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幻獣種

オーガを倒しなんとか全員の命が助かった事に一安心していると後ろからゼノンとレイラが来た。




「無事か?」


「皆大丈夫?!」


現場へ着くと、ムムはずっと泣きながらトラリーに回復魔法を掛けていた。


しかしムムの力ではまだこの大きな傷は治せず、ただただ泣くだけだった。



そこへレイラが駆けつける。


「ムムちゃん! 私が代わります!」


「レ、レイラお姉ちゃん・・・・・・ムムじゃダメだったよ、にーにを治せなかったよ・・・・・・」


泣きながら悔いるムム。



「ムムちゃん! 大丈夫ですよ! あなたはまだ5歳なんですよ! 何でも一人で抱えないで! 一緒に治しましょう!!! トラリー君!!! 今回復してあげるわね!!! 高位の癒し(エクストラヒール)!!!」


するとトラリーの身体はみるみると傷が治り骨折も治り綺麗な体になった。


これが聖女の力。

ムムは驚きと共に、自分の不甲斐なさに落胆していた。


「す、すごい!!! あとね! 狼さんも助けてあげて欲しいの!!!」


「えっ?! 狼?! あっ・・・・・・この子ってもしかして・・・・・・」


レイラは薄らと気付き、ゼノンは確信していた。


「うむ。恐らく『フェンリル』だな。その大きさからするにまだ

子供だ」


「幻獣種のフェンリルが何故こんなところに?!」


これにはリリアも驚いていた。

そんじゃそこらでお目にすることが出来ない希少種である。


「は、初めて見ましたよ幻獣種なんて・・・・・・」


レイラも本でしか見たことがないらしく現物は初めてのようだ。


「こんなに大きいのにまだ子供なの?

レイラお姉ちゃん・・・・・・この子も治してくれる?」


ムムが心配そうにレイラにお願いする。


「はい! もちろんですよ!!! 高位の癒し(エクストラヒール)


レイラの癒しのおかげで狼も無事に傷は綺麗に消えた。

しかし、傷は治っても疲労は残っているようで起き上がる素振りは無い。


そんな二人を心配したムムは不安げな顔で、


「二人とも起きないよ?」


「うむ。傷は癒えても疲れで眠っているのであろう。私が運ぶ故帰るぞ」


そういうとゼノンは後ろにトラリーを背負い、前で狼を抱えた。


「ゼ、ゼノン様がしなくとも私が持ちます!!!」


その光景に驚いたリリアは慌てている。

ゼノン自らやるなど配下として見過ごせないのであろう。


「いやよい。これが父親のする事であろう?」


ゼノンも父親らしい事をしてみよう。

ほんの気まぐれでそう思った。



「それはそうとリリアよ---お前が使った魔法。それは最上級魔法であろう? その様な雑魚に使う魔法ではあるまい。」


ゼノンの言う通り、今の魔法はリリアのオリジナル炎魔法で最強の炎魔法であった。

オーガに使うなど、オーバーキルもいいところだ。



突然自分に話を振られ慌てふためくリリア。


「はっ!!! す、すみません!!! 頭に血が昇っていました!!!」




レイラとムムはゼノン達の後ろを歩く。


「ふふふっ。素敵なお父様ですね」


「にーにばかりずるいなー・・・・・・」


背負って貰うのが余程羨ましいのか、頬を膨らまし拗ねるムム。


「ふふっ、ムムは甘えん坊だな。こっちにおいで」


そういうとリリアはしゃがんでおんぶの姿勢をとる。

当然、ムムは大喜びだ。


そのまま「わーい!!!」とはしゃぎリリアに飛び付く。


一悶着はあったものの、何故だか前以上に家族のように絆が深まった。

そう感じるムムであった。


そしてみんなで無事に、帰る事ができたのだった。




家に着くとトラリーとフェンリルはベッドに休ませる。

まだ起き上がる素振りは無い。


余程疲れが溜まっているのであろう。


ゼノン、ムム、リリア、レイラは皆で椅子に腰を掛けていた。

そして、事の経緯をムムから聞き出す。


何故、あんな事が起こったのか。

ムムは申し訳なさそうに語り出す。


「ごめんなさい・・・・・・ムムがいきなり飛び出したからにーにがこんな目に・・・・・・」


「ムムちゃんはどうして一人で先走ってしまったんですか?」


「・・・・・・あのね、頭の中に狼さんの声が聞こえてきたの。苦しいよって、痛いよって。だから助けたくて・・・・・・」


その話を聞きリリアは一つの可能性を勘ぐる。


「ムム、あなたもしかしてミノタウルスの声も聞こえてる?」


「うん!! ミノとはよくお話してるよ!!」


やはりだ。

そして、レイラが思わず口ずさむ。


「魔物に愛されし者・・・・・・」


「ふむ。私でさえも唯一習得出来ておらぬ。まさかムムがその称号を持っているとはな。」


ゼノンでさえ持っておらず、ムムだけに与えられた特別な力。


「魔物に愛されし者? なーにそれは?」


突然ムムが知る由もなく、ゼノンが説明する。


「うむ。ユニーク魔法みたいなものだ。恐らく世界に一人だけであろう。私に創造魔法というユニーク魔法があるように、ムムには魔物の声が聞こえる。という魔法を授かったようだな」


「聖魔法にユニーク魔法持ち。ムム、あなた本当に凄いわね!」


「世界に一人しかいない存在。凄いですよムムちゃん!」


「そうなの?でも魔物の皆とお話できるの嬉しい!!!」


ムムはことの重大性に気付いていないようだが、今はこれでいいとゼノン達も思う。


だが、知れ渡ればこぞって人間共は勧誘に来る。

それほど、ユニーク魔法は重視されているのだ。


当然口止めもしておく。


「この話を国が知ったら必ず利用するだろう。他言無用だ。良いな?」


「はいっ!!!」


「はーい!!!」




すると話も終わる頃、ライムが飛び出してきた。


「皆さん! トラリーも狼も目を覚ましましたよ!!!」


そうしてライムの後に一人と一匹が入ってくる。


「にーに!!!」


思わず抱きつくムム。


「よかった・・・・・・ムムは怪我はなかったかい?」


自分の方が危なかっただろうに、妹を気遣うトラリー。


「うん!!! リリアお姉ちゃんが助けてくれたよ! にーにありがとう!!! あと・・・・・・ごめんなさい」


「よかった。もう二度と一人でどこかへ行かないでね」


「うん!!!」


二人は抱き合って涙を流し合う。

これが兄妹愛かとゼノンも微笑ましく見守る。




二人が落ち着いた頃にフェンリルについて話し合った。


「ムム、フェンリルに何故あそこに居たのか聞いてくれるか?」


「わかった!!! 狼さん、どうしてあんな場所に一人でいたの?」


(やっぱり君は僕と会話が出来るんだね。僕は最初獣人の国という場所に母上と住んでいたんだ。でも母上が寿命で亡くなってしまってね。僕はどうしようかとさ迷っていたんだ。そしたら沢山の人間が来て、僕を捕まえたんだ。人間の国に着くと牢屋から出された。その時に急いで逃げたんだよ。そしたらオーガに出会ってあの状況だよ)


「うーん。ちょっと長くて難しいよ。あのね・・・・・・」


ムムはフェンリルに言われた事を必死に皆に伝えた。


「ふむ。そういう事か。しかし人間はなんと愚かな」


「恐らく教皇派でしょう。フェンリルの力を利用するつもりです。」


「ゼノン様!いっその事滅ぼしますか?」


あまりにも恐ろしいリリアの発言。

しかしゼノンなら数刻で滅ぼす事は可能であった。


「いや、よそう。人間全てが悪では無い。魔族と同じ様にいい人間も居れば悪い人間も居る。だが悪い人間はどうにかしないとけないだろうな」


「ねーゼノン様?」


その時ムムが話を遮りゼノンに問い掛けた。


「ん?どうしたムムよ」


「狼さんは一人でしょ? ここで暮らしちゃダメかな?」


ムムが驚きの発言をする。

人間の次は幻獣種。


だが、フェンリルに至っては戦力にもなるしムムの護衛にもピッタリかもしれない。


「なに?・・・・・・うむ。フェンリルがそれで良いならいいだろう。」


「やった!!! ねー狼さん! ここで一緒に暮らす?」


(えっ?! いいの?! 僕はずっと一人だった。皆の家族になりたい!!!)


フェンリルの尻尾は激しく振られている。

それだけでも、ムム以外の者もフェンリルが何を言っているのか予想出来た。


「狼さんもここで暮らしたいって!」


「なら良かろう。名前を付けてやったらどうだムム」


「んー・・・・・・男の子でカッコイイ名前がいいから・・・・・・レオン!!!!!!」


「あらシンプルでいいじゃない! 似合ってるわよレオン!」


「レオン。 素敵な名前ですね! これからよろしくお願いしますねレオン」


リリアとレイラもムムの機嫌をとるためではなく、純粋にレオンという名を気に入った。


「フェンリルと一緒に暮らすなんて驚きです・・・・・・いやもう慣れました」


トラリーも驚き耐性がようやくついたのか、我を保っている。


「うむ。レオンよ。 強くなれ。母のように強く賢い賢狼になるのだ」


「レオン!!! 今日から一緒に寝ようね!!!」


レオンは「ウォンッ!!!」と一言吠えて返事をする。


またしても家族が増え家の中は賑やかになっていった。

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