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子供の気持ち

盗賊達と対峙するゼノンとメフィ。


「メフィ」


「ええ」


その一言で通じる夫婦。


メフィは自身の背後に土の巨大な壁を設置した。

自分達の能力を見せたくないのもあるが、子供達にこれから起こる惨劇を見せないためだ。


更にメフィは水と火の魔法を放つと、それらは動物へと姿を変えて子供達の周りを走り回る。


大道芸の様なその光景に子供達はもちろん大人達も魅了されていた。


水の鳥や火の狐など、様々な動物が現れ先程の恐怖は一瞬で消え子供達の歓声が沸き起こる。




ゼノンの方が威力は断然高いが、メフィの様にここまで繊細に扱う事はできないだろう。


これで後ろの憂いは絶たれた。

後は目の前にいる邪魔者を排除するのみ。


心臓は我が手中にシィージングトゥーハート


ゼノンの両手に突如現れる心臓。

抜き取られた2人は猛烈な寒気に襲われていた。

胸の中にポッカリと穴が空いたかのような感覚。

そんな感覚に襲われていた。


まぁ、実際に穴が空いたのだが。


「や、やめてくれ! 返してくれッ!!!」


盗賊達の悲痛な叫びが鳴り響く。


しかし、ゼノンの心には響かなかった。


「悪いが無理だな」


「ブシュッ!!!」


そのままゼノンが心臓を握りつぶすと2人の盗賊は糸が切れた人形の様にその場に崩れ落ちた。




周りの盗賊達もその光景に恐怖を覚えた。

防ぎようの無いチートな魔法。


こうなったら数で押すしかない。

掴むにも2つが限界ならその前に殺す。


残る盗賊達が一斉に飛び掛る。




メフィの放った魔法に向かって。


既にメフィも魔法を放っていた。

火の鳥 水の龍 風の馬 土のゴーレム 雷の虎。


それぞれがゼノンの背後より突如現れ、自らメフィの魔法へと突っ込んでしまう。


いや、焦って既に走っていた為、突っ込まざるをえないのだ。




一人は燃やされ、一人は窒息し、一人は切り刻まれ、一人は潰され、一人は心肺停止する。


まさに地獄絵図だ。


そうして、残ったのは一人の盗賊。

最早戦闘不能となっており、失禁さえしてしまっている。




そんな最後の一人にゼノンは近付き問い掛ける。


「貴様は誰に命令された? 恐らくお前達が自分で掴んだ情報ではあるまい。誰かに依頼されたな?」


ゼノンの言葉に口が籠もる盗賊。

これだけで、裏に誰かがいると言っているようなものだ。


黙っている盗賊に追い打ちをかけるメフィ。


「黙っているのもいいけれど、その分死が近くなるわよ? 燃えたい?窒息したい?潰れたい? どれがいいかしら?」




「ッ!!!? ・・・・・・バタン」





とうとう失神してしまった。

メフィのあまりの恐怖に耐えきれなかったのだ。


「・・・・・・メフィ」


なんてことをしたんだと言わんばかりの声でメフィの名を呼ぶ。


そして、メフィもやっちゃったと言わんばかりに焦っていた。


メフィ「だ、だって、ムムを悲しませるから!!! あのくらいで気絶するなら最初からやるんじゃないわよ全く!!!」


盗賊に怒りをぶちまけるメフィ。

メフィに少し呆れ気味になりながらもゼノンは小さく呟く。




「仕方がない。ガルム」


名を呼ぶと突如影より現れるガルム。

メフィは初めてのご対面で驚いていた。


「はっ!」


万が一の為に、今日はゼノンの近くに控えてて貰ったのだ。

結果的に功を奏した。


「この者を地下牢へと繋いでくれ。起きたら尋問する」


「はっ!」


そう一言話すとすぐ様気絶した盗賊を担いで再び影へと潜る。





「・・・・・・カッコイイ!!! あんな魔法もあるのね!

影に入れるとか最強じゃない! あの人もゼノンの仲間なの?」


酷く興奮するメフィ。

実はメフィは魔法が好きであり、珍しい魔法には目がないのだ。


「うむ。私の目となり耳となって働いてくれている」


「ゼノンの知らないことがまだまだあるようね!

帰ったら色々聞かせてもらうから!」


そう話すとメフィは指を鳴らして一気に土の壁が崩れ落ちる。


その奥では子供達はもちろん、大人達もメフィの作った魔法の動物で戯れていた。




そこへルーガスとブレンタールがやってくる。

心配していたのだろうか、緊迫した顔で詰め寄ってきた。



「ムムさんのお父さん、お母さん! 怪我はありませんか?!」


「お力になれず申し訳ないです。ロベルト局長から

ゼノン様の力はある程度聞いておりましたが奥方様まであの様な

強大な魔法を使われるとは。本当にありがとうございました」




盗賊如き、ゼノンとメフィからすれば大したことは無い。

そこらに居る虫を払うようなものだ。


しかし、感謝される事に悪い気はしない。


何より、人間との絡みは色々と学ぶことも多いし好奇心をくすぶられる。


ひとまず、アクシデントはあったもののこれでようやく帰路につける。


ゼノンとメフィはムムの元へと戻ると、ムムは笑顔で飛びついてきた。


「ムムのお父さんとお母さんは凄く強いね! 悪い人達を追い払ったんでしょ? ムムもお父さん達みたいに強くなりたいな!」


このムムの笑顔だけで全てが報われる。

金も名誉も何もいらない。


子供の笑顔が親にとっては1番の報酬なのだ。


ゼノンは、そんな事を思っていると日々変わっていく自分に思わず笑ってしまった。


気付けば自分の見た目も中身もどんどん人間へと変貌していってるなと。




最終ポイントへと着くと、最後にルーガスから簡単に本日の振り返りの話しがありそのまま子供を連れて帰ることになった。


少し早上がりという事もあって、ゼノン達3人はムムの要望で

王都の街を散策して帰ることとなる。




ムムに連れられ色々な店を見て回る。

アクセサリーや服、おもちゃなど目に付く店は何でも見に行くのだ。

好奇心旺盛であり、活発なムムを見守るのはとても大変である。




しかし、ムムはいつも見るだけで欲しいとは言わない。

目を輝かせながら商品を見るがそれだけなのだ。

恐らく遠慮しているのだろう。




その度にメフィは遠慮しないでと言うが毎度断るムム。

そして、今回もそうだ。

メフィがムムに遠慮しないでと言っても、首を横に振るだけ。


そんなムムにとうとうゼノンが話し掛ける。


「ムム、何故遠慮するのだ? 欲しい物があるなら強請ればよかろう。金とは使わなければなんの価値もないのだ」




ムムは黙ったままだ。

何を考えているのか分からないがずっとモジモジしながら黙っている。


そんなムムを2人は心配そうに見つめていた。

そして、ゆっくり口を開くムム。



「だってね、誕生日でもなんでもないよ? なんでもないのに貰うのはいけないことなんだよ。そしたら、ムムは毎日買って欲しくなるもん。買ってもらうのは特別な日だけなの」




ムムの言葉に納得するメフィと不思議そうに首を傾げるゼノン。


「ムムはまだ1年生なのにしっかりしてるわね。それなら

今日はムムが1人で最後まで頑張ったご褒美に何かプレゼントしたいんだけどどうかな?」


そう話すメフィにムムは目を輝かせた。


「本当に?! ありがとうお母さん!!! ムム凄い悩んじゃう!」


そう言って先程までとはうってかわり、はしゃぐムム。

そんな様子を見ていたゼノンはさらに頭を悩ませていた。


そして、そんなゼノンを見てメフィは思わず微笑んだ。


「あのね、ムムは対等な報酬で貰いたいのよ。自分が何か

頑張ったらご褒美を買って欲しいのよ。 つまり、何もしていないし何も頑張ってない自分が貰うのは気が引けたんでしょうね。

本当に1年生なのにしっかりしてるわねムムは」


メフィの言葉でようやく納得するゼノン。


人間の子供のことはだいぶ分かってきたと思っていたが、メフィとのやり取りを見て聞いて、自分はまだまだなんだと痛感するのであった。

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