宿る命
「ゼノンの子供が欲しい!」
突然の告白にゼノンは固まっていた。
いや、ゆくゆくはこうなる事も予測はできていた。
だが、まさかこのタイミングとは思いもしなかったのだ。
いや、むしろこのタイミングだからかもしれない。
「うむ。 私も同じ事を思っていた。 だが、一つ約束して欲しい。 子供は皆平等に愛すると約束してくれ。 例え血の繋がりがなかろうと」
そう。子供をつくるにあたって恐ろしい事は子供の差別化だ。
当然、自分の血の繋がる子の方が可愛いのは当たり前かもしれない。
だが、ゼノンにとってはムムとトラリー、いや、他のもの達も皆大切なのだ。
もし、子供の愛に順列を付けられるのなら、今回の話は無かったことにしてもらう。
するとメフィは笑顔で答えた。
「私にとっては皆が家族だよ! 誰一人として欠かせられない
私の大切な存在。 それが家族でしょ? だから、そんな事は絶対に有り得ないわ だって私は皆のお母さんなんだからね!」
迷うこと無く即答した。
いや、メフィならこう言うだろうとわかっていた。
「あぁ、そして、お前もな」
ゼノンはそのままメフィを抱き抱える。
突然の事に驚きの声を漏らすも、そのままゼノンにベッドへと運ばれた。
優しく下ろされると、そのまま部屋の明かりは消された。
部屋を照らすのは月明かりのみ。
メフィはタオル一枚であり、抱き抱えた時にタオルがはだけてしまった。
とても魅力的な身体を持つメフィ。
長く綺麗な脚が、大きく柔らかな胸が。
その全てが完璧である。
「メフィ、、、綺麗だ」
ゼノンはメフィの頬にそっと手で撫でる。
そんなメフィは頬を赤らめていた。
恥ずかしさのあまり顔を覆い隠すも、その手はゼノンによって阻止される。
「お前の顔をよく見せてくれ。 私の愛する女の顔を」
そして、二人はそっと唇を交わすと一体となった。
ベッドの軋む音に甘い吐息。
二人は手を握り締めたまま愛を育む。
そして、メフィの中へとゼノンの愛の結晶が入ってくるのを感じる。
「はぁ、はぁ、はぁ、、、ありがとう、ゼノン、、、愛してるわ」
荒い息の中、小さく囁きゼノンの首に手を回す。
「あぁ、私もお前を愛してるメフィ」
そうして再び唇を重ねると、二人は身体を抱き合わせる。
「ねぇ、ゼノン、、、私からのプレゼントはこれよ」
そう言ってゼノンの左手薬指に、白銀色の指輪をはめる。
「これはね、私が精霊界で作った唯一無二の品よ。 貴方への愛を込めて作ったの。 ずっと一緒よ」
ゼノンは指輪を見つめる。
作るのに相当の時間を有しただろうに。
「奇遇だな。 私もお前の為に作っていたのだ。 私の全身全霊を掛けたこの指輪。 お前に早くつけたかった」
そういうとメフィの手をとり、指にはめる。
奇しくもメフィと同じ白銀色ではあるが、真ん中には宝石がはめ込まれていた。
とても綺麗な透明な宝石。
メフィは見たことがなかった。
「き、綺麗、、、こんなに綺麗な宝石は初めて見たわ」
いつまでも自身の指にある指輪を見つめてうっとりするメフィ。
「それはダイヤモンドと言うらしい。 希少価値であり、滅多に出回らないとの事。 だが、所詮はメフィの引き立てに過ぎぬ。
お前の美しさには何ものにも変えられぬ」
「ゼノンって本当に口が上手くなったよね! 私は本当に幸せだな♪ ずっと一緒よゼノン」
ゼノンに抱きつき、幸せを実感する。
そして、気付けば二人は夢の中へ。
朝目覚めるとメフィはゼノンの腕の中で小さく寝息をたてていた。
その美しい寝顔にゼノンでさえ思わず見惚れてしまっている。
気付けばメフィの顔に手を触れる。
「んっ、、、おはよーゼノン」
どうやら、触れた時に起こしてしまったようだ。
「すまない、起こしてしまったな」
「んーん、早く起きてゼノンと触れたかったからいいの。
ゼーノンっ」
そう言うとメフィはゼノンの胸に潜り抱き着いた。
「そうか。 では暫くこうしていよう。 私もお前とこうしていると落ち着く」
ゼノンはそう言うと再びメフィを抱き締め、この時間を楽しんだ。
少しだけ時を忘れ幸せな時間を満喫していると、
「ねぇ、ゼノン? 汗かいたしもう一回お風呂入ろう?」
言われてみれば昨日の夜にだいぶ汗をかいてしまった。
ゼノンは了承すると再び二人で露天風呂に入る。
昨夜とは違い、今度は晴天の中のお風呂である。
「はぁーーー、、、生き返るーーー」
肩まで漬かり、思わず顔が綻んでしまう。
「ところで、メフィ。 もし子供が出来たとしてどのくらいで産まれるのだ?」
人間は大体10ヶ月後と決まっているが、それは種族によって異なる。
魔族は6ヶ月と早く、ドワーフも人間より早い。
だが、エルフは一年以上と種族によるのだ。
つまり、精霊であるメフィはというと、
「私は3ヶ月かな! それに、ちゃんといるよ? もうわかるんだ。 私の中にゼノンがいるって」
そういうとメフィは自身の下腹部にそっと手を触れた。
しかし、3ヶ月というのには驚いた。
他の種族よりも圧倒的に早い。
ちゃんと育つのか不安になるほどだ。
だが、メフィに聞けば精霊王の名は伊達ではなく、栄養も他の種族とは比べ物にならないほど蓄えているとの事。
だなろ、3ヶ月で赤ちゃんは成長しきるのだ。
「では、そろそろ出よう。 長湯はよくない」
二人は部屋を出るとちょうどよく、朝食が運び込まれた。
やはり高級宿なだけあって食事も豪華そのものだ。
朝食を楽しみ、ゆっくりと時間を過ごすと、店員に金貨を払い
その宿を後にした。
「ねぇ、ゼノン? 月に一回は二人の時間を作る事!
これは決定事項ね!」
突然の事であったが、ゼノンは頷く。
「あぁ、別に月に一度と言わず、予定が合うなら何度だって二人の時間は作ればよかろう。 私達は夫婦なのだからな」
その言葉に胸を躍らせたメフィはゼノンの腕に抱き着き、そのまま帰路へと着く。
二人だけの幸せな時間であった。
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