母の責務
初っ端から一悶着はあったものの、なんとか親子遠足は再開され皆で目的地へと向かう。
ここら一帯には魔物が出ない為、皆で気兼ねなく歩くことが出来るのだ。
皆で列となり、それぞれの歩調で会話を楽しみながら歩く。
ゼノン達は、ブレンタール家、つまりミレディの家族と共に会話を楽しみながら歩くことになった。
メフィとブレンタール夫人は、女性同士で話すことが沢山あるようだ。
恐らくメフィが子育てについて色々と助言を貰っているのだろう。
ゼノンはブレンタール伯爵と会話をしながら歩いて行く。
「オルレア公爵、実は一つ貴方に直接謝りたい事があったのです。後から娘に聞いたのですが、私達の娘がオルレア公爵のお嬢さんに水を浴びせたり罵声を浴びせたと聞いたのです。私の娘は少し鼻につくところがありまして、、、どこで育て方を間違えてしまったのか。本当に申し訳ありませんでした。お嬢さんを傷付けてしまったのですから、謝って済む話では無いのですが、どうして直接謝罪がしたくて。誠に申し訳ございませんでした」
ブレンタールは歩を止めてゼノンに謝る。
するとゼノンはブレンタールの肩に手を置く。
「もう良いでは無いか。今はあんなにも仲がいいのだ。それにだ、ブレンタール伯爵の育て方が間違っているとは思えない。入学したばかりでお前の娘も不安であったのだろう。そして、自分の働いた悪事をしっかり親に報告するなど簡単に出来ることでは無い。お前の娘の本質は素直で優しい子だと私は思うぞ。娘を卑下するな。親なら娘を誇りにもて。良いな?」
ゼノンの言葉に涙を浮かべるブレンタール。
そして、如何に自分達が小さな存在なのだと思い知った。
いやゼノン達の懐が広すぎるのだ。
気付けばブレンタールは、心の底からゼノンを尊敬する事となった。
これがゼノンの持つカリスマ性なのかもしれない。
「はい、ありがとうございます。オルレア公爵はその身分に驕ることなく、とても心の広い御方ですね。
どうか、今後ともよしなにお願い致します」
「うむ。こちらこそ、子供共々よろしく頼む。
ブレンタールは休みの日とかは子供達と何をしているのだ?」
ゼノンも他愛ない会話を広げていく。
ブレンタール家の皆には好感が持てるし、ゼノン自身、ブレンタール伯爵を大層気に入っていた。
親子遠足では親子だけではなく、横の繋がりも持てる。
ゼノンは改めて参加して良かったかもなとおもうのであった。
会話が弾んだおかげであっという間に目的地へと着く。
小山の頂上。
そこまで高くはないが十分見晴らしは良かった。
自然に囲まれた小山。
鳥のさえずりがいいアクセントを出している。
昼は家族でそれぞれ別れて食べることとなった。
大自然の中、家族で食べるお弁当。
子供たちにはそれだけでテンションが上がるのだ。
「お弁当楽しみ! お母さん早く食べよう!」
たくさん歩いてお腹がすいたのかムムはメフィに催促をする。
「えぇ、でもまずは手を拭いてね! 今日のお弁当は
特製弁当よ♪」
メフィが取り出したのは重箱である。
三段に重ねられた弁当は一段目に主食であるおにぎりが入っており、二段目にはおかずが沢山入っている。
そして、最後の段には様々なフルーツが盛り付けられていた。
なんと言っても見栄えも良かった。
俗に言うキャラ弁のようなものだ。
それにはムムも堪らず歓喜していた。
「凄い可愛い!!! 食べるのがもったいないくらいだね!
シリュウさんってこういう弁当も作れるんだね!」
あまりにも可愛いお弁当の為、シリュウの技術に驚くムム。
するとメフィが、
「違うわよムム。今日のお弁当はお母さんが作ってみたの! ムムの為にお母さん頑張ったんだ♪」
驚くムム。
メフィは普段も軽くは料理をしているが、基本はシリュウである。
そのお母さんがここまで作れるとは思ってもいなかった為度肝を抜かれた。
「お母さんが作ったの?! 凄いッ!!! お母さん凄い上手だね! 早く食べたい!!!」
一気にテンションが上がるムム。
お母さんの手作り弁当。
基本は給仕の者が作るのだが、メフィがどうしても自分で作りたいと言ったのだ。
そして、その事はゼノンも知っている。
何故ならば、
「メフィは朝日が昇る前から準備していたんだぞ。
メフィに感謝して頂くとしよう」
そう。メフィは今日の為にまだ朝日が昇らない暗い時間から
弁当作りに励んでいたのだ。
そして、ゼノンも気付いていた。
娘との大切な行事。
これだけでメフィがムムを如何に愛しているかがわかるだろう。
少しでもメフィを喜ばせたい。
そう思って、シリュウから助言は頂いたものの一人で完成させたのだ。
「うん! お母さんありがとう! いただきます!!!」
溢れんばかりの笑顔でご飯を食べるムム。
「召し上がれ♪ 慌てず食べるのよ」
メフィもそんなムムを見ただけで、早朝の苦労も苦にならず
やって良かったと思うのであった。
「ありがとうメフィ。やはり私の妻はお前以外考えられぬな。私も頂こう」
ゼノンはメフィに素直にお礼を言うと手作り弁当を食べ始めた。
「2人が喜んでくれてよかった。次回も機会があれば私が作るからね!」
こえして、ムム達は楽しい楽しいお弁当タイムを満喫するのであった。
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