表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

128/199

人間侵攻戦

残るは人間のみ。


人間に対峙するのはシン、リリア、そしてレイラである。



やる気十分なリリアとシンに比べ、レイラは不安げな表情をしている。


それもそのハズ。

彼女は人間界ではお尋ね者なのだから。


それも教皇の横暴によって。


そんなレイラの肩に優しく手を置くリリア。



「大丈夫よレイラ。私達が付いてるわ」


そうだ。今はひとりじゃない。自分には頼もしい兄と姉が居る。

先程まで怯えていたレイラの目がしっかりと前を見据える。


「はい!!! 力はないてすが必ず皆を説得してみせます!」


力強く返事をするレイラに満足気なリリア。


今まさに、魔族と人間がぶつかり合おうとしているが、ここでは魔族と人間が手を取り合っている。


つまり、皆も出来るはず。


レイラはそう思っていた。




そして、奥の方から巨大な砂煙が舞う。

それは反対からも。


とうとう魔族と人間達が迫ってきた。


改めて気を引きしめる3人。


「俺が魔族を止める。レイラ。お前は人間を止めろ。リリアはレイラの援護をしてやれ」


シンの指示の元3人は行動に移る。




「止まってください!!!」


両手を広げ、兵士達を止めるレイラ。

いきなり現れた人間。それも女に兵士達も困惑したのか、その足を止めた。


すると奥の方から馬に乗った貴族らしきものがやってくる。


「誰だ勝手に足を止めたのは!!! 命令違反で死罪とするぞ!!!

・・・・・・んッ?! なんだ小娘!!! そこを退け!!!」




威圧的な態度でそう話す貴族。

ここでリリアはひとつの懸念が生まれる。


もしも、奴が教皇派の場合止めることは不可能だと。


教皇派でないことを祈るばかり。


「わ、私の名はレイラ! 『元』聖女レイラです!!! どうか話を聞いてください!!!」




その言葉に兵士達はザワつく。

指名手配されていた元聖女が目の前にいる。


そして、彼女には多額の懸賞金が掛けられていた。


そして、この軍の指揮官である貴族は、


「ほーう? どこかで見た顔だと思ったらお前が元聖女であり教皇より逃げた犯罪者か!!!」




リリアは舌打ちをする。やはり、奴は教皇派の一人であった。


リリアは作戦の中止をレイラに伝える。


「まずいレイラ。やっぱりアイツは教皇派よ。止めるのは無理だわ」


教皇派でなければなんとかなったが、教皇派ではどうすることも出来ない。


止められなかった場合は第二の作戦でいくようにとゼノンからも言われている。


苦渋の選択であるが仕方がない。

まずは自分達の命が優先なのだから。


しかし、レイラはその場を動かなかった。

そして、その目は貴族を見つめている。


「レイラお姉様。もう少し私に時間をください!

まだやってもいないのに引き下がる訳にはいきません!」




レイラのその強い眼差しにレイラは渋々であるが了承する。


「わかったわ。でも、限界だと思ったらイヤでも引き摺って逃げるからね」


リリアの言葉に頷くレイラ。




「あなた達は騙されているのです! 全ての元凶は教皇なのです! 今回の奴隷殺害も教皇が手を下し、魔族のせいにしているのです! 証拠は既にあります! それに教皇は自分の地位が危ぶまれると、その者をあらゆる手を使って亡き者にしようとします! 私もその一人でした。

教皇は国王にも反旗を翻そうとしており、それに加担するあなた達も反逆者となります! ですがまだ間に合います!

どうか、自分の信じる道を間違わないでください!

あなた達の目で見て耳で聞いて、主を選んでください!

あなた達の王は誰ですか? 教皇ですか? 違います!

あなた達の王は国王です!!!」




リリアの説得に皆が静まり返る。

次第にざわめき出し、隣の者と話し合う。


少なくとも、兵士達は動揺していた。

ただ一人を除いて、



「何を騙されておる!!! 教皇様は国王の弟であるぞ!!!

反逆者は奴だ! 奴の言葉に呑まれるな! いいから全軍突撃だ!!!」


剣を抜き放ち、激昂する貴族。


まずい。強引に押し切られる。

リリアもこれで無理なら諦めよう。そうレイラに伝える。


そして、現に説得は失敗に終わりそうな空気を出していた。


悔しい。レイラは自分の情けなさに腹が立っていた。


聖女と言われながらも、自分はなんて無力なんだと。

聖女でありながら戦の一つも止めることが出来ないと。


思わず涙を流していた。

そんなレイラを隣で見ていたリリアはとうとう堪忍袋の緒が切れる。




「あんた達!!! それでも男なのッ?!!! あんた達の馬鹿げた戦争を哀れんでレイラは涙を流しているのよ!!! 聖女でありながら止めることが出来ない自分に不甲斐なくて泣いているのよ!!!? いい歳してして自分で考えて行動できないとかそれでも兵士なのッ?!!!」




リリアの怒りが兵士達へと向かう。


貴族も唇を噛み締める。


「くっ・・・・・・いつまでもグダグダと!!! もういい!!! 殺してしまえ!!! 魔族の前に、まずはあの二人を殺して前哨戦としようではないか!」




しかし、兵士達は誰一人雄叫びをあげない。

それどころか、兵士の心はその貴族から離れようとしている。


「総大将!!! 私は間違っていると思います!!! この戦いになんの意味があるのでしょうか? 彼女の言葉が本当なら真の敵は教皇なのではないでしょうか?」


この軍の副将である男が貴族へと進言する。

しかし、貴族は聞く耳を持たないのか、


「黙れ黙れッ!!! お前らは私の言う事を聞いていればいいのだ!!! 教皇はこの国のトップたる御方だぞッ!!! その教皇を裏切ったらどうなるか分かっておるのか?!!! 家族諸共皆殺しにするぞ!!!」




これではどちらが敵なのかわからない。

いや、今の言葉で副将は理解した。


「なるほど。やはり聖女様が正しいようだ。

この国のトップは教皇ではない! 国王陛下こそがトップたる御方だ!!! とうとう本性を露にしたな!!! 皆の者! コヤツは最早総大将ではない! 裏切り者であり、国王の敵だ! ひっ捕らえよ!!!」




「ひぃッ!!!」



副将の言葉に血の気が引く。

この貴族も所詮は力などなく、ただのお飾りの貴族だ。


そして、ここに居る全ての兵士は副将に賛同している。

つまり、貴族の味方は誰一人いないのだ。




「よかった・・・・・・本当によかった・・・・・・」


レイラはその光景を見て、涙が溢れた。

まるで我慢していた涙が決壊したかのように溢れ出る。


そんなレイラにリリアは抱き締め頭を撫でた。


「よく頑張ったわね。偉いわレイラ。貴女は私の自慢の妹よ。『聖女』レイラ」




リリアに褒められ微笑みながらも泣き続けるレイラ。




その間もシンは武の力で魔族の侵攻をただ一人止めていた。

いや、最初の一撃で最早侵攻は止まっていた。


シンが余計に攻撃を加えていたのだ。



そして、貴族も無事捕縛され、代表として副将がレイラの前へと進みでる。


「聖女様、この度は無駄な戦を止めて頂き感謝致します!

貴女様がいなければ多くの命が失われていたでしょう。

聖女レイラに感謝します!!!」


すると後ろに控える兵士達も一斉に片膝を着く。




その光景に驚きながらも安堵する。


「良かったわねレイラ。これで、貴女もどうどうと王都を散歩出来るわね!」


「はいッ!!! またみんなで買い物が出来ます!!! それでは皆さん、最後の仕事に教皇を引きずり下ろすのを手伝っていただけますか?」


そう。これで終わりでは無い。

ゼノンには違う役目がある為、教皇を捕縛するのはレイラたちの仕事だ。


そして、シンも魔族を反転させることに成功し戻ってきた。


「はっ!!! この命は国王陛下の為に! 引いては聖女様の為に!!! 皆の者、進軍の準備だ!!!」


副将がそう叫ぶと皆がレイラの通る道を開ける。


副将に馬を渡されレイラたち3人はそれぞれ

馬にまたがる。




そうして、副将と共に先陣へ着くと右手を上げ高らかに吠える。


「全軍進軍!!!」


レイラのその光景はまるで戦場の戦乙女である。

皆の士気は高まり一気果敢にレイラの後を追う。


こうして人間達の兵士を掌握したレイラは総勢5千もの兵を率いて教皇の居る王都へと進軍するのであった。




全ての侵攻を阻止したオルレア一家。

残るは教皇と本当の黒幕のみとなったのだ。

「面白いな、続きが読みたいなと思ったらブックマーク、高評価をお願いします。そして誤字脱字や意見などあったら是非コメントしてください。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ