ミノの勇姿
「ミノッ!!!」
ライオット目掛けて戦斧を振りかざすミノタウルス。
突如現れたミノタウルスにライオットは、焦ると思われたが、トラリーの勘は外れた。
なんと、ライオットは更に笑みを増しているのだ。
「ミノタウルスじゃん! いいじゃんいいじゃん!!!
このデカさだと、しぶといから何度切っても大丈夫そうだね
あー、、、最高」
ライオットの顔は歓喜に満ちていた。
そして、ミノタウルスの戦斧がライオットの頭上目掛けて振り下ろされる。
「どごおおおんッ!!!!!!」
ミノタウルスの力は最早S級並である。
流石のライオットもタダでは済まない。
そう思われたが、またしても予想を裏切られる結果が目の前にはあった。
余裕の笑みでライオットが受け止めていたのだ。
「そ、そんな・・・・・・ミノの一撃を・・・・・・」
ミノに期待していたが、ミノでも厳しいと瞬時に理解した
トラリー。
だが、それでもミノは戦斧を振り続ける。
ライオットは素早さ重視なのか、ミノの攻撃を躱してはチクチクと少しずつミノの身体を切り刻んでいた。
そう、まるで嬲って弄んでるかのように。
「にーに! ミノが ミノが殺られちゃう! ムムが回復しなきゃ!」
「・・・・・・よしッ! ムムは後ろから回復を! 僕はミノに援護してくる!」
二人もミノの加勢をするべく、震える足を堪えミノに近付く。
そんな様子をライオットは横目で見ると急に、その顔から笑みが消える。
「ねぇー、楽しんでるのに邪魔をするなら殺すよ?」
ライオットの殺気に満ちた顔は、一気に二人を戦意喪失させる。
そして、ライオットは物凄いスピードでミノの前から消え
トラリーとムム目掛けて剣を振りかぶっていた。
(だ、だめだ!!! 僕なんかが少しも適うような相手じゃない! ムムだけでも!!!)
少しでもミノの加勢をと思ったが、焼け石に水であった。
むしろ、ミノの状況を更に悪くしてしまったかもしれない。
そう思う程、自分達は無力であると実感した。
トラリーは剣を構え、ムムの前に立ち盾となる。
「にーにダメーッ!!!!!!」
ムムもトラリーの意図に気付き、叫ぶも既に遅い。
「ザシュッ!!!!!!」
血が飛び散る。
トラリーとムムの顔に。
ミノの血が。
ミノが盾となってくれたのだ。
「ミノおおぉッ!!!!!!」
ミノの左腕は切り落とされた。
夥しい血が流れている。
だが、トラリーとムムは無事だ。
そして、ミノは右手に持っていた戦斧を既にライオット目掛けて振り下ろしている。
「ぶもおおおおッ!!!!!!」
最初から腕は犠牲にするつもりであった。
全ては、この一撃を放つために。
流石のライオットも、ミノと距離を詰めすぎた為、受けることも避け切ることも不可能な距離であった。
「ちっ!!!」
足で思い切り、地面蹴り後方へと跳ぶライオット。
その胸には一文字の傷が。
ライオットは自分の胸の傷に触れ、プルプルと震えている。
「痛いのは久しぶりだよ・・・・・・もういい。君に本当の絶望を教えてあげよう。そして、お前達!!! 一歩でも動いたら殺すよ?」
ライオットの言葉で腰を抜かす二人。
実際問題、このメンバーでライオットに対抗出来る手段はひとつも無かった。
つまり、ただ目の前の惨劇を座って見ているだけ。
どのくらいだっだろうか。
トラリーとムムは歯を噛み締め、目の前の光景をただただ見ていた。
最早、傷の無い場所を探す方が難しい程、血だらけとなっているミノ。
ふらつく身体で、それでも立ち続け、トラリーとムムの盾となっているのだ。
だが、とっくに限界は過ぎている。
立っているのがやっと。
いや、生きてるのがやっとのミノはいつ死んでもおかしくない状況であった。
そんなミノを見続けて、いてもたってもいられなくなったムムが、
「あっ!!! ムムッ!!!」
立ち上がり、ミノの前に立ち両手を広げ、今度はミノの盾となったのだ。
「お願いもうやめてッ!!! ムム達は貴方について行くから!!!
だから、もうミノを傷付けないで!!!」
顔を涙で濡らしながら必死に訴えるムム。
大切な友達、いや家族がこれ以上殺られるのは見ていられなかった。
「僕達はついて行きます! だから、もうミノは見逃してください!」
ムムに感化され、トラリーもムムと同様に立ち塞がる。
そんな二人を見て、ライオットの笑顔は消え、つまらなそうな表情で答える。
「なーんか冷めちゃったなー。 もういいやー」
そう言うとライオットは振り返り明後日の方向を向いた。
その瞬間、膝から崩れ落ちるミノ。
「ミノッ!!!!!!」
ムムとトラリーもミノへと振り返り、ミノに手を触れる。
「ムムが治してあげるから!!! もう大丈夫だよ!!! 痛かったよね・・・・・・ごめんねミノ、、、」
涙を流しながらも回復魔法を掛けて傷を癒すムム。
「ミノ本当にごめんね、痛いだろうけど左腕の傷口を燃やして血を止めるね」
そう話すとトラリーはファイヤーを軽くだし、ミノの左腕の断面を炙る。
おかげで、左腕の出血は止まった。
「本当にありがとう、、、」
二人は何度も何度も御礼を言う。
「ぶもぉ」
弱々しい声で答えるミノ。
しかし、何を言っているかは分かるはずもない。
ムム以外には。
だが、今の一言は不思議とトラリーにも分かった。
『気にしないで』
その言葉が確かに聞こえてきた。
「ぶもおおおお」
続けてミノが小さく吠える。
流石にこれは分からなかったようでトラリーはムムに訊ねる。
「んっとね、もう少ししたらレオン達もきっとやってくる。
だから、絶対に逃げろって。アイツの元に行っちゃダメだって」
ミノはライオットの異常性を魔物ながら感じていた。
奴の元へ行けば、二人が生きては帰れないかもしれない。
だから、絶対に着いて行くなと言う。
「わかったよミノ。僕達はここを離れない。そして、君を見捨てはしない。ずっと近くに居るよ。 レオンが来るまで待っていよう」
その言葉にミノは安堵したのか、少しだけ顔が和んでいる様子だった。
そして、微笑んでいる人間がもう一人。
ライオットだ。
急に振り返り、ライオットは剣を構えトラリーとムム目掛けて突き刺そうとしていたのだ!!!
トラリーとムムはライオットに背を向けている為、まだ気付いていない。
ミノはその行動をいち早く察知し、トラリーとムムを右腕で抱き締め、後方へと振り向く。
つまり、二人を庇う為、自らの背中を盾としライオットの
剣を防いだのだ。
一瞬の出来後であり、何が起きたのか理解出来ていない
二人。
気付いたらミノに抱き抱えられ、目の前には血を吹き出すミノの姿があった。
「・・・・・・ミノ?」
ムムがミノの顔を見て、名前を呼ぶも既にその目からは生気を失っていた。
死んだのだ。
いや、この出血量。
遅かれ早かれの問題であった。
それにはトラリーも呆然としている。
そして、
「ミノ、、、そんな・・・・・・何故だ!!! 何故殺したッ!!!
着いていくから殺すなと言ったじゃないか!!! もういいと言ったじゃないか!!!」
ライオットに激昂するトラリー。
そんな当の本人はまたしても笑みを浮かべている。
「魔物に約束なんかするわけないでしょ?! 馬鹿なの?!
はぁーーー、生きる希望を持った者を、また蹴落とすのって本当に堪らないよねー」
巫山戯た言葉を並べ、笑い続けるライオット。
そんなライオットに腹を立てると同時に自分にも腹を立てるトラリー。
(僕が・・・・・・僕が強ければミノは死なずにすんだのに、、、ごめん。ごめんミノ)
倒れるミノに顔を埋めるトラリーとムム。
「いやだ・・・・・・いやだよミノッ!!! 起きてムムとまた遊ぼうよミノ!!! 回復してあげるから!!! ムムがずっと一緒に居るから!!! ミノ・・・・・・いやあああああああああッ!!!!!!」
ムムの精神も限界である。
オルレア家の中でも、特にミノと仲良しだったムム。
暇さえあればミノには遊んでもらっていた。
いつまでも泣き叫ぶムム。
トラリーとムムを守る為。
その言葉の通り、体を張って二人の命を守ったのであった。
ミノタウルスのミノ。ここに死す。
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