異世界より表れし者
すみません。
仕事が忙しく時間に間に合いませんでした。
教皇の処刑
王都ではその話題で持ち切りとなっていた。
広場には断頭台が置かれており、早朝からたくさんの人で人で埋め尽くされている。
歓喜をあげる者、非難する者。
住民の声はどうであれ、処刑は確実に執行される。
部屋には既にゼノンと勇者レインが教皇と共にその時を待っていた。
怯えていた教皇もようやく観念したのか、何も発することは無く、ただ死を待っているようにも見える。
しばらすすると部屋に国王が入ってきた。
「ゼノン殿、勇者レイン。御苦労であった。 今までこやつの悪事を見て見ぬふりをして来た私の責任だ。
だが、それももう終わり。弟よ、最後に言い残すことはあるか? お前はこれから公衆の面前で処刑される」
最後の情けという訳では無いが、これが最後の会話出来る空間である。
だが、教皇は首を横に振る。
「何も無い。 ただ一つだけ願いを聞いて貰えないだろうか兄上。 処刑する前にトイレへ行かせてくれ。 切られたあと失禁や脱糞をしたとあらば、俺は死んでも死にきれぬ。
綺麗な身体のまま刑を終えたいのだ」
国王は目を丸くしていた。
兄弟で話す最後の会話がそれかと。
だが、それも死を受け入れている証拠。
国王は頷き、それを了承する。
もちろん、窓の無いトイレへ連れて行き手錠もつけたままだ。
更には見張りも数人付けた。
トイレも無事に終え、後は時を待つばかり。
こうして太陽が真上を昇る頃、執行の時間がやって来る。
教皇は衛兵に連れられ、執行台へと上がる。
その近くには国王や宰相等も居るが、ゼノンは控えることにした。
なので、遠くで見守り万が一に備える。
この野次馬の中に下手をすれば教皇を助ける者が現れるかもしれない。
いや、十中八九現れるだろう。
それほど教皇の名声は広がっているのだから。
壇上に国王が上がる。
「我が民よ、我が子らよ。 此度の大きな戦はなんとか起こる前に止める事ができた。 止めてくれたもの達には私からも礼を言おう。 ありがとう。 そして、先の事件の首謀者もわかった。
ここに居る我が弟であり教皇だ。 その罪は万死に値する。
よって、国王の名のもとに、これより教皇の処刑を執行致す!」
その言葉で住民達の感情は沸きあがる。
中には当然教皇の崇拝者達も居り、非難する者もいた。
そして、案の定一部の崇拝者達が暴動を起こす。
警備する衛兵が対処しているがまだまだ増えそうだ。
やはり、教皇は恐ろしい。
そして、そんな中教皇は急に口を開く。
「我が民達よ! 聞けっ! 我が兄はあろう事か魔族やほかの種族と手を組み、この私をでっち上げで殺そうとしている!
恐らく、力を持った私を兄が恐れたのだろう! こんな事が許されるのか? 皆の力を私に貸してくれ! これ以上兄の! 国王の暴挙を許すわけにはいかない! 立ち上がれ!!!」
このタイミングで巫山戯た言葉を発する教皇。
しかし、効果は抜群だ。
崇拝者達だけではなく、ただの野次馬達の耳にも入っていた。
そして次第に感化され、祭りの気分でそのもの達も加わるという
大惨事へと発展している。
衛兵達が抑え込んではいるが、それもいつまで持つか。
そして、何よりもこのままでは教皇の処刑は行えない。
今やれば、教皇の嘘が真実に思われてしまうからだ。
教皇の口を封じるために殺したと。
だが、これも予想通り。
ゼノンと国王はこうなる事も予測していたのだ。
壇上に上がる一人の男。
その男を見るや否や、全員が静まり返り、口を大きく開き目を見開く。
あの教皇でさえも開いた口が塞がらない状態だ。
現れたのは死んだはずの勇者レインだ。
壇上に立つや否や、住民達を見渡し口を開く。
「皆聞いてくれ! 僕は生きている! 確かに殺されかけて瀕死の重症を負った、、、だが、とある人物に助けられ九死に一生を得た。 そして、僕を殺そうとしたのは『教皇』。コイツだ。
僕を殺し、奴隷達も殺し、あろう事かそれを魔族のせいにし
世界を混沌に陥れた。 コイツこそが悪の元凶なんだ!
今こそこの悪夢を終わらせる時なんだ!!!」
勇者の言葉を住民達は黙って聞く。
やはり勇者の効果なのか、誰もその言葉を遮るものはいなかった。
教皇派の者でさえも、思わず聞き入れてしまうほどだ。
そして、レインの言葉が終わると一気に爆発したかのような大歓声が沸き起こる。
そして、教皇への暴言も飛び交っていた。
これで状況は一変した。
現に教皇の顔からも汗が出ており、歯を噛み締めている。
まさか勇者が生き返るとは大誤算だったようだ。
「もう悪足掻きはよせ。 お前の悪事は全て書面に記されておる。 最後くらい黙って死なぬか」
国王が教皇の元へ行き、そう告げる。
しかし、何やら教皇は不気味に微笑んでいた。
「ひっひっひっ。 別にこれが私の作戦ではない。そして、全ては整った。 私がしていたのは時間稼ぎに過ぎないのだよ。
兄上! 残念だったな! もっと早く刑を執行していれば良かったものを!!! いでよ! 『勇者召喚』!!!」
突如教皇の指輪が光だし天高く昇る。
その光の柱は凄まじいエネルギー量を持っており、皆がただ唖然と眺めている。
一人を除いて。
「悪いな国王。 正式に刑は執行できぬ。 私の手で殺させてもらおう」
ゼノンは剣を片手に光へと突っ込む。
「ガキンッ!!!!!」
光が晴れ、国王とレインが目を凝らす。
そこに立っていたのはゼノンの剣を剣で抑える一人の男の姿が。
そして、教皇の周りには二人の男と一人の女の姿が。
見たことも無い服装をしており、髪は派手な色をしている。
そして、ゼノンと鍔迫り合いになっている男が口を開く。
「あぁ?! なんだここは? しかもいきなり斬られるとかなんだよ?! ってかこの剣もなんだし?」
そしてもう一人の男が、、、
「やっべ!!! これってもしかして・・・・・・異世界転生じゃね?」
そう。この世界へと異世界から三人の男と一人の女が召喚されたのだ。
そして、何よりまずいのがその四人の力は凄まじく、人間の域を遥かに超えていた。
こうして、現場は大混乱に陥るのであった。
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