シリュウの秘伝
皆で綺麗な海を満喫していると、突如ゼノンが転移してきた。
メフィ「おかえりゼノン! 早かったわね」
ゼノン「うむ。せっかくの家族の時間だからな」
そして、ゼノンは子供達、そしてフレイ達を見る。
ゼノン「フレイも立ち直れたようだな」
メフィ「そうね。ずっとあのままの調子だと台無しだもんね! 元気になってくれてよかったよ」
そうやって二人で会話をしていると何やらムムが遠くから叫んでいた。
ムム「お父さーん!!! お母さーん!!! 2人も一緒に遊ぼう!!!」
いつの間にか、シリュウやレビルも一緒になって遊んでいた。
砂浜にいるのはメフィとゼノンのみである。
恐らく、メフィは自分も遊びたかったがゼノンを待っていたのだろう。
ゼノンはその意図に気付くとメフィに
ゼノン「メフィ、待たせてすまなかったな。ムム達の元へ行くとしよう。せっかくの海だ。入らなければ損であろう」
その言葉にメフィは目を輝かせる。
もしかしたら、一番楽しみにしていたのはメフィかもしれない。
自然を愛する精霊族。
そして綺麗なものには目がないメフィ。
この透き通る様に美しい海は、まさにメフィにドンピシャである。
メフィ「うん! 早くゼノンも着替えてよ!」
そういうとメフィは、自分がゼノンに選んだ水着を渡す。
その水着をゼノンは手に持つと、一秒もかからない間に着替えてしまったのだ。
早着替え選手権に出れば圧倒的一位である。
ゼノン「終わった。行くぞメフィ」
あまりにも早い行動に少し戸惑うメフィは頷きながらゼノンと
共に子供達の待つ海へと向かう。
海で皆で遊んでいるとシンが何やらゼノンに話をしている。
なんと、シンがゼノンに泳ぎの勝負を申し込んだのだ。
流石は神速のシンと言うだけあって、かなりの速度であったが
やはりゼノンには適わず敗北を喫していた。
父の背中はとてつもなく大きのだ。
そして、ムムやフィル等、女性陣は砂浜で何やら巨大な砂の城を作っていた。
ムムが魔法は一切禁止と言った為、全て己の手で作り上げたのだ。
その出来栄えには皆が感動したのを覚えている。
そんなこんなで日が暮れるまで遊んでいるとシリュウのご飯という言葉に皆が一斉に一列になる。
前にはレビルの姿が。
レビル「よっしゃ!!! 水を扱ったら世界一のワイにお任せや!」
レビルの手から次々に水がシャワーの様に、皆の頭上から降り注ぐ。
食事の前に身体を綺麗にしなければならない。
その為に、レビルがやってくれたのだ。
皆が身体を綺麗にして、食事にありつく。
今日のご飯はBBQである。
特に海鮮が豊富だ。
皆が遊んでいる間に、レビルとシリュウが素潜りして取ってきた
海鮮達は種類豊富で様々な海鮮がある。
網に貝を置き、焼いていくと何やらシリュウが黒い液体を貝にむかって注いでいた。
そんな光景に興味津々のムムとフィルは、シリュウの元へ迫る。
ムム「ねぇねぇシリュウさん! それは何をかけてるの?」
フィル「なんだか凄いいい匂いがする!です!」
目をキラキラさせてそう話す二人にシリュウは得意気に答える。
シリュウ「フッフッフッ。これは拙者の特性の秘伝のタレである!
ごく最近完成してだな! 味が濃い故にこの海鮮達なら合うのではと思い持ってきたのである!」
貝にかけられた黒い液体は貝の中でグツグツと沸騰している。
そして、最高に食を唆られる香ばしい香りを放っていた。
それに釣られたのは二人だけでは無い。
バリアン「なんじゃこの匂いは?!」
リリア「ほんとッ!!! 凄いいい香り!」
レイラ「潮の香りと相まって最高です!」
全員がシリュウの秘伝のタレの香りに夢中である。
そして待つこと数分。
シリュウ「頃合なのである!!!」
その言葉に皆が一斉に群がる。
沢山の種類の貝があり、皆がそれぞれ食べる事が可能だ。
その為、取り合いになることは無い。
メフィが醤油に染められた熱々の貝を口の中にいれる。
メフィ「ッ?!!!・・・・・・・・・・・・・・・うっまあァーーーッい!!!!!!!!!」
思わず大きな声で叫んでしまうメフィ。
シリュウの作る料理はどれも格別だ。
だが、この貝はそれ等を遥かに凌駕していた。
ただの貝なら何度も食べたことがある。
だが、シリュウの秘伝のタレは次元が違った。
少ししょっぱいのだが、貝との相性は抜群だ。
特にバリアンは余程口にあったのか、次々と口の中へと頬張っていく。
そんなバリアンを見て、ムムもバリアンの足元で地団駄を踏んでいる。
ムム「バリじぃばかりずるいー!!! ムムもムムも!!!」
熱くて未だに食べれていないムム。
バリアン「ガッハッハッ!!! 今じぃがフーフーしてあげるからな」
そう言ってバリアンは貝を一つとりムムの為に冷ましてあげる。
待っているムムは涎を垂らしながらただただ貝を見つめていた。
バリアン「ほれ、口をアーンしてみろ」
そういうとムムは口を大きく開けそこへバリアンが優しく入れてあげる。
黙って何度も何度も咀嚼するムム。
そして、飲み込む音が聞こえると、
ムム「うまあァい!!! バリじぃもっともっと!!!」
バリアン「はいはい、慌てて飲み込むんじゃないぞ?」
皆もそれぞれ、食事を楽しむ。
皆も余程気に入ったのか会話は少なく、とにかく皆が口へと頬張っていた。
そんな中、ゼノンがシリュウの元へと歩み寄る。
ゼノン「シリュウ、本当に感謝している。お前には皆が何度笑顔にしてもらった事か。 もしお前がこの家を離れるなら皆が悲しむであろうな。もちろん私もな」
ゼノンがそう話すとシリュウは微笑み小さく笑った。
シリュウ「フフっ、拙者もここを離れる気は無いでござるよ。拙者にとってもここは、帰る場所であり拙者の全てなのですよ。
皆が美味しい美味しいと言って食べてくれる姿を見るだけで拙者は幸せなのです。それにゼノン殿に救って頂いたことを忘れることはないのでござるよ!」
その言葉を聞いて安堵するゼノン。
シリュウはオルレア一家の柱なのだ。
全ての食を管理している為、シリュウが居なくなるというのは
とてつもない大きな損失なのだ。
何より、シリュウの人柄が良かった。
分け隔てなく接するその性格。
そして、武の心得も習得している。
まさにオールマイティな男なのである。
改めて、ゼノンはシリュウが居てくれたことに感謝するのであった。
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