サプライズ
冒険者ギルドへ報告を終わらせ、一度家に転移し、着替えを済ませてゼノンとメフィは街中へと繰り出す。
久しぶりのデートであり、結婚一周年でもある特別な日。
もちろんメフィはゼノンの腕に絡みつき歩いている。
それも、飛び切りの笑顔で。
ゼノンとメフィ美男美女っぷりにすれ違う人や立ち話をしている人達なんかは口を呆けて目を奪われていた。
だが、そこは二人だけの空間であり、知り合いでさえもなんだか話に行くのを控えたくなるような空間になっている。
それほど、メフィのラブラブオーラが全開なのだ。
因みにだが、メフィはどこへ向かっているのかは分かっていなかったが、目の前に出てきた店で理解した。
「シリュウのお店ね! そういえば、まだ一回も行ったことなかったよね?」
そう。シリュウが自分の店を出してからというもの、ゼノン達はまだ一度も来た事がなかった。
シリュウの食事は家でも食べれるというのも理由にあるが、
それ以上にこの店はとても混むのだ。
開店以来常に満席状態であり、店の前に列が出来ないことは一度もない。
それ程に人気なお店なのだ。
噂によれば、王族も密かに来ているのだとか、、、
とにかく、それほど味の評価が高いのだ。
現に、ゼノン達の目の前には夕方前にも関わらず、大行列ができている。
これに並べばどれだけ待たされるかわからない。
「ねぇ、ゼノン? 入ってみたいけど、これだと並んで終わっちゃわないかな?」
あまりの多さに不安になるメフィ。
確かに、これを並べば何時になるかわからない。
下手をすれば三時間以上かかるだろう。
だが、ゼノンに心配は何一つ無かった。
「こっちだメフィ」
そう言ってメフィの手を握り、何やら裏へと手を引く。
自体が飲み込めず困惑するメフィ。
裏には入り口が二つある。
一つは従業員専用だというのがわかるが、もう一つはシークレットと書かれていた。
そして、ゼノンは何の躊躇もなくそのシークレットの扉を開く。
いきなりの行動にさらに驚愕するメフィ。
「ゼ、ゼノンっ?! い、いくら身内だからってここは勝手にはだめでしょ!!!?」
焦るメフィであるが当のゼノンはというと何も気にしている様子もなく、メフィの手を引いていた。
しばらく、歩くと再び扉がある。
そして、その扉をゼノンが開くと、、、
「ッ?!、、、、、、綺麗、、、」
そこは円形の個室となっており、真ん中にはテーブルと椅子が二つ並べられている。
そして、足元の地面には花びらが撒き散らされている。
色とりどりの花びら。
更に天井にはガラス細工で作られたシャンデリアに動物の数々。
これはエリシアとエオメルが作った物であり、どれも精巧に作られている。
そして、そのガラスをライトの灯りが通して部屋を輝かせていた。
この部屋だけまるで別空間にいる。
そう思わせる様な部屋なのだ。
そんな夢の世界の現場にメフィは、心奪われていた。
「どうだ、気に入ってくれたか?」
ゼノンの言葉にとびきりの笑顔で答える。
「うん!!! 本当に感動しちゃった!!! 感動しすぎてなにも言葉がでなかった! こんな綺麗な場所は初めてみる! 本当に素敵!」
一気にテンションが上がるメフィ。
それと同時に奥の扉が開かれた。
出てきたのは、
「ようこそおいでくださった。 ゼノン殿! メフィ殿!
この度は婚約の契りを交わして早一年。 誠におめでたい日なのである! 今日は腕によりをかけてつくったのである! 存分に楽しんでほしいのであります!」
そして従業員から運ばれる料理の数々。
どれも家では見たことないような盛り付けに食材。
食べ慣れているとは思っていたが、シリュウの料理のレパートリーは留まることを知らない。
「部屋もそうだけど、料理も本当に綺麗、、、シリュウも本当にありがとう!」
「なんのなんの! いつもお世話になっている御二方には感謝しているのですから当然なのである! それに、この部屋の案はゼノン殿の案なのであるよ!」
そう。ゼノンと国王が談笑している時に国王が顔を隠し、シリュウのレストランへ行ったのは聞いていた。
しかし、国王や王族は身を隠して行かなくては行く事ができない。
それでは不便だと思い、考えたのがこの個室である。
ここなら王族御用達でゆっくりと食事をする事ができる。
だが、ゼノンの狙いはそこではなかったようだ。
あくまでも国王達のはついでの様子。
単純にシリュウノ食事をメフィと二人でゆっかりとした空間で食べたかったとのこと。
いきなり、それをシリュウの口から聞いたメフィは頬を赤らめていた。
「そ、そこまで考えてくれてたの?、、、ありがとうゼノン」
照れくさそうにそう答えると、ゼノンはなんの恥じらいもなく一言返事をする。
どうやら、ゼノンに恥という言葉は無いようだ。
そして、シリュウは一言添えるとその場を後にし、ゼノンとメフィはゆっくりと会話を楽しみながら食事をするのであった。
気付けば時間はあっという間に過ぎ、皿も空になっていた。
会計は事前にゼノンがしていたようで、後は帰るだけだ。
「シリュウよ、今日の料理は特に絶品であった。 感謝する」
「なんのなんの! ゼノン殿にそう言って貰えれば料理人冥利に尽きますな!」
「本当に美味しかったわ! ありがとうシリュウ! ご馳走様」
そうして、建物をを後にする二人。
「ゼノン! 本当にありがとう! でも、寂しいな、、、なんかあっという間だったからさ、、、」
楽しい事は本当にあっという間である。
メフィは名残惜しそうにそう話すと、
「なにを言っている。 私たちの夜は終わっていない。
今日は二人で夜を過ごすぞ。 ついてこい」
そう言ってゼノンは半ば強引にその手を引く。
またも困惑するメフィ。
それは荒々しい行動であったが、メフィの手を引くゼノンの手はとても優しかった。
ゼノンの手を見て微笑むメフィ。
不器用だけど強引なゼノン。
こうして、二人の長い夜が始まるのであった。
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