太陽と月
「それでは発表します!」
家の中大広間で、メフィの前に皆が今か今かと待ち構える。
メフィの腕の中には女の子の赤ちゃんが。
隣にいるゼノンの腕には男の子の赤ちゃんがいた。
そして、今日子供達の名前が発表されるのだ。
「男の子が『ソル』! 女の子が『ルナ』よ!」
皆からどよめきが上がる。
そこでムムは思い出す。
「あれ? ソルとルナって、確かムムの貰った聖剣のソルナと同じ!」
そう。フィルルから貰った『聖剣ソルナ』。
太陽と月を意味する物。
つまり、男の子が太陽。女の子が月という意味だった。
「うん! 太陽と月って私達精霊族にとっても大切なものであり、名前も神聖なものなの! だから、どうしてもこの名前が良くてゼノンにも相談していたの!」
「なるほどのう。 ソルにルナ。 いい名前じゃ! よし!
では早速朝の挨拶に抱かしてくれ!!!」
バリアンがズカズカと前に進み出てメフィからルナを預かる。
戦場では鬼神と恐れられているバリアンが赤子の前では
ただのおじいちゃんだ。
バリアンが抱きに行くと、他の者達も我先に二人を抱きに来る。
まだ朝だというのにこの賑やかさだ。
それほどに、ソルとルナは皆から愛されている。
「ほらバリアン! それにみんなも! 今日は休みじゃないのよ! 皆学校や仕事の準備して」
今日は平日なのだ。
皆は肩を落としながらも渋々準備をしてそれぞれが向かう。
「すまないが私も一度魔界の様子を見に行く。 ルシウス、行くぞ」
「はっ」
ゼノンもルシウスと共に魔界へと戻った。
ずっと空けとく訳にもいかないため、度々二人は魔界へ戻り、情勢を確認している。
「ねぇライム! ちょっと二人を見ててくれない? 飲み物を取ってくるわ!」
「かしこまりました! 久々ライム登場!!!」
スライムのライム。
普段は家の中でファルとフィル親子と共に掃除や洗濯など雑務をこなしている。
もちろん、暇な時はムムと遊んでいる。
赤ちゃん達はライムの身体の上で眠りについている。
ライムはスライムでありながらベタベタなどしていなく
まるでウォーターベッドの様に滑らかだった。
「ごめんねライム! ちょっとファルとお話しちゃった!って・・・・・・皆で寝てたのね」
部屋に入るとライムの体の上でソルとルナは眠っており、
ライムも一緒になって眠っていた。
なんとも微笑ましい光景である。
魔界にてゼノンとルシウスは二人である事について話し合っていた。
「ふむ。この情報は確かなのか?」
「残念ながら確かです。 過去の記録を見てもここ数年で『奴』は動き出すはずです」
ゼノンは険しい表情で資料に目を向けている。
「私の力で抑え切れればよいが、相手の力は未知の領域。
備える必要があるな」
「私の力ではゼノン様を助けることすらできませぬ。 ですが、違う面で私も補助致します」
「うむ。引き続き影の者はお前の支配下に置く。協力して何か手がかりを探してくれ。私も何かあれば伝えよう」
「はっ!」
未だ地下深くの核の近くで眠り続ける巨大な黒い塊。
千年に一度起きてはこの星のほとんどの生き物を食べては眠る。
前回も前々回も為す術なく食い荒らされ、生き残ったものが必死に
次へと繋げて今の世界ができた。
いくら最強といえど相手の力が未知数であり、倒したものがいないとなるとゼノンも油断はできない。
だが、ゼノンが力をつけるにはこの世界ではぬる過ぎた。
いや、それほどにゼノンは力をつけすぎてしまったのだ。
「奴らの領域にいくしかあるまい・・・・・・」
ゼノンは一人空を上げていた。
一度家へと戻り、とある人物を呼び付ける。
「失礼します。 いかが致しましたか?」
ゼノンが呼びつけたのはガルムだ。
理由は、
「もう、教皇は死んだ。 レイラの安全は保証されたも同然。
ならば、お前も影に居らず、光の当たるところで暮らしても問題あるまい。 レイラと過ごすが良い」
ガルムはレイラの実の父親である。
だが、過去に妻と子供であるレイラを捨てたのは事実。
そして、今更レイラの前に顔を出すことなどできなかった。
「・・・・・・いえ、ゼノン様。 前にも申した通り、貴方の子でいさせてあげてください。 私は裏の人間。 あまりにも汚れすぎた。英雄ゼノン様、そして、メフィーロ様。 願わくば二人の子であって欲しいのです。 私は彼女が生きているだけで幸せなのですから。 今更彼女を困惑させることはしたくありません。
我儘を言い申し訳ありません」
ゼノンは考える。
レイラはどうなるのが幸せなのか。
当然実の親に会えれば嬉しいに決まっている。
だが、確かにレイラは今の生活に幸せを感じている。
急に自分たちを捨てた父親が現れれば混乱するのは当たり前。
ゼノンはそれでも二人に共に暮らして欲しかった。
なぜなら家族の大切さを知ったから。
だが、そんなに簡単な話では無い様子。
ここまで懇願されれば払い除けることなどできない。
「わかった。 だが、もし気が変わったらいつでも言いに来い。
私は全力でお前達二人を支えるつもりだ。よいな」
ガルムは感極まっていた。
たかが配下ごときにここまで高待遇で接してくれる。
「はっ!!!」
大きな声で返事をし影に潜る。
「私は絶対に子供達を捨てたりなどはせぬ。 奴を倒す準備を始めなくてはな」
ゼノンは拳を握りしめ固く決意するのであった。
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