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本物の恐怖

「はーーーいっぱい楽しんだしもう満足。

君達も殺さずに捕らえてあげるから大人しくしててね」




トラリーとムムにそれぞれ手が迫る。

自分達を掴もうとする大きな手が。


もう守ってくれる者はいない。結局自分達は無力だった。


二人は特に抵抗することも無く、未だにミノに抱き着いていた。




ライオットの両手が二人に触れる。

まさにその時だった。




「ぐへッ」




両腕を突き出し迫ろうとしていたら、突如目の前に硬い何かが現れたのだ。


顔面をそれにぶつけ、驚きながらも『それ』を見る。



「退け」


ライオットは突如現れた者に、剣の鞘で顔面を叩かれ吹き飛ばされる。


一瞬の出来事に驚くトラリーとムム出会ったが、目の前には

二人が安堵する姿があった。




トラリー達の目の前に立つのはシンだった。


神速のシン、その名の通り、自分の持ち場の仕事を終えると

神速の如く、二人の元へやって来てくれたのだ。




「すまない。怖い思いをさせたな」


シンは振り返り、トラリーとムムの頭に手を置く。


シンの顔を見て安心したのか、急に二人の目からは涙が溢れる。

怖い者に襲われ、ミノは殺され、二人にはいっぱいいっぱいだったのだ。


そして、その現場を見ればシンも理解出来た。


「シンお兄ちゃん、、、ミノが、ミノがッ! 助かるよね?! ゼノン様なら助けられるよね?! ミノはムム達を守る為に死んじゃったの! ムム達のせいで!、、、」


「シン兄さん、ごめんなさい・・・・・・僕が弱いせいで・・・・・・ミノが・・・・・・助けてくださいッ、 うぅ、、、」


二人がシンの服を握りしめながら涙ながらに訴える。




そして、シンの目には血を流し、左腕を無くし息絶えたミノの姿が。


身体の傷を見れば分かる。

どれ程斬られたのか。


そして傷の深さを見れば分かる。

どれ程甚振られたのか。




シンの表情は変わらないものの、右手に力が入る。

そして、トラリーとムムの肩に手をそっと置く。


「トラリー、ムム。ミノのおかげで俺は間に合った。俺が戻るまで傍に居てやれ。 そして、俺は奴の元へ行く。 外へは出るな。いいな?」




シンは表情は変わらないものの、怒っているのを肌で感じた。

トラリーもムムも涙を垂らしながら力強く頷く。





「いてててて、いきなり出てきてなんだなんだ? 久しぶりイラッときたなー。 まずはお前から殺、ッ?!!!」




ライオットが話終わる前に突如、身体を持っていかれる。

こめかみに痛みを感じながら、物凄い速さで後方へと身体が持って行かれる。




「どごおおおんッ!!!!!!」




ようやく止まったと思った時には、岩壁に身体がめり込んでいた。


「ガハッ!!!!!!」


口から血が吹き出る。

身体中が痛い。




そして、ライオットは止まってようやく現状を理解した。


シンに頭を掴まれ、そのまま光速で後方へと持って行かれ

岩に叩きつけられたのだ。


目の前には自分の頭を握りしめるシンの姿が。


その眼光は鋭く、殺気を放ち、呼吸が苦しくなる。

いや、ここ全体の空気が重い。



ライオットが初めて体験する恐怖であった。




「はぁ、はぁ、はぁ、い、一体なんなんだお前はッ!!! 急に邪魔しやがって!!! 」


いや、ライオットは相手が誰かわかっていた。

教皇にも気を付けろと言われていたその相手を。




『シン・オルレア』


オルレア家の長男であり、その力はそこらの大人よりも遥かに上だと。





分かってはいたが、脳が認めたくなかったのだ。

何せ、自身の力ではまるで歯が立たないと思い知らされたのだから。


S級ランクである自分が。




「ミシミシッ」




ライオットの頭を握り締めるシンの右手に力が入る。


ライオットは悲痛な叫びを上げるも、シンの力が緩むことは無かった。


「あの二人は俺の弟と妹だ。 そして、お前が殺したミノタウルスは俺が手塩をかけて育たてた家族も同然の者だ。今から見せる光景はとてもじゃないがあの二人にはキツすぎる。 お前にこれから

『本物の恐怖』を見せやる」




そう言うとシンは掴んでいたライオットの頭を後ろへと放り投げるとその場から一瞬で消えてしまった。





突如逃がされたライオットは何が何だかわからないが、急いでその場を立ち上がり、近くの森へと走り込む。




「はぁ、はぁ、はぁ、聞いてない!!! あんなに強い奴がいるなんて!!! 逃げなきゃッ!!!・・・・・・ぎゃあッ!!!」




突如身体の2箇所を斬られた。

速すぎて見えないとかの次元ではない。


急に切り傷が出てきたのだ。


それが何十回、何百回と続く。

まさに地獄だ。

どれだけ叫ぼうが、どれだけ逃げようがその攻撃が止まることは無かった。







そして、ソレが万を越した時。


ライオットは地べたに蹲り、身体で切られていないところは最早無かった。

文字通り全身を斬られ、血を流し、それでも生きていた。




「も、もう、、、こ、ころして、く、ださい、、、」


ライオットの精神は崩壊していた。


最初こそ叫んでいたものの、最早痛みも無く、声を出す力もなかった。

いや、生気がなかった。


今思うのは一つ。


死んで楽になりたい。


ただそれだけだった。




そして、とうとうライオットの目の前にシンが姿を現す。

最初に見て以来の姿である。


「お、、おまえは、もしかして、し、神速の、シンか? ま、魔族の」


シンという名は別に珍しいものでは無い。

だが、神速のシンはこの世でただ一人。


流石にこれだけ力を見せれば勘づかれる。

と言っても、今更気付いても無意味ではあるが。


何せ、これから死ぬのだから、、、




「相手を間違えたな。 そろそろ弟達の元へ戻らなくてはいけない。 これで終いだ」


ライオットの脳天目掛けて剣を突き刺す。




これでようやく、ライオットは死ぬ事ができた。

ライオットからすればようやく解放された事になる。




シンは剣を抜き去ると、血を振り払いその場を後にした。


そして、シンが剣を鞘にしまった時、ライオットの首が地面へと転がる。


シンは抜き去る瞬間に首を切っていたのだ。




「お前はあの世でも頭を無くし永遠と彷徨うがいい」


こうして、元S級ランクであるライオットは、シンの圧倒的な力の前に平伏すのであった。


だが、ミノを失ったのはあまりも大きかった・・・・・・。

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