コメントしてください。」