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頼れる家族

「ゼノン様・・・・・・勇者レインが殺されました・・・・・・」





その凶報は、ゼノンの影の配下であるガルムの口から言い渡された。


それにはゼノンも驚愕せざるを得ない。


つい先日会話をしたばかり。

人間界と魔界の平和への第一歩ともなるべき二人の存在。

勇者と魔王。


その勇者が殺された。


ゼノンは初めて後悔する。

何故、こうなる事を予測できなかったのか。


ガルムに勇者レインの警護を任せるべきだった。


いや、勇者の力を目の当たりにしてその必要性を感じなかったのだ。


勇者レインを倒せる者など人間界には存在しないとゼノンも読んでいたからだ。


そう。人間界には。

となると、やはり『奴』が濃厚なのか。


信じたくは無いがそれ以外にゼノンは考えられなかった。


ガルムもレインの死ぬ現場を見た訳ではなく、終わった後を見たようで誰が殺ったのかはわからないようだ。



「すぐに発つ。教皇を殺し、レインを甦らせる。ガルムは引き続き教皇を探ってくれ。ハドソン、皆に伝えておいてくれ」


「「はっ!!!」」




それぞれに指示を出しゼノンは急ぎレインの亡骸の元へと発つ。

そう思った瞬間、ガルムの配下三人が血相を変えて現れた。




「急を要する内容の為、無礼をお許しください!

人間界、エルフ界、ドワーフ界、獣人界が魔界への宣戦を布告しました! 魔界近辺では相次いで魔族掃討戦が始まっている模様!」




その言葉には流石のゼノンも開いた口が塞がらない。


何故、魔界に。

いや、冷静に考えればわかる事だ。


レインを殺したのは恐らく教皇の策。敷いては、裏に控える『奴』の策。


だが、エルフ達が攻めるのはおかしい。

むしろ、魔界よりも人間界と仲が悪いのだから。


答えは簡単だった。


ガルム配下の者に聞けば、教皇は奴隷である、人間以外の種族達を全て殺して魔界との境界に置いたのだそうだ。


その件を全て魔界に住む魔族の所為にして。




ゼノンはまたしても後悔する事になる。

こんな事なら最初から殺しておけばよかったと。

そして、奴に直接真相を聞けば良かったと。


いや、以前のゼノンならそうしていたかもしれない。

ムム達と出会い、人間に染まり、ゼノンが変わってしまったのだ。


争いには極力身を投じたくない。


だが、結局はこの有様だった。




「やはり、私は争いの渦中にいるべき存在なのか。

私に平和な暮らしは存在しないのか・・・・・・」


珍しくゼノンが落ち込んでいる。


そんな時、一人の女性が入ってくる。


ゼノンを一番に支える存在。

妻であり最愛のメフィだ。


「ゼノン、貴方の所為ではないわ。貴方がいるからムム達は救われた。私も救われた。セレス達も救われた。

そして、これからもそう。貴方が皆を救ってくれる。

皆を救えばいいのよ! 私達ももちろん手伝うわ!

皆を平和にすれば私達も平和に暮らせる。そうでしょ?」




ゼノンは沈黙した後、ゆっくりと頷く。


「あぁ。そうだな。どうやら、私は心まで人間の様に弱くなっていたのかもしれない。しばし、昔の私を思い出そう。

そして、全員を救ってやろう。全員を平和にする為、邪魔な者は殺す」


いつもの面持ちに戻るゼノン。


しばし、人間と接する事が多すぎたゼノン。

彼も人間よりの思考に変わっていたが、今一度戻ろう。


かつて世界最強の『魔王』と呼ばれていたあの頃に。




ゼノンは全員を集める。

昔の家に居るフィルルやエリシア、不死の王も含め全員だ。





そうそうたる面々が集合する。




「皆に大事な話がある---今まさに、全世界で戦争が起ころうとしている。 魔界以外の全ての国が一斉に魔界へと攻め入っているのだ。これより、我等は世界を守る為、引いては家族の平穏を守る為に戦う。皆の力を貸してくれ」




流石に4つの進路より進行する人間、ドワーフ、エルフ、獣人族を止めるのはゼノンでも不可能だ。


いつもは一人でなんでも解決する為、力を貸してくれという言葉に皆が驚き、そして喜ぶ。


戦争が起こっている中、喜ぶなんて不謹慎ではあるがそれ程ゼノンに頼られる事が嬉しかったのだ。




「私達は家族よ。家族は力を合わせるもの。皆、いいわね!」


メフィが代表してそう話すと、他のみんなも頷く。

皆がやる気に満ち溢れている。


その様子にゼノンも安堵した。

初めて自分以外に頼ることをしたのだ。


ゼノンはそのまま、皆に作戦を伝える。


魔界へ攻め入るのは先も言ったように4種族。


つまり、4つの進路で守らなければならない。



「まず、獣人だがシリュウ、不死の王、レビル。お前達三人に頼む。獣人族は特に三大恐慌を崇拝している。その内の二体が出向けば自ずと下がってくれるだろう。

次にドワーフだが、フィルル---お前に頼む。護衛としてバリアンを付ける良いか?」




これはフィルルにとって少し酷である。

何せ、自分を追い出した相手を説得するのだから。


フィルルは少し沈黙する。

目を閉じ考える。




「わかっただよ! ドワーフはフィルルが止めるだよ!」


目を見開き、決意の眼差しでそう答える。


フィルルは魔剣はもちろん、聖剣も創ることに成功していた。

その成功から来る自信もあるのだろう。



フィルルの様子を見てどうすか考えようと思ったが、これなら大丈夫そうだ。

いや、むしろフィルルでなくてはなり得ないだろう。




「そして次にエルフだが、もちろんエリシアとエオメル、そして護衛にフレイ、頼む」


ダークハイエルフであるエリシアとハイエルフであるエオメル。


この二人ならきっとやり遂げてくれる。

ゼノンはそう思っていた。


そして、機転の利くフレイを添えて。




「お任せ下さい。私はゼノン様に助けて頂いてからゼノン様へ少しでも恩が返せる日を心待ちにしておりました」


そうエオメルが答える。


「エリシア殿と共に私はあります。お供しますよエリシア殿」


いつもの巫山戯た感じはなく、いつになく真面目なエオメル。


「コチラは私に任せてくたさい」


フレイの言葉に頷くゼウス。




「そして最後だが、人間へはレイラ、リリア、シン。頼めるか?」


レイラもはもちろん変装して出向く。

いや、時と場合によっては変身を解いていいと伝えた。


聖女でしかなし得ないこともあるだろうから。


「ハドソンや、ザックス、他のもの達はこのままこの屋敷を守ってくれ。私達の大切な帰るべき場所だ。頼んだぞ」




こうして一通りの人員配置は終わり、来る大きな戦に備えるのであった。

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