不死の王
ゼノンはその日、リリアと4階の訓練場に来ていた。
先日言っていた練習相手を出すために。
ここの階層の見た目は普通の洞窟だが、真ん中に小部屋があり、そこへ入ると巨大な闘技場になっているのだ。
ゼノンの時空魔法と空間魔法の複合魔法により別の空間へ行ける。
広さは1km²程あり、広々としていた。
今回ゼノンがリリアを呼んだのは、リリアに対戦相手を
与える為だ。
ここ最近リリアは戦闘は疎か、魔法すらほとんど撃てていない。これではリリアは腐ってしまうと思い、ゼノンが召喚魔法でリリアの相手を出すことにしたのだ。
「ではリリアよ、出すぞ」
「はい! ゼノン様! よろしくお願いします!!!」
「召喚---不死の王」
魔法陣から禍々しいオーラと共に、ローブを纏った骸骨が出てきた。
魔力量も凄まじく、この世に居てはいけない。
そんなおとぎ話に出てくるような化け物である。
「ノーライフキング?!!!」
召喚されたその魔物はリリアも知っていた。
いや、下手をすると全世界のものが知っているかもしれない。
「うむ。召喚は私が過去に倒した奴しか出せなくてな。その中でもコイツは強かった。コイツならお前の練習相手になるのではないか?」
ゼノンが話すその言葉に思わず突っ込んでしまうリリア。
「練習相手どころか、こんな奴が解き放たれたら国が一つ滅びますよ!!! ノーライフキングを簡単に召喚してしまうとは・・・・・・流石ゼノン様!!!」
この世界の三大恐慌の一柱であるノーライフキング。
ノーライフキングが現れたら国の一つや二つは滅びるとも言われている。
それほどに三大恐慌は世界をも揺るがす存在なのだ。
「いやはや、まさか復活して頂けるとは・・・・・・やはり外の空気は美味いですね」
ノーライフキングが流暢に話す。
何百年と眠りについていた為、生き生きとしている。
「うむ。貴様を呼び出したのはリリアの訓練相手になってほしいからなのだ。頼むぞ」
「ほう、中々に強そうですね。手加減する余裕等無さそうだ。
殺してしまっても構わなくて?」
ノーライフキングから禍々しいオーラが出る。
「あぁ、本気で殺れ。互いにな」
その言葉に唾を飲むリリアだったが気負ってはいなさそうだ。
「はいッ!!! ノーライフキングよ! 手合わせ願う!!! 炎獄のリリア! 参る!!!」
まずはリリアが炎の剣を持ちノーライフキングに斬りかかる。しかしノーライフキングはそれを難なく躱す。
ノーライフキングが魔法を唱えると、地面から沢山の骸骨が出てきた。
「ちっ! 多いな!!! 大炎網!!!」
骸骨達の上から炎の網がのしかかり、燃やし尽くす。
「ほう、凄い火力ですね。この強化された骸骨達を一瞬で燃やすとは・・・・・・楽しいですね」
リリアの力に胸を踊らせる。
そして、更に巨大な骸骨の手を出し、リリア目掛けて振りかぶる。
「炎柱乱上流!!!」
炎の柱が地面から天へと昇り、骸骨の拳を燃やし尽くす。
「炎槍」
すかさず、リリアは炎の槍を作り出し、ノーライフキング目掛けて投げる。
息を飲む暇もない連撃にノーライフキングも高揚していた。
「骸骨の盾。ふふっ、ゼノン殿には瞬殺されてしまい楽しめなかったが貴方となら楽しく戦う事ができそうです」
「お前のような有名な奴にそこまで言わせる事ができ、嬉しく思うぞ! くらえっ!!! 『神炎却火』!!!」
「凄い技ですね・・・・・・私も見せましょう、『死の瞑想曲』」
二つの巨大な力がぶつかり合う。
もし地上でこの技を解き放ったのなら土地が丸ごと消し飛ぶかもしれない。
だが、ゼノンにより強化されたこの地下ならば耐えることが出来る。
二つの力はほぼ互角であり、そのまま二人は余波により吹き飛ぶ。
そして、体勢を立て直すと、両者が剣を構えほぼ同時に、互いの首に剣を当てる。
やはり、互角であった。
「うむ。そこまでで、よかろう。今回は引き分けとする。二人とも良い戦いであった」
「引き分けという結果にしてしまい申し訳ございませんでした!!!」
「何を言う。ノーライフキングを相手に引き分けたのだ。責める事などありはせぬ。見直したぞリリア」
「あ、ありがとうございます!!! 今後も精進して参ります!!!」
「うむ。ノーライフキングよ、そなたもよくやってくれた。そなたが良ければ今後もリリアの相手をしてくれぬか?」
その提案にノーライフキングは了承した。
しかし、代わりとばかりに一つの願いをゼノンに申し出た。
「それは、私も願ったりです。ですが一つお願いが・・・・・・」
「? 言ってみよ。」
「私もこのままここで暮らさせて頂けませんか?」
「なっ?!!!」
あまりの発言にリリアは驚きを隠せなかった。
ノーライフキングを解き放ってしまっては世界は混沌に陥る可能性がある。
ゼノンが常に目を光らせていれば大丈夫だが、ずっとは不可能だ。
「理由を言え」
「はい。先程の戦いで未熟な自分を目の当たりにしました。ゼノン殿に破れ、リリア殿にも引き分け、私は脆弱です。未熟な自分が許せないのです。このままでは何時になっても成仏できません。どうかこのまま滞在することをお許しください」
嘘をついているとは思えない。
本心から思っているのだろう。
「ふむ。力への未練か。なら貴様に新たな階層を与える。間違っても外に出る事がないようにな。出たら消す。それだけは覚えておけ」
「ゼノン殿のご厚意に感謝致します。その階層では好きにしても宜しいのですか?」
ここなら強化されている為、ノーライフキングが暴れようが外に被害は出ないだろう。
「うむ。お前の好きなように弄るが良い。ただこの家に住むものを殺したり傷付けることは許さぬ。いいな?」
「はい我が主」
ゼノンの一家に新たな最強の住人が増えたのであった。
この世界の恐怖の象徴である不死の王。
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