表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

119/199

親の怒り

たくさんあった弁当もあっという間に無くなった。

見た目もそうだが味も確かに美味かったのだ。


何よりムムは嬉しかった。

お母さんからの手作り弁当。

その言葉の響きだけでも笑顔になれる。


最後には3人でご馳走様をして再び山を下る。


帰りもブレンタール家と共に歩いていると、色々な貴族達が

ゼノンの元へ媚びへつらって来た。


公爵に近付けるのだから当然と言えば当然だ。

中には、ムムへの婿にと言ってくるものも居たが流石に

ゼノンが断った。


何せまだ1年生だ。

早すぎる。


いや、ゼノンは思った。

果たしてムムを知らない異性に嫁がせる事が出来るのか。


そう考えると生まれて初めて持つ感情。『不安』の文字が頭を過ぎった。


どんなに過酷な状況だろうと不安など一切感じた事がない。

例え命懸けの戦いであってもだ。


それなのに、ムムの事を考えると不安の文字が出てきたのだ。


子育てとは恐ろしい。

ゼノンは一人心の中で葛藤するのであった。




そんなこんなで山を降る。

魔物は出なく実に平和な一日だ。

そう。魔物は出ない。




目の前には盗賊の姿が。数は20人ほど。

ここには貴族や金持ちの親が多数居る。

そして、遠足の為兵士や冒険者もいるわけが無い。


盗賊からすれば最高の的であろう。

ゼノンが居なければだが。


恐ろしい風貌をした盗賊の出現に叫ぶ奥方達と子供。

普通に生活していれば出会うことはそうそう無いのだから。




「金目の物は全て置いていけ!!! そうすればテメェらの命だけは助けてやる!」


リーダー格の男がそう話すと弱腰の大人達は次々に自分の装飾品を剥がしていく。




しかし、戦闘へと走る者達の姿もあった。

ルーガス先生とブレンタール伯爵。そして数人の男達だ。




「お父さん方、申し訳ないのですが手をお借りしてもいいですか?」


ルーガスが戦える親達を集う。


「もちろんです。娘との楽しい時間を邪魔されたのです。許しません」


ブレンタールは魔法局に務めている。

そして、魔法局は優秀出なくては入ることすら出来ない。


つまり、ブレンタールの実力は


雷の槍(サンダーランス)!」




光の如く速さで一人の盗賊を燃やすブレンタールの雷。


それを見てゼノンは感心する。


「ほう。雷の使い手とは珍しいな」


火、水、土、風の四元魔法を習得するのが一般的であり、それ以外の魔法を覚えるのはレアなのだ。


ちなみに、シンの光、ガルムの影も同じくレアの部類に入る。


ルーガスは水を得意とするようで、水魔法を使いながらも盗賊を押している。


観察するに、この中ではやはりブレンタールが一つ二つ頭が抜けていた。




その時だった。

流れ弾がムムのもと目掛けて飛んできたのだ。


「危ないムムちゃん!!!」


ミレディが叫ぶも、火の弾はムムの目前まで迫っていた。

周りの大人達も皆が思った。




いや、そんな事態に陥るわけが無い。

何せ、ムムの目の前にはゼノンが居るのだから。


ゼノンは右手を突き出し火の弾を握り締めて消し去る。


周りの大人達は唖然としている。

それはそうだ。

高熱を帯びた火の弾を素手で処理したのだから。




しかし、ムムは相も変わらず呑気でありゼノンに笑顔で


「ありがとうお父さん! でも、せっかくのお父さんとお母さんとの楽しい遠足なのにどうしてこんな事ばかり起きるんだろう・・・・・・ムムは良い子にしてるよ。これじゃあ、足りないのかなお母さん」




ムムは酷く落ち込んでいた。

親子遠足を誰よりも楽しみにしていたのだから。


最初こそアクシデントはあったが、山で食べたお母さんの手作り弁当で元気を取り戻していた。


むしろ最高潮だった。


そして、帰路に至っても仲良く楽しく帰っていたのだ。


それなのに、最後の最後で現れる盗賊。


ムムだけでは無い。

他の子供達も落ち込んでいるし怖がっている。


ムムに至っては目に涙を浮かべていたのだ。

そんなムムを見てゼノンもメフィも不憫に思う。


「そんな事は無いぞムム。お前ほど優しく良い子な子供は見た事がない」


「そうよムム。悪いのはアイツらなんだから!

子供贔屓とかじゃなくてムムは本当に自慢の娘よ」


そう言ってメフィはムムを抱きしめ、ゼノンはムムの頭を優しく撫でる。


その間も先生やブレンタール達は盗賊と戦いを繰り広げていた。




ゼノンは静かに殺気を放つ。


「メフィ。すまないがムムを見ていてくれるか?」


「あら奇遇ねゼノン。私も頼もうと思っていたのよ。

ならブレンタール夫人にムムは見て貰いましょうか。

彼女なら信頼できるわ。それに、私も自分の手で殺らないと

この怒りを鎮めることができないわ」




そう話すとメフィはムムをブレンタール夫人に預けた。


前線へと向かうゼノンとメフィ。


「ブレンタール。悪いがみんなと下がっていてくれ。

後は私に殺らせてもらおう」


「ごめんなさいね。ムムが被弾しかけたし、ムムを泣かした罪・・・・・・許さない!」


ゼノンとメフィの威圧にブレンタール達は圧倒され、心配しつつも後ろへと下がった。


その様子を見た盗賊はヘラヘラと笑っている。




「ギャッハッハッ!!! 俺らの強さに押されて仲間さんは後ろに下がったようだな! 安心しろよ! 刃向かった罪で皆仲良くあの世行きだぜ!!!」


盗賊達は一気にゼノンとメフィの元へ駆ける。




相手が世界最強の魔王と2番目に強い精霊王とも知らずに・・・・・・。

「面白いな、続きが読みたいなと思ったらブックマーク、高評価をお願いします。そして誤字脱字や意見などあったら是非コメントしてください。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ