ドワーフ侵攻戦
山道より魔界へと侵攻するのはドワーフ族。
総兵力5千もの屈強なドワーフ達は、意気揚々と山道を進んでいく。
足腰の強いドワーフからしてみれば、山道なんてそこらの道の何ら変わりない。
先頭を歩くのはドワーフの王。
フィルルと同じくエルダードワーフであり、フィルルの父親の親友でもあった。
「魔族め、我が同胞を殺した罪、重いぞ!!! 全軍、奴らは近い!!! 戦闘態勢を整えよ!!!」
この山を越えれば魔界へと入る。
戦いは近い。
王である、ソディックは士気を高め進軍する。
進軍していたのだが、急に立ち止まるソディック。
ソディックの顔は驚愕に歪められている。
なぜなら目の前にエルダードワーフが現れたからだ。
それも親友の娘であり、村を追い出されたフィルルが。
フィルルが追い出された時、ソディックは急いで村へと駆け付けたが間に合わなかった。
もちろん止める為にだ。
その後も必死に動向を探らせていたが、足取りは掴めずに
死んだものと思っていた。
だが、生きていた。
目の前にフィルルが立っている。
「フィ、フィルル・・・・・・お前なのか?」
分かってはいても自然と口にしてしまった。
「ソディック王! お久しぶりだよ。 ソディックおじさんに会いたかっただよ、、、フィル、ずっと、、、ずっと一人で頑張ってただよ」
フィルルが泣きながらにそう話す。
そして、つられてかソディックの瞳からも涙が流れる。
親友の大切な愛娘。
死ぬ間際に託された、自分の娘のような存在。
追い出した者たちを皆殺しにしてやろうかと思った。
それほどに、フィルルへの暴挙を止められなかった自分を悔いていた。
思わず抱きしめるソディック。
「よかった・・・・・・本当によかった!!! お前の父に顔を合わせる事ができないところであった。よくぞ無事でいた!」
涙が溢れ、顔をぐしゃぐしゃに歪めるソディック。
大人泣きである。
もちろんフィルルも。
互いに泣き合い落ち着いたところで、ソディックはフィルルに事の経緯を一から聞いていた。
もちろんドワーフ族は皆進軍を止め休憩させている。
そして、バリアンもフィルルの後ろで周囲を警戒しつつ休んでいた。
「なるほどのう、、、魔王ゼノンの元でのう---となると後ろに控えるバリアンとはあの、『豪鬼バリアン』で間違いないかのう」
四魔将の名は全世界に轟く程であり、上位の役職の者なら大抵の者は知っている。
「ガッハッハッ!!! ドワーフの王に知ってもらえておるとは光栄じゃのう。 フィルルももちろん、皆で娘のようにせっしてきておったぞ。我が主、ゼノンには感謝されよ」
バリアンの言葉にソディックは頷く。
その後もファルルの事やドワーフ達のことを互いに話し合い、最早戦争を継続する意思は無しと思われる。
その時だった。
突如、ドワーフ族達に魔法が降り注ぐ。
急な襲撃というのもあり少なくない被害を出していた。
そして、打ってきた先に居るのはなんと、魔族達である。
「おのれッ!!! バリアン! フィルル! これが貴様らの狙いかッ?!!! 我等を油断させ一網打尽にする気だな!!! 許さん!!! かかれ皆の衆!!!」
先程まで和気あいあいと話していたソディックの顔は般若の如く
強面へと変わり、開戦の声を上げる。
「ち、違うだよ!!! あれはフィルル達の知らない魔族だよ!!!」
「ダメじゃフィルル。最早耳に入るまい。 誰じゃあの魔族共をけしかけた奴は、、、」
時すでに遅し。
激昂したドワーフ達は最早止まらない。
武器を取り魔族へと次々に突撃するドワーフ達。
そして、バリアンは思考した。
一体誰の指示なのだろうか。
しかし、今はとにかくこの無駄な争いを止めなければならない。
「ドワーフに魔族・・・・・・二種族を相手にするのはちと骨が折れるが仕方あるまい---フィルル、下がっておれ」
フィルルは息を飲む。
いつものバリアンではない。
忘れていた。
バリアンも魔族であり四魔将の一人であり豪鬼バリアンなのだ。
凶悪な顔面へと変わり、筋肉が膨張している。
「身体強化魔法、剛力!!!」
バリアンの得意とする身体強化魔法。
ただでさえ剛腕であり、筋肉隆々の身体をしているのに更に強化すればそれは最早、武の象徴である。
バリアンは魔族とドワーフ族のちょうど真ん中に巨大な拳を突き刺す。
「武神の怒り!!!」
地割れが起き、全員がまともに立つことも出来ず、思わず這い蹲る。
いや、ここだけじゃない。
今の一撃は恐らく全世界へと振動は伝わっただろう。
つまり、地震が起きたのだ。
皆が驚き静まり返った頃を見計らい、バリアンは大声で叫ぶ。
「両者聞けッ!!! これは人間界が仕組んだこと!!! お前達は無意味な戦を初め無意味な死者を出そうとしている!!! 全軍直ちに下がれッ!!! もし、まだ戦い足りないのならワシが相手致す!!! 答えよッ!!!」
魔族達は相手がバリアンと分かるとすぐ様後退する。
魔族ならバリアンの力は痛い程知っている。
中にはバリアンに鬼の特訓を実行された者もいるのだから。
そんな中、ソディックも落ち着いたのか冷静になる。
「お主みたいな化け物を相手にしたんじゃ、命が幾つあっても足りぬわ。 一度は信じた身。 もう一度お主達の言葉を信じよう。
しかし、人間への復讐はどうすればいい? やり返さねば気がすまぬ!!!」
確かにそうだ。
相手がわかったなら次なる目標は人間達だ。
だが、それもバリアンは制止する。
「その件については既に我が大将が動いておる。お主達は国に戻り吉報を待っててくれ」
バリアンの大将。つまり、、、
「ゼノン殿か・・・・・・よかろう。彼が行ったのなら間違いあるまい。フィルル! お主はどうする?」
ソディックはゼノンの名を聞き素直に下がる事を決意する。
そして、フィルルに今後の方針を訊ねる。
つまり、いつでも帰ってきていいということだ。
しかし、フィルルは即答する。
「ごめんだよソディックおじさん。フィルルはゼノン様の元に居るのが幸せなんだよ。自分の好きなことが出来て友達も居るだよ。
フィルルの居場所はもうあるんだよ。だから行かないだよ・・・・・・ごめんだよ」
ソディックはフィルルの言葉に少し悲しくなる。
悲しくはあるが、それ以上に嬉しかった。
幸せそうなフィルルを見てソディックは嬉しかったのだ。
「よかろう。バリアン殿! 我が娘を頼み申した」
フィルルを娘といい頭を下げるソディック。
「任せろ! 命に変えても守ると誓おう」
そんな二人の会話が嬉しくフィルルは思わず嬉し涙を流した。
こうして、一時はどうなるかと思ったが、事なきを得るのであった。
残りは、エルフ族と人間のみである。
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