第2部 驚愕のニュージーランド編 VOL3「ヒジョーシキ?な広さ」(1997年)
ー驚愕のニュージーランド編 VOL3ー
「ヒジョーシキ?な広さ」
ワナカ 1997年1月
昨日に続いていい天気だ。
南半球の1月はこっちの夏にあたる。
奥さんがサングラスをかけて
ラフなかっこうで出かけようとする。
「レオ、ゲートを閉めにいくけど
一緒にくる?」
「もちろん!!」
TOYOTAランドクルーザーに乗り込む。
「Come on! Boys!」
奥さんが慣れた調子で口笛を吹く。
「ピュウーーウィッ!」
シープドッグが3匹走ってきて
後ろの荷台に飛び乗る。
おお!キミタチも行くのか。
ふと見ると石ころでも跳ね上げたのか
助手席側のサイドミラーが割れている。
俺「これ割れてるね。」
奥さん「え?あらホントねー。
知らなかったわ。」
運転席側のミラーを見ると
こっちはミラーを付ける棒しかなかった。
奥さん「ああそっちはどこかに
落としたみたい。
でもべつに必要ないからいいのよ。」
必要ないってか、、、、。
家の前の土の道を走っていくけど、
まったく車が見あたらない。
左右に見えるのは広大な牧草地と丘だけだ。
家も店も何もない。
ほんとにバックミラーなんて無意味みたい。
しばらく走ると途中1台の車と出会い、
奥さんは車を停めて窓から声をかける。
再び走り出すと彼女が言った。
「ご近所さんよ。」
ううううーーーむ、一体どのへんまでが
ご近所さんなのだ?
デカイ木製のゲートの前で止まる。
羊が遠くの方でいっぱいかたまっている。
広い土地やなあ!
野球とサッカーとラグビーと運動会を
同時にやれるで!
ゲートを閉めて車に戻ると奥さんが言う。
「次に行くわね。」
ん?「次」ってナンダ?
しばらく走って別のゲートに着くと
また車を降りて閉める。
俺「あのお、、、、もしかして
ここもアナタ達の土地ぃ?」
奥さん「そう。あとまだいくつかあるわ。」
俺「ウッソー!!?」
頭がクラクラしてきた!!
、、、、、ホントだった。
ゲートに着くたび彼女は閉めていく。
俺は両手を広げて言った。
「これ、ぜえええーーんぶ
アナタ達のものぉ!?」
奥「いいえ、あの丘からあっちは
デイビスさんとこのよ。」
今見えてるこのすべての土地が
たった2家族の所有地なのかあ!!!
俺んちなんて1部屋やぞお!
ひ、と、へ、やあーっ!
端から端まで7歩やぞお!
もしここの夫婦が俺んちに来たら
ストレスで寝込むんちゃうやろか???
「俺、後ろに乗るよ。」
途中からTシャツを脱いでハダカで
ランドクルーザーの後ろの荷台に立ち、
前につかまって乗ってみる。
カラッと晴れた夏空、風がキモチイイ!
横を見ると1匹のシープドッグも
俺と同じポーズで立っている。
「あははは。キモチイイよなあ!マイク!」
あるゲートに着くと奥さんが犬たちを呼ぶ。
「Get down!」
ヤツらが飛び出す!
「Go!」
羊たちに向かって突進していく!
なぜかは忘れたが、群れから遠く離れてる
グル−プを追い立てて全体の集団に
合流させるのだ。
かなりバラけている羊たちを見て
彼女が荷台の俺に振り向いて言った。
「レオ、行くわよー!」
ランドクルーザーで牧草地へ入っていく。
なんと群れからはぐれた羊たちを
車で追い始めた。
これはっ!
シープドッグでなく「シープトラック」だ!
オモロすぎるう!!
羊たちが驚いて走り出す。
車がバウンドするたびに荷台の俺も
飛び上がって両足が宙に浮く。
「ひゃっほーっ!!」
犬たちが車のまわりをウレシそうに
一緒に走り回る。
すべての羊をうまく集めると彼女が言った。
「ちょっと丘に登りましょうか?」
車で上がって止めて、少し歩く。
丘の向こうには小さい山や草原が
ずっとずうっと続いていた。
「時々ここにひとりで来るの。」
彼女はサングラスをはずすと
かすかに微笑んだ。