熱い男達の戦い
海で遊ぶオルレア一家。
レビルの背中にはムムやトラリー、フィルルにフィル、そしてリリアやレイラが乗っかり、楽しんでいた。
「レビルさん! もっと速く泳いで!!!」
ムムの言葉に気合いを入れるレビル。
一種のアトラクションの様にレビルは水面を物凄い速さで泳ぐ。
ムム達は笑っているが、トラリーとレイラからは悲鳴が出ている。
なにせ、必死につかまらないと風の抵抗で飛ばされてしまう。
命懸けの遊泳なのだ。
そんな様子を大人達は浜辺で見守っている。
ゼノンとメフィは椅子に座っており、日傘を立ててカクテルを飲んでいる。
まさに至福のとき。
「はぁーーー、本当に最高の休みね!」
メフィの水着姿はまさに圧巻である。
とても子持ちとは思えない程の美貌。
何よりボンキュッボンが素晴らしい。
あのゼノンでさえ、隣に座るメフィを見れば思わず見惚れてしまうほどに。
「それよりもせっかくの休みなのにありがとうエリシア、ファル。変わるからあなた達もゆっくり休んで」
エリシアとファルはソルとルナを抱っこしていた。
二人がいつも子守りで大変なメフィを気遣い、申し立ててくれたのだ。
おかげでメフィも育児を一旦忘れ少しの休みを満喫出来た。
「いえいえ、私達が好きでやっているので気にしないでください。 むしろ離したくないくらいです」
普段真面目な秘書タイプのエリシアも顔がウットリしている。
彼女がここまで赤子が好きとは知らなかった。
ファルもフィルの昔を思い出す様でウットリしている。
「そうですよメフィ様。むしろこんなに幸せな時間をありがとうございます」
「二人とも本当にありがとう! でも、せっかく綺麗な海に来たんだから泳がなきゃダメよ! 後で一緒に泳ぎましょ!」
この三人は周りと比べれば大人組だ。
よく三人でお茶会を開いてし楽しんでいる。
現に今もゼノンの隣で三人で話が盛り上がっていた。
「ゼノン様、魔界ではこんなに美しい場所はありませんな。 そして、こんなにも心落ち着かせる日が来ようとは。
ゼノン様には感謝しかありませぬ」
隣で立つ宰相でありゼノンの右腕であるルシウス。
彼もしっかりと水着に着替えてこのバカンスを楽しんでいた。
「そんなに固くなるなルシウス。お前も泳いでこい。
これが終わればイヤでもまた仕事の日々が始まるのだ。
今くらい楽しんでもよかろう」
いつまでも仕事モードが解除されないルシウスにゼノンがそう口にする。
だが、一向に動こうとはしなかった。
すると、そこへ
「ガッハッハッ!!! ルシウス! ならば、ワシらと勝負じゃ! あそこに大きな岩が見えるじゃろう? あそこにタッチし戻ってきた者が勝ちじゃ! 泳ぎならお前もできよう」
バリアン也の気遣いだろう。
そして、その意図をルシウスも理解している。
変に気を遣わせてしまったと思い、微笑む。
「いいでしょう。 力なら勝てませんが泳ぎなら負けませんよ」
ルシウスも敢えて乗っかる。
そして、バリアンもニヤリと微笑んだ。
「勝負だと? 俺もやろう」
「ならばこの私も参加しましょう!」
「ほう? 泳ぎですか? この生身の身体なら行けるかもしれませんね」
勝負と聞いた男性陣が続々とやってくる。
バリアン、ルシウス、シン、エオメル、不死の王。
そして、何故かソルナまでいる。
「なんだ、お前もコイツらに混ざって泳ぐのか?」
「違いますやんゼノン様! うちは開始の合図をするんやで! こういう男の熱い戦いには審判が必要やろ?
って事でうちが審判やらせていただきますわ!」
皆も別に構わないらしく、位置に着く。
「それじゃあ、位置について・・・・・・よーい、、、ドンや!!!」
皆の反射神経に驚くソルナ。
ドンのドの字を発した時には既に皆が泳ぎ始めていたのだ。
「ほぇーーー、最早人外やん! 、、、って人外しかおらんかったわ」
一人でボケをかます。
それほどに、この五人の泳ぎは衝撃だった。
やはりと言うべきが神速のシンの異名は伊達ではなく、他のものよりも僅かに抜けている。
だが、それでも僅かだ。
そして、シンを筆頭にバリアンとルシウス、不死の王が同率であり、その少し後ろをエオメルが泳いでいる。
エオメルは他の四人に比べれば力は圧倒的に低いが、ここまで
追いすがるとは思いもしなかった。
恐らく、愛しのエリシアにいい所を見せたいのだろう。
なにせ、泳ぐ前にエリシアの名前を叫び見ていてくれと叫んでいたのだから。
と言っても、エリシアは今メフィやファルと婦人会をしている為、
全く見ていない。
可哀想なエオメルであった。
そうこうしている内にあっという間に皆が折り返してくる。
「このまま一位は俺がもらう」
「ガッハッハッ!!! ワシの本領発揮は後半戦じゃ!
この無尽蔵の体力を甘く見るな!!!」
「くっ、バリアン! 貴方の泳ぎは津波が出来ているのですよ!
もう少し静かに泳いでください!」
「ルシウスさん、この波を利用すればいいんですよ。
そして、やはり生身の身体で泳ぐと気持ちがいいですね」
「あばばばばば、ごぼぼぼぼぼ、おぼべぶ、、、、、」
若干一名は危ういが四人はラストスパートで一気に加速する。
特にバリアンの力強い泳ぎは周りに被害をもたらしていた。
だが、それを利用する三人と溺れる一人。
僅かにバリアンが追い上げ、その後を三人と一人が追う形となっている。
「ガッハッハッ!!! やはりワシが最強なのじゃ!!!」
勢いのまま泳ぎ続けるバリアン。
このままバリアンが一位かに思えたその時、
「神速の異名は俺のだ!!! 全ての速さで俺が一位を取らなければ意味がない!」
シンが珍しく、熱くそう雄叫ぶ。
バリアンの起こした波を利用し、波と一体と化すシン。
一気に抜き去り、そのままゴールした。
「一位、シンにいやん! 二位、バリじいやん! 三位、ルシウス! やん! 四位、不死の王! 五位、、、エオメル、、、だ、大丈夫なん?」
四人が泳いで浜辺にやって来たが、エオメルだけは白目を向きながら流されて辿り着いてきた。
エオメルに駆け寄るエリシア。
なんだかんだ、しっかり見ていたようだ。
そして、とても、ただの遊泳とは思えないほどの高レベルな戦いに周りの観戦者達も歓喜を上げていた。
「シン、良い泳ぎだったぞ。 やはり神速の異名はお前に相応しいな」
ゼノンがシンの元へ歩み寄り、そう語ると、シンは嬉しそうな顔で頭を下げた。
「はい、父上、この異名は誰にも渡しません」
こうして男達の熱き戦いは幕を閉じるのであった。
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