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復讐の灯火

場面は変わり、ゼノンの住まうジグマ城にて。


ゼノンは帰還していた。


理由は一つ。

真相を確かめる為に。


城へ戻ると玉座の間へと向かう。

そこには宰相であるルシウスの姿が。


「これはこれはゼノン様、この様な大事な時に如何致しましたか? ここは私めが指揮を執る故お任せ下さい」




いつもの様にそう話すルシウス。


「単刀直入に言おう。教皇を裏で操っていものはお前だなルシウス」



その言葉でルシウスの眉間に皺が入る。

どうやら本当の様だ。


「いやはや、まさかこんなにも早くバレてしまうとは・・・・・・

ゼノン様に言い訳等無用でありましょう。 如何にも、このルシウスが教皇を裏で操っていた裏ボスとでも言いましょうか?」




思いの外アッサリと答えるルシウスにゼノンは少し肩透かしであった。

頭の回るルシウスなら、否定してくるもんだと思っていたから。

いや、もしかすると頭が良いが故に認めたのかもしれない。


言い訳が如何に無駄な行為か知っているが故に。



「ほう。認めるか。 四種族を魔界に攻めさせた理由はなんだ? 魔族の崩壊が目的か? それとも、四種族を返り討ちにし絶滅させるつもりか?」



ゼノンの問いに目を見開くルシウス。

それは、まるで何を言っているんだ? とでも言わんばかりの顔である。


「いいえ。どちらも違います。 ゼノン様は人間と長らく暮らしている為に、思考も変わってしまったようです。

私の目的は『人間界のみの殺戮』です」




ゼノンは納得した。

ルシウスの過去を知っている者が居るならば、誰でも納得するであろう。


ルシウスは家族を人間に惨殺されたのだ。

それも、ルシウスの目の前で。


ゼノンがギリギリの所で助けたが、生き残っていたのはルシウスのみ。


他のものは、人間の兵士の試し斬りで弄ばれ殺された。




その事を考えればルシウスが恨むべき相手は人間であると理解出来る。

そして、それはルシウスの言う通りゼノンが変わってしまったのかもしれない。


「そうだな。すまない。 お前の過去を知りながらも私は人間と共に居る。 お前の苦痛も知らずに人間と生活史をしている。

私はお前の主として失格であるな。すまなかった」




ゼノンは初めて頭を下げた。

その光景にはルシウスも驚きを隠せない。


何せ、ルシウスはゼノンと最も長く共にしているのだから。


「ゼノン様、頭をお上げください。むしろ、下げるべきは私なのですから。これは言わば私怨なのです。そして、力無い私はこうする他、その私怨を遂行する事は敵いませんでした。貴方を裏切ったのですから」




やはり、そこはゼノンの予想通りであった。


「私の家族を襲わせ、私の人間への敵意を生み出し殺させようとした。そういう事だな?」




ゼノンの答えにルシウスは真顔であった。

ゼノンなら気付くだろうと分かっていたからだ。


「その通りでございます。 手下である私如きがゼノン様を利用しようとした罪は死して償いましょう。ですがもう暫くお待ちを 」



ルシウスの口振りはまるで、まだやるべき事があるとでも言わんばかりの発言である。


「この後は何をする気だルシウス」


ゼノンが訊ねるもルシウスは黙り込んで顔を伏せたままだ。

そこでゼノンは考えた。


ルシウスの終着点を。

まず、やり遂げたら間違いなく死のうとしているのは確実だ。


そして、そのやろうとしている事がなんなのか。


教皇を殺す?

まずそれはない。

いや、教皇は殺すかもしれないがそれはついで程度だろう。


教皇を殺すだけなら、今までも殺る時はあったはず。


では国王か?

国王を殺したところで、それがルシウスの心が晴れるとは思えない。


何故なら人類全てを恨んでいるのだから。


だが、ルシウスに人類を滅ぼす程の力は備わってはいない。

人類を滅亡させる事が出来るのは恐らく自分かメフィくらいだろう。




そこまで考えてゼノンは分かった。


「私の子供達・・・・・・トラリーとムムか」




ゼノンは初めて戦慄を覚えた。

ルシウスが狙っていたのは最初から最後までゼノンの家族の命だ。


全ては最強たるゼノンの怒りを人間に向ける為。


つまり、トラリー達は今人間に狙われているはず。


「ルシウス。確かにトラリー達を殺すような事があれば私は殺した人間を許さないだろう。だがな、それ以上にルシウス、お前を許さぬぞ」




ゼノンは溢れんばかりの殺意をルシウス目掛けて放つ。


その殺気は、城の中に居る魔族をも気絶させる程であり、ルシウスも立っているのがやっとというところである。


「はぁ、はぁ、はぁ、さすがはゼノン様です。 私が殺されるのは百も承知です。許してもらおうなどとは思いませぬ。最後はゼノン様に殺されれば本望」




何よりも人間への復讐が一番。

それ以外は取るに足らぬ小事。


恐らくだが、ルシウスが生きながらえているのも人間への復讐の

執着心からだろう。




それが済めば生きる意味を失いどっちにしろ死ぬはずだ。


ルシウスの思いを感じ取るとゼノンは、殺気を収めルシウスに言葉をなげかける。



「私はこれより、トラリー達の元へ向かう。少しここで待っていろ」




ゼノンがそう言うとルシウスは頷き、そのままゼノンは転移する。





玉座の間に残ったルシウスは玉座を見つめていた。


「私の主は変わらずゼノン様、貴方様だけです。 私も人間と触れ合う機会があれば変われたんでしょうか」


誰もいない空間で訊ねるルシウス。

今更後悔しても遅い。

ここまで来たら最後まで走り抜くと決めたルシウスなのであった。

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