神の領域
シエンは人化魔法を使える為、人型へと変わった。
ゼノンと同じく銀色の髪に白い肌。
その見た目通りシエンはメスだ。
そして、今は女性の姿になっている。
龍のままではその大きさのせいで被弾する確率がどうしても高くなってしまう。
その為、人化してゼノンと対峙するのだ。
最初に動いたのはシエン。
シンよりも速く動きゼノンへと近接する。
「まずは様子見といこうかの。 龍の拳!」
右手だけ龍の手に変わり、そのままゼノンの鳩尾目掛けて拳を入れる。
だが、当然ゼノンも喰らう訳がなく右手に魔力を纏ってそれを防ぐ。
「ほーう。 魔力の鎧か。以前よりも硬くなっておるのう。 ならば数で凌駕するのみ」
シエンは右手、左手を交互に出しパンチの連打を繰り出す。
そのあまりにも速いパンチは、普通の人では目に捉える事も出来ない。
だが、ゼノンはその全てを防いでみせた。
「そういうシエンも威力が上がっているな。 次は私の番だ。 剛龍砕」
ゼノンの右手にオーラが纏い、シエンの腹部目掛けて撃ち放たれる。
「ドゴォンッ!!!」
なんとか両手で受け止めるも、その技は対ドラゴン用の技であり
シエンの腕に痛みが走る。
(ちっ、ゼノンの奴、威力が上がったのは少し所では無いな、、、骨がいくつか折れたかもしれないのう)
それでもゼノンの攻撃を耐えたシエンも化け物級である。
二人の目まぐるしい攻防に周りの龍達はただ呆然と眺めていた。
最早神の戦い。
そう思える程に、二人の戦いは自分達の想像を遥かに凌駕していた。
そして、シエンの様子が変わる。
恐らく次で決めようとしているのだろう。
シエンの周りを魔力が漂う。
「流石はゼノンじゃのう。 まだ一度も見せた事のない、この技を喰らうがいい! 龍王の怒り」
シエンの両腕から解き放たれる超高熱の炎。
この世に存在しない金色の炎。
これがもし、真下に放たれたならこの星の核まで破壊されるだろう。
そして、恐らくこの結界もこの攻撃を防ぐことは出来ない。
それ程に強力な攻撃であった。
「ふむ。 この威力は生まれてこの方見た事がない。やはり、お前は最強の一角なのだな。 なら、私も最強の防御で答えるとしよう
無限空間」
突如目の前に現れる小さな黒い玉。
シエンはその程度の技で防ぎ切れるわけが無いと、高を括っていた。
だが、その技の恐ろしさを直ぐに理解することとなる。
シエンの放った炎がその玉に当たるや否や、全て吸収されているのだ。
その小さな玉に入り切る筈がない程、高威力の技なのにだ。
まるでその黒い玉の収容量は無限にあるのでは無いかと思うほどに。
まさにブラックホールであった。
その玉は全てを吸い込み終わるとゼノンの手の中へと消えていく。
完全に消滅させられた。
それには流石のシエンも唖然としている。
何せ星を破壊する程の力を無にされたのだから。
「なかなかの攻撃であったぞ。 では次はこちらの『攻撃』の番だ。 絶大な力の前に虚無」
ゼノンの右手から解き放たれるどデカい黒い光線。
目の前の存在を否定する。
この技の前に立つものを否定する。
そう感じるほどに恐ろしい技だ。
この技に対処しても何も意味をなさない。
そう思える程であった。
だから、シエンはその技をただ受け入れる。
防ぐ事はしない。
なぜなら無意味だから。
まさに虚無である。
ただ目の前から来る死を受け入れるのみ。
だが、突如ゼノンが右手を握りしめるとその絶大な技は一瞬にして消えた。
そこでようやくシエンは我に返る。
「はっ!!!? 妾は今死を受け入れておった、、、いや、一回
死んだのか?、、、なんと恐ろしい技よ、、、」
シエンの体は震えていた。
初めての経験である。
それ程恐ろしい技だった。
「うむ。 この技を出させたお前の力も尋常ではないぞ。 何より
戦いでここまで疲弊したのは訓練以来だ」
ゼノンも改めてシエンの力に驚かされた。
この技を使わなければ恐らく勝てなかった。
正真正銘、ゼノンの必殺の技なのだから。
だが、この技を出せば誰にでも勝てるという事も分かった。
「もう、ゼノンに勝てる事は一生無いじゃろうな。 いいだろう。 人間界を滅ぼすのはやめよう。 逆にお前に妾達が滅ぼされてしまうからのう」
なんとかシエンを説得する事ができた。
だが、彼女達の為にも、一刻も早く転生者達を見つけなければならない。
でなければ龍達が報われない。
「すまないシエン。 もし良ければだが、我が家に来ぬか? お前は一度もここから離れたことはなかろう」
突然の誘いに驚くシエン。
だが、
「嬉しい誘いだがやめておこう。 もしまた、そ奴らがここを襲ってきた時に万が一があっては困る。 そうだな、、、もしそ奴らの始末を終えたその時は遊びに行かせてもらおうかの」
笑顔でそう答えるシエン。
シエンも世界に興味はあるのだ。
何せずっと山に篭もり仲間達を見守っているのだから。
ゼノンを育ててくれた御礼。
つまり、一刻も早く転生者を見つけなくてはならない。
ゼノンは頷くとその場を後にした。
「ゼノン、、、あ奴が敵じゃなくて心から良かったと思えるのう。 あ奴の子供、、、か、、、」
一人残ったシエンは何だか感慨深そうに空を見つめるのであった。
「面白いな、続きが読みたいなと思ったらブックマーク、高評価をお願いします。そして誤字脱字や意見などあったら是非コメントしてください。」