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禁忌魔法

「生き返らせてお父さん!!!」




ゼノンの目の前ではムムがそう泣き叫んでいる。


ムムの隣には左手を失いボロボロのミノの姿が。


この状況で全てを理解した。

ミノが居なければムムとトラリーは恐らく殺られていたのだろう。


そして、自分の考えが安易だった事にも気付かされた。

シンが間に合わなければ本当にギリギリだったのだと。


ルシウスの事前準備はかなり用意周到であり、ここへはSランク級の冒険者まで寄越したようだ。


完全にゼノンの失態であった。


「すまないムム、トラリー。そしてミノよ。お前達二人には怖い思いをさせ、ミノには辛く痛い思いをさせてしまったな」


ゼノンは二人の頭を撫でて、そのままミノの胸に手を置く。




「ゼノン、貴方の蘇生魔法って・・・・・・」


ゼノンの耳元でメフィがそう呟く。


メフィにはメフィにしか頼めない事を頼んでおり、その役目を終えた為、合流してもらったのだ。


そして、メフィの言葉にゼノンは険しい顔で頷く。




そこへはフェンリル(レオン)とフェニックス(イヴ)も合流していた。


二匹の敵には強敵は居なかったようで、なんとか撃退する事が出来たようだ。


いくつもの戦いを繰り広げての戦死者が一名というのはかなり少ない方であろう。


だが、それでもオルレア家で失っても構わない命など一つもなかった。

それが魔物であっても。




ムムとトラリーはミノの元でずっと泣いている。

シンに聞けば、ミノを殺した相手はシンが完膚無きまでに倒したとの事。




そして、ゼノンは二人に残酷な事実を伝える。


「トラリー、ムム。私の蘇生魔法は魔物を生き返らせる事はできないのだ。魔族でありながら、魔族を生き返らせる事が出来ぬのだ・・・・・・」


その言葉に絶望するトラリーとムム。


「どうして?・・・・・・やってみないとわからないよ! お願いお父さん! 試してみてよ!」


「何か方法は無いのですか? 父上には創造魔法があると仰いました! それで魔物を蘇生する魔法を作れないのですか?!」


二人が必死に掛け合うも、ゼノンは首を横に振るのみであった。


「ゼノンは500年も生きているの。その間に何人もの仲間を失っている、、、とっくに試したに決まっている。 ゼノンだって神様じゃないの。ミノには感謝して手厚く葬ってあげましょう」




メフィの言葉はトラリーとムムの心に突き刺さった。


それはそのはず。

ゼノンが試さない訳がなかった。

そして、ゼノンが出来ないというのならこの世で出来るものは居ない。


そんな者がいるとしたら、それこそ神のみである。




分かってはいても、知りたくない。

認めたくない。


ムムの涙は再び溢れ出す。


「いやだよ、、、ミノ、、、また遊ぼうよ・・・・・・起きてよミノ、、、ムムが、ムムが回復してあげるからッ ムムが治してあげるから! いやだよミノーーー!!! うわああああッ、、、」




「すまない、、、くッ」



ゼノンが悔しそうな顔をするのは初めて見た。

そして、そのままメフィはムムの元へ駆け寄る。



「ムム、、、ごめんねムム」


泣き叫ぶムムを抱き締める。

気付けばメフィの瞳からも涙が流れていた。


そして、トラリーも唇をかみ締め涙を流している。


「トラリー、ミノの勇姿を忘れるな。お前達を守る為にその命を張ったのだ。ミノの分も強くなれ」



そのキツめの言葉を聞いていたメフィがシンに注意しようと振り返るも、シンの手は強く握り締められており、血が流れていた。


それを見てしまっては何も言えない。

誰よりもシンが悔しかったのだろう。


冷たい男でありながら、誰よりも魔物を愛するシン。

当然ミノの事だって可愛がっていた。


そして、間に合わなかった事を悔いているのだ。


メフィはシンのその手を優しく握る。


「貴方のせいじゃない。悪い奴はもう倒したでしょう? 皆で一緒にミノを見送ってあげよう? ねっ」


涙を流しながらそう話すメフィにシンは歯をかみ締め頷く。

前髪で目元は見えないが、その瞳は涙を浮かべていたのかもしれない。




皆が泣いている中、メフィはあることに気付いた。


「あれ、ゼノンが居ない」


シンも慌てて周りを見るもそこにゼノンの姿はなかった。


「シンはこの子達の傍にいてあげて! 私はゼノンを探してくる!」


「はい」


こうしてメフィは突如消えたゼノンを探す事にする。


何か嫌な予感がする。

メフィの心がザワつく。




(ゼノン、、、お願い、、、無茶しないで!!!)




メフィは過去に一度だけゼノンの創造魔法について聞いたことがある。


あまりにも強いその魔法は当然、代償も大きい。


ゼノンが転移魔法を生み出した時、両腕の骨が折れたと言う。

ゼノンが蘇生魔法を生み出した時、全身の骨が砕けたと言う。




ゼノンは魔物の蘇生を魔法で作ろうとしているに違いない。

メフィ額に汗が垂れる。


「絶対にだめ! ダメよゼノンッ!!!!!!」




必死に探し回るもゼノンの気配は全く感じられない。


メフィの索敵で見つからないとなると、恐らく誰にも見つける事は出来ない。




「どこにいるのゼノン・・・・・・ッ?! そうだ! 土風混合精霊魔法

空間把握魔法!」




ゼノンが居ないとなるとこの世界には居ないのかもしれない。

ゼノンが空間にいると踏んだメフィは空間魔法を使用し探す。


穴から入り、生命反応を探知する。


「いたッ!!!」




確かに感じた。


だが、それはゼノンとは思えない程に弱々しい反応である。


悪い予感がする。

メフィは猛スピードでその生命反応へと走った。




「お願い、、、ゼノン、、、無茶はやめてッ」




必死に走るメフィ。

息切れをするなどいつぶりだろうか。


それほど、メフィの心は動揺していた。





そして、とうとうその弱りきった生命反応の元へと辿り着く。


それを見てメフィは驚愕していた。


「ゼ、、、ゼノン?、、、」


そこには全身の骨が砕け、内蔵が破裂し、あらゆる穴から出血しいつ死んでもおかしくない姿のゼノンの姿があったのだ。


いや、最早生きているのが有り得ない程である。


メフィは震える身体でゼノンの名を思い切り叫んだ。





「ゼノおおおぉぉぉンッ!!!!!!」

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