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親の責任

レイラ達と出会い、ようやく前に進める。

そう思えた矢先。


目の前には数十人もの人達が、怒りを顕に押し寄せていた。



「あんたの父親のせいでうちの商売は上がったりなんだよ!」


「アイツのせいでうちの旦那は職なしだよ! どうしてくれんだい!!!」



ここに居る者は皆、教皇の派閥に入っている者たちばかりでありその鬱憤を娘であるミネロヴァに晴らそうとしているのだ。


ミネロヴァに言ったところで無駄なのに、それでも当たらないと気が済まないようだ。



大人達が皆でミネロヴァへと文句を言う。

最早、何を言っているのか聞き取れない程にみんなが責めていた。



でも、今のミネロヴァは違う。

これを耐えれば楽しい生活が待っている。

友達が待っている。


今はそう思えるのだ。



「バチンッ!」




ミネロヴァの額目掛けて飛んでくる石。


そして、額からは血が滴る。



(大丈夫。 痛くない。 もう私は一人じゃないから! こんな痛み、どうって事ない!!!)



自分の心に言い聞かせるミネロヴァ。


そして、何も発さず表情も変えないミネロヴァに余計に怒りを覚えた住民達が、



「くそ! 生意気な女だ! 皆も一斉に石を投げてやれ!!!」



その掛け声で、ミネロヴァ目掛けて何十個もの石が飛び交う。

この数が当たれば怪我どころの騒ぎでは無い。


下手をすれば重症になる。


だが、ミネロヴァは逃げない。

逃げても永遠と追われる。


それに、今は助けてくれる友達もいるのだから。


ミネロヴァは目をつぶり衝撃に備える。



どれくらい経っただろうか?

僅か数秒かもしれないし、数十秒は経っているのかもしれない。



だが、一向に石が飛んでこないのだ。


もしかしたら目を開いた瞬間に投げてくるのかもしれない。

ミネロヴァは恐る恐る半目を開けると、なんとそこにいたのは、




「えっ・・・・・・シン、、、さん?、、、」




剣を片手にミネロヴァの前に立ちはだかるシンの姿が。

そして、周りには切られたであろう石が転がっている。


全て切り落としたのだ。


しかし、どうしてシンがここに居るのか。

何故、助けてくれたのか。


シンとはほとんど話していなかったのに。


ミネロヴァが困惑していると、シンが振り返る。



「何故強がる。 逃げればいいだろ。 お前は何も悪くないのだから。 帰りが不安なら仲間を頼れ。 いいな?」



シンの言葉に思わず驚くミネロヴァ。



「あ、ありがとう、、、でもどうしてシンさんがここに?」



「帰りに、弟の練習用の剣を新調しに行こうと思ってな。 その道中で人集りがあるから来てみればこの有様だ」



そう。偶然であった。

だが、この偶然のおかげでミネロヴァは深い傷を負う必要が無くなった。


シンはミネロヴァの額の傷を見つめる。



「またレイラに治してもらわないとだな。 おい、お前ら。

もうこの子に怪我を負わせたのだから十分であろう?

さっさと解散するがいい」



シンは大人達に向き直ると、高圧的にそう話す。

当然、大人達がこれだけで引き下がる訳もなかった。


「何を言ってやがる! てめぇが邪魔したせいで俺はやれてねぇんだよ!」


「そうよそうよ! その女のクソ親父のせいで私らがどれだけ

迷惑したと思っているのよ! 早く退きなさいよ!」



先程よりも興奮している大人達。

それは次第にシンへも罵声が飛び交っていた。



ミネロヴァもシンの後ろで申し訳なさでいっぱいだった。

自分を庇ったせいでシンまで被害が出てしまう。


かと言ってこの状況を打破する術が無い。



すると、突如シンが、





「お前らいい加減黙れ」





ドスの効いた声。

凄まじい殺気。

そして、人を殺しそうな鋭い目に大人達は一気に静まり返る。


それどころか皆が震えていた。


それは後ろにいたミネロヴァでさえも。




「いいかお前ら。親のしでかした事を子供にまで擦り付けるな

子は親を選べぬ。そして、子は親を矯正する事も出来ぬ。

親が子を作り、親が子を導くのだ。 それなのに、子供である彼女に対してこの仕打ち。 貴様らそれでも大人か?

これ以上、彼女に害をもたらすと言うのなら、悪いが俺も

黙っているわけにはいかない。 死ぬ覚悟のあるものだけがその石を投げるがいい」




シンの言葉、そして殺気に大人達は最早戦意喪失である。

負け犬の遠吠えの如く、捨て台詞を吐き捨てみんながその場を後にした。



それを確認するとシンは剣を収め、ミネロヴァへと向き直る。



「お前はしばらく一人で行動するのを控えろ。 毎日こんな事が起きればお前もたまったものではなかろう。 お前は今どこに住んでいるのだ」



シンが気遣ってくれている。

交流試合の時は冷めており、素っ気ない人間だと思っていた。

そして、先程会った時も同じ感想であった。


だが、今目の前に居るシンという男はリリアやレイラとは違った暖かさを感じる。



「う、うん。 本当にありがとう。 今は一人で宿泊宿の個室に住んでいるよ」



そう。当然家にいる訳にもいかないため、少ない金を握り締め、宿の一室に暮らしていた。


一通りの少ないその宿に。




シンはその話を聞きしばらく思考する。



「お前が傷つき、また病めばレイラやリリアの優しさが無駄になる、、、よし、付いてこい。 と言っても、父上と母上に聞いて見ないと分からぬがな」



突如シンに誘われ驚く。

そもそも人の家にも行ったことがない為、どの様にしていればいいのかも分からない。


困惑していると、シンに手を掴まれた。



「何をしている。 先程の恐怖で動けぬのか? こっちだ」



初めて異性と手を握った。

その手は固く大きかった。

そして、やはり暖かい。



自分を守ってくれた優しい手。


ミネロヴァはシンに掴まれた手を見つめ、シンの後を歩くのであった。

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