教皇の権力
暗殺者襲撃から数日経った日。
ゼノンはガルムと新しく仲間となった暗殺者3人を伴い、国王へ謁見する事となった。
ロベルトに中継をしてもらい難なく可能となったのだが、本来はこんな易々と会えるような人ではないとの事。
だが、事情が事情故に巻いてくれたのだ。
当然国王の弟であろうと教皇を注視はしているようだった。
ロベルトに案内されて入った部屋には既に国王が待っている。
他には誰も居ないところを見ると、まだ秘密裏にしておきたいのだろうとゼノンは予測した。
国王を守る衛兵ですら居ないのだから。
ゼノン「忙しいところ申し訳ない」
ゼノンはいちを礼儀として国王に謝罪の言葉を述べる。
国王「いやいや。ロベルトから聞いた話では急を要するとの事。ささっ。掛けてくだされ」
国王は笑顔でそう話す。
国王の言葉でゼノンやガルム達は椅子に腰をかけると早速
ゼノンが事の顛末を語り出した。
ゼノン「先日教皇の放った暗殺部隊が我が家を攻めてきた
そして、ここに証人もいる。やつを裁くことは可能か?」
国王はゼノンの話をしっかりと聞き、ゼノンの後ろに立つ男達を眺める。
そして、暫くすると目を閉じ何かを考えていた。
国王「恐らく厳しいであろう。ゼノン殿もご存知の通り、あやつは余と同じく国のトップに立つ者。そして、やつの周りにも有権者が多数存在する。仮に余がゼノン殿に協力したとて、余がゼノン様と組んでいるからと贔屓していると言われるやもしれん。
つまり、法で裁くことはできまい」
ゼノンは国王の言葉に眉をあげる。
ゼノン「法で裁く事は出来ない。つまり、、、」
国王は頷く。
国王「あぁ、直接手を降す他あるまい。余も弟とは互いに暗殺者を昔から送りあっているが一向にケリがつくことはない」
その言葉に驚くゼノン。
てっきり国王はなんだかんだ言っても血の繋がった弟を殺せるはずがないと思っていた。
聞けば教皇は昔から影で悪行を働いていたと聞く。
だが、国王は見て見ぬふりをして罰することは無かった。
そう噂で聞いたのだ。
だが、実際は全然違った。
互いに暗殺者を送り、あわよくば寝首を搔こうとしていたのだ。
しかし、国王と教皇は国のツートップであるが故に同じ地位に立つ者同士裁くことは難しいとの事。
ゼノン「なら国王が平気なら私が直接手を下そう。よいか?」
ゼノンの言葉に重く頷く国王。
国王「うむ。しかし、もう少し待ってはくれないだろうか?
奴は曲がりにも最高権力者であり、一部の民からも信頼は厚い。
今殺しては、この国は大混乱に陥るやもしれぬ。着実に奴の悪事の証拠を集めてから殺るのが得策だと思うのだ」
正直、ゼノンからすれば知ったこっちゃない話である。
人間界が混乱しようがゼノンにとっては何も痛くない。
自分を狙う者が居るなら早々に終わらせたい。
以前ならそう思っていたかもしれない。
今は自分だけでは無い。
人間の子供である、トラリーにムム。レイラ達もいる。
癪ではあるが、今一時教皇を生かしておく必要があると判断した。
ゼノン「良いだろう。しかし、次にまた手を出したその時は容赦なく殺す。コチラも家族の命が懸かっているからな」
国王はゼノンの言葉を重く受け止めた。
しかし、ゼノンの話を聞く限り暫くは大丈夫だと予測できる。
国王「60名者暗殺者達を一気にうしなったのならしばらくは大丈夫だと思われる。奴の人材も金も有限では無い。その間に私も
特務部隊を使って調べる。ゼノン殿も何か情報を得たなら共有してくれまいか?勿論こちらも知らせよう」
ゼノン「うむ。良いだろう」
こうして一先ずは教皇を互いに探り合い、手だし無用との事で結論づく。
ゼノン達が部屋を出る間際、弟が迷惑を掛けたことを国王が代わって謝罪もした。
ガルムと元暗殺者3人には引き続き、教皇の偵察を頼んで解散とした。
ガルムがいる為、余程の強者が現れない限りはやられることはないとみる。
そして、ゼノンは家へと戻るとメフィに呼ばれ部屋へと入る。
メフィ「ゼノン、10日後に一年生の親子遠足があるんだって!
両親共に出席出来るみたいなんだけど、もちろんゼノンも一緒に
行くわよね?」
ゼノン「親子遠足? よく分からないがムムの行事なら私も行くとしよう」
親子遠足という聞いた事のない言葉であったが、ムムの為なら聞くまでもない。
ゼノンは即答した。
メフィ「ゼノンならそう言うと思っていたわ♪ 親子遠足って私も
調べてみたんだけど、お弁当を持って親子で山登ったり川辺を歩いたり皆で散歩するみたいよ! 親の顔合わせも込めているのかしらね?」
メフィは内容は知っていたかその目的までは知らないようだった。
だが、散歩程度ならゼノン達も良くしている為普段と何ら変わらないことである。
ゼノン「では10日後は予定を空けておくとしよう。
子供の行事は何よりも大事だと聞いたからな。
ムムを悲しませるわけにはいくまい」
ゼノンのその言葉にメフィは思わず微笑んだ。
前までは冷たい印象を持っていたが、人間と暮らしてからのゼノンは暖かさを持っていた。
魔族であるにもかかわらず人間味が出ているのだ。
メフィは思わずゼノンへと飛びつく。
ゼノンも驚きこそすれ、優しくメフィを支える。
そしてメフィは秘密裏にとある事を企むのであった。
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