夫婦の絆
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そしてすみませんでした。
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「ゼノンッ!!!!!!」
メフィはゼノンに近付き、そっとゼノンの頭を自身の膝に寝かせる。
目は閉じており呼吸も苦しそうだ。
吐血も酷く、いつ死んでもおかしくは無い。
「ゼノンッ!!! 水の精霊魔法 癒しの雫」
メフィの指から輝く水が垂れる。
が、全く効いていない。
本来なら切り傷はもちろん、骨折や破損、四肢の欠損まで修復する程の力をもつ最上級水癒魔法なのだ。
それなのに治る事がなかった。
メフィは効かない事に苛立ちを覚える。
「どうしてッ?!!! なんで効かないのよッ!!! ゼノンッ! 死んじゃダメッ!!! お願いだからおきて!!!」
メフィの瞳から涙が一粒。
その涙がゼノンの瞼に溢れ落ちると、ゼノンの目が僅かに開かれる。
「・・・・・・メ、メフィ、か? な、なぜ、ここに、いる、、、」
か細い声でそう呟く。
こんなに弱りきったゼノンは初めてであり、見ているだけで辛かった。
「ゼノンッ!!!!!! よ、よかった、、、一体何をしたの?! 何をしたらここまでボロボロになるのよ」
「ま、魔法を創った、、、だが、だめだった・・・・・・いや、蘇生は叶わぬがミノを生まれ変わらせる事はできる、、、早く戻らなければ、、、」
その言葉に驚愕するメフィ。
そして、ゼノンがボロボロになった理由もわかった。
蘇生魔法よりも更に強力な代償を負ったのだ。
つまり、魔族や魔物であろうと復活する事が出来るのだろう。
しかし、そんなことは関係ない。
メフィの心配と怒りは収まらない。
「戻れるわけないじゃない!!! ゼノンが一番ボロボロなんだよ?! 貴方が死んだら余計にトラリーやムムが悲しむ!
いえ、二人だけじゃない、、、皆が悲しむ!!! 私を妻に娶って未亡人にするんじゃないわよ、、、私を惚れさせておいて一人にしないでよ、、、本当に心配したんだから、、、うぅ、」
顔を伏せて泣きじゃくるメフィ。
その涙はゼノンの顔へと降り注いでいた。
(くっ、、、何をしているのだ私は、、、速く治らぬか!
回復魔法で治らぬのなら自力で繋げ! 速く治らぬかッ!!!!!!)
ゼノンは全身の痛みに耐えながらも全神経を集中させ、骨の修復、内蔵の修復に集中する。
無駄と分かりながらも、自身に回復魔法を施しながら自身で繋ぎ合わせる。
すると僅か数分。
ゼノンの身体は完治したのだ。
ゼノンの恐ろしい自然治癒能力と回復魔法。
そして並々ならぬ精神力の賜物である。
何よりも、メフィの『涙』だ。
ゼノンは気付いた。
メフィの涙には癒しの涙がある。
それも指から出したあの魔法よりも。
だが、ゼノンも知らないことではあるが、その涙はいつでも出る訳では無い。
愛ゆえの涙でなければならないのだ。
そして、メフィも自身の今の涙に回復効果がある事は知らないだろう。
「メフィ、すまない。お前を一人には絶対にせぬ。
そして助かった。ありがとうメフィ」
突如綺麗になった身体に驚く。
そして精霊眼で身体の中を覗いても、傷んでいるところはなくむしろ健全な状態であった。
あれ程重症だったのになぜ?
そう思ったが、今は何よりも元気になったゼノンの姿を喜ぶ。
「本当によかった、、、ゼノン、、、ゼノンッ、、、」
メフィはまたしても涙を流しゼノンのおでこに自身のおでこをくっつけて泣き喚く。
そんなメフィの後頭部をゼノンは優しく撫でるのであった。
メフィが泣き止むまで待ち、落ち着いたところでゼノンは起き上がる。
「メフィ、本当に心配かけたな。お前が来てくれなかったら、私はどうなっていたかわからぬ。本当に感謝する」
ゼノンが珍しく頭を下げる。
初めて見るゼノンをたくさん見れたメフィはなんだか嬉しくなっていた。
いつも感情を表に出さない為、メフィは少し寂しかったのだ。
だからメフィは笑顔で、
「絶対に許さないんだから!!! でも、今度からは私もずっと一緒にいるから! 一人でしようとしないで? 私達は夫婦でしょ?」
夫婦という言葉に暖かさを感じゼノンは頷く。
「うむ。私の生涯一人だけの大切な存在。
何かあれば頼らせてくれ。ではムム達が待っている。
共に行こうメフィ」
ゼノンはメフィに手を差し出すとメフィも飛び切りの笑顔でその手を掴んだ。
目指すはミノの元へ。
トラリーはようやく落ち着いたが、ムムはずっと泣いている。
起き上がるはずのないミノの名前をずっと呼んでいた。
そして、他の者たちも皆合流し、ミノへの別れの挨拶を告げる。
「敵わない敵には歯向かうなとあれ程キツくいっただろうが。
じゃが、、、退けない大切な者が後ろに居ったんじゃな・・・・・・よく頑張ったなミノ」
バリアンもシンと共によくミノの訓練をしていた。
そして、互いに大柄な体型ということもあり、相撲をとって遊んだりもしていた。
ムム達を守ってくれたことに感謝し、ミノの頭を撫でるバリアン。
リリアやフレイ、レイラもミノとはそこまで接点は無かったにしろ、触れ合う機会はあった。
リリアと共に魔物狩りをしたり、フレイの重い荷物を持ってあげたり、レイラの家事を手伝ったりと、皆の思い出の中にはちゃんと
ミノと過ごした日々が詰まっていたのだ。
レイラの目からは自然と涙が。
リリアも涙ぐんでいた。
フレイもずっと下を向いている。
ミノは皆に愛されていたのだ。
「ミノ、、、ミノはもう天国に行っちゃったんだよね、、、ミノが心配するからムムはもう泣かないよ、叫ばないよ、だからゆっくり休んでねミノ、、、守ってくれて本当にありがとう・・・・・・大好きだよミノ、、、」
ムムは目を擦り、ミノの頬にそっとキスをする。
その光景を見ていたリリアやレイラ、バリアンにトラリーは余計に涙が溢れてしまった。
そして、シンやフレイでさえも涙ぐんでいる。
種族の壁を越え皆に愛されていたミノなのであった。
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