第2部 驚愕のニュージーランド編 VOL2「羊たちとの熱いタタカイ」(1997年)
驚愕のニュージーランド編 VOL2ー
「羊たちとの熱いタタカイ」
ワナカ 1997年1月
ー前回からの続きー
3000頭の羊を生後1年未満、
3年以上など3つのグループに分ける
作業を開始する。
羊たちの耳には目印に赤や黄色の
タグが付けられている。
1.5mくらいの巾で、1mくらいの高さの
木枠の通路へ羊たちをゾロゾロと通らせて、
ご主人が手で小さなゲートを
開けたり閉めたりして
それぞれの場所に羊を誘導する。
時々前の羊に続いて違った場所に
行こうとするやつを止めるために、
大声で叫びながら羊の首を荒っぽく
ゲートでガンガン!挟む。
何がなんでも絶対に行かせない!
「メ、メエーー、、、、。」
しかたなく首を引っ込めた羊は
正しい場所へ向かって進んでいく。
実に荒っぽいが、ご主人と羊たちの間には
俺には見えない純粋な関係があるように
思えるのだ。
時々怯えてその場から動かなくなる
羊がいると、
さあ、シープドッグの出番だ。
「マイク!」
ご主人が叫ぶ。
マイクが吹っ飛んできて
「ワンワン!ガウ!」
と羊を叱りつける。
慌てて留まっていた白い流れが動き出す。
また流れが止まる。
「ジョン!」
犬たちに通り道など関係ない。
ジョンは怯えて押し合いへし合いする
羊たちの「背中の上」を爆走する。
おお!発想が男らしいぞ、ジョン!
それにしてもなんてパワフルな光景なんだ!
しばらくするとご主人に
「年に、1、2度羊を数えるんだ。
見たいか?」
と言われる。
「見たい見たい!
でもどうやって数えるの?」
「手でだよ。」
「、、、、マ、マジぃ?手で?
羊がいっぴーき。羊が2ひーき?」
マジだった!!
シープドッグに羊を追い込ませ、
30匹くらいずつ大きな木の
ゲートの中へへ入れる。
ドドドおーッ!となだれ込む羊たちを
彼は目で追い、子どものように両手で
指折って数える!
真剣な眼差し!
熱い日差しの下で汗が飛び散る!
手でゲートの開閉をしている奥さんに
100匹ごとに「テリー!」と叫ぶ。
すると奥さんはポケットに
小さいボールか何かを1つ押し込む。
「テリー=100」らしい。
後でそれを数えたら100のケタまでは
わかるわけだ。
俺は3000という数字を原始的に
両手の指を折って数える人間を
初めて見て、あきれるのを通り越して
感動してしまった!
観光客に観せる一般的な
羊の毛刈りショーなどとは
この迫力はまったくの別物だろう。
これは見世物ではなく彼らのシゴトなのだ!
休憩をはさみ1時間以上もかかって
やっと数え終わる。
ほぼ3000匹ピッタリだった。
汗をかいたご主人がニコッと笑って
俺に言った。
「レオ、さあ、ビールを飲もうか。」