旧家の戦い
皆が戦争を止めに行っている間、トラリーとムムは昔住んでた洞窟の家に入っていた。
今住んでいる家の場合、騒動の最中に闇討ちしてくる恐れがあったからだ。
あの教皇の性格上、そう簡単に諦めるとは思えない。
だから、家には執事長であるハドソンと門兵長ザックス達を配備してきたのだ。
護衛にはフェンリルにフェニックス、そしてミノタウルスがついていた。
「にーに、お父さん達大丈夫かな? いっぱいの人達が戦ってるんでしょ?」
不安になっていたムム。
それもそうだ。
彼女はまだ7歳なのだから。
「大丈夫だよ。父さんや母さんはもちろん、兄さんや姉さんは最強なんだから! きっと直ぐに終わらせてくれるよ!」
トラリーもまだ若いながらにしっかりお兄ちゃんとして
妹の不安を取り除く。
出来た兄だ。
そして、ムムの頬をペロンっと。
驚いたムムが振り返るとそこには巨大な狼であるフェンリルが。
昔は少し大きな大型犬であったが、今では犬では通らない程に大きくなっていた。
馬よりも一回り大きいのではないだろう。
そして、フェニックスも成長しており、羽を広げればその体長は3mを超える。
ミノタウルスは筋肉隆々であり、身長も3m近くまで伸びていた。
こんな最強の魔物達が守るのだから鉄壁と言える。
そんな時だった、、、
「う゛ぅぅう゛う゛ぅ」
レオンが唸り出す。
そして、それは襲来の知らせである。
(ムム、敵が来る。 人間・・・・・・100)
『魔物に愛されし者』
このユニークのおかげで、ムムは魔物であろうと会話を取ることができる。
「にーに! レオンが人間、100だって!」
トラリーは頷く。
つまり、100人の人間がこの地へと迫っている。
だが、焦ることは無かった。
事前にこの事態をゼノンも危惧しており、トラリーとムムに言い伝えてあったから。
「レオン! イヴ! ミノ! お願い!」
(任せろムム! 俺達が直ぐにケリをつけてやる!)
(それじゃあ行ってくるねムム!)
(ムム達は絶対出てきちゃダメだからね)
ミノ、レオン、イヴがそれぞれムムに伝えると外へと駆ける。
その間、二人は必ず外に出ない事。
もし敵が生きて帰ったならば、ここの洞窟は上位種の魔物の住処として知られる為、手を出さなくなるだろうと予測した。
だから、人間である二人は家の中で隠れてるのだ。
洞窟の外には100人の兵士が。
一人だけ身なりのいい男がおり、その男がこの隊を率いる者であり教皇の派閥の人間だ。
そして、人間達は目の前の光景に戦慄を覚えた。
「フェ、フェンリル・・・・・・それにフェニックスにミノタウルス、だと・・・・・・」
「こんな化け物が居るなんて聞いてないぞ、、、」
「だ、だが、コチラは100人居るんだぞ? それに、、、」
怯える兵士たちであった。
そもそも、兵士達は何故ここに来たのか理由すらわからない。
そして、こんな化け物達と戦うなんて聞いていなかった。
「静まれ! 教皇様の策の元、この中にいるであろう人間を必ず捕縛するのだ! あの魔物と戦う必要は無い! 引きつければ良いだけ! 行けッ!!!」
隊長である、貴族の言葉で兵士達は何故か安堵して突撃する。
『戦わなくていい』
その言葉だけでもだいぶ気が楽になったのだ。
100人の兵士が隊長の命令の元。魔物目掛けて槍を構え突撃する。
(アイツらムム達を誘拐するとか言っていたな)
レオンは人間達と長く暮らしている為、人間の言葉をかなり聞き取れるようになっていた。
そして、イヴやミノも同じ。
(そうね。 許せないわ。 もしかしたら、この他にも伏せているかも知れないわ)
(あぁ、イヴは上空より監視しながら魔法の攻撃を、レオンはとにかく殺しまくれ。 俺は万が一に備えて後方で援護する)
ミノの指示に二人は頷く。
ミノがオルレア家の最古参であり、自然とリーダー格となっており、レオンとイヴもそれに従っている。
そして戦いが始まった。
まさに惨劇。
噛み砕かれ、戦斧でバラバラにされ、燃やし尽くされ・・・・・・。
人間達は地獄を目の当たりにしていたのだ。
惹き付けるだけ。
そんなの不可能な話であった。
だが、後悔してももう遅い。
人間達はその数を徐々に減らしていき、最早全滅は間近である。
その時だった。
ミノは何か嫌な予感を感じる。
レオン程、鼻は効かないし、イヴ程、目も良くない。
直感とも言えるべきもの。
(レオン! イヴ! ここは残り少ない! 任せていいか? 俺はムム達が心配だ! 少し戻る!)
その言葉に二匹も頷く。
ミノがそう言うなら何かあるのだろう。
幸いミノが人間を数多く殺してくれたことにより、大分楽になっていた。
ミノは急ぎその場を引き返す。
その頃、トラリーとムムは部屋の中に潜んでいた。
外とは打って変わって、中はとても静かだ。
「にーに、レオン達は無事かな・・・・・・」
いくら三匹が強いとはいえ、心配するのは当たり前だ。
先程から落ち着かない様子のムム。
「大丈夫だよ。あの3匹に勝てる人間なんてS級ランクは無いと勝てないよ!」
トラリーの言葉に少し安堵したのか表情は落ち着いていた。
その時だった。
「ねぇー、誰かいるー?」
「ッ?!!!」
人間の声が。
トラリーも訓練の結果、気配察知はだいぶ身についていた。
その為、ある程度離れていても人の気配は気付けると自負している。
だが、全く気づかなかった。
その事で相手が強者であると予想する。
実際にその男の名は『快楽殺人のライオット』
と呼ばれており、元S級冒険者だ。
力はS級であるものの、粗相が悪く、何度も殺人事件を犯した為、冒険者の資格を剥奪された。
物陰に隠れる2人。
そして、中に入ってきたのは一人の男。
やる気の無さそうだが、不敵な笑みを浮かべており、手には見たことも無い形状の剣を肩に担いでいる。
一言で言えば、気味の悪い人だった。
「はぁーあー、教皇にはたくさん金を貢いでもらったからなー。
言う事を聞かないような奴ならちょっと甚振っちゃおっかなー」
ただでさえ気味の悪い人だというのに、その言葉は更にトラリー達を恐怖へと運ぶ。
現に二人は怯え、ガタガタ震えている。
そんなムムを強く抱き締めるトラリー。
自分も怖い筈だが、それでも妹の為に強く意志を持つ。
「見つけたー」
突如目の前に現れ、不敵な笑みでトラリー達の顔を除く男。
「いやあああッ!!!」
「い、妹に近寄るな!」
ムムは思わず叫び、トラリーはすぐ様剣を抜き、その男に剣先を向ける。
しかし、相も変わらず笑い続ける男。
「あれー? 歯向かうなら容赦しないよー? 生きてればいいみたいだしー、足だけ切ろうかなー」
その言葉に二人の恐怖は最高潮を達した。
それでも震える足で立ち、一歩も引かないトラリー。
その時だった!
「ぶもおおぉぉおおおッ!!!!!!」
ムムの見つめる先には、
「ミノッ!!!!!!」
ピンチに駆けつけたミノタウルス。
この窮地を脱することは出来るのか。
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