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つちのこうやのラブコメ (それぞれ別々にお読みいただけます)

隣の席の美少女が寒がりなくせに短いスカートを履いているので、ひざ掛けを貸してあげたら、「それどころじゃないほど寒いから抱きつきたい」と言ってきた


 隣の席の美少女の山越さんはは寒がりらしい。


 自分でそう言っていて、たしかにすごいマフラーを教室でも巻いている。


 マフラーを巻いている状態が常なので、首の太さを忘れてしまった。確か細かった気がするけどね。


 ていうかクラスの美少女の首の太さって、割とどうでもいいか。


 うん、じゃあ次に行こう。


 次は、暑がりな僕が膝掛けを持っている件についてだ。


 なぜかは今朝の話をすればわかる。




 朝、僕はいつも通り起きてきた。


 美容にこだわる早起きな妹が、すでに起きていた。


「あ、おはようお兄ちゃん」


「おはよー」


「眠そう」


「眠いし寒いし、布団にいたいなあ」


「暑がりのくせに寒いの? なら、そんなお兄ちゃんにぴったりのもの作ったからあげる。ほらじゃーん!」


「これなんだ? 布?」


「膝掛け! 私の手作り」


「あー、でも暑苦しそうだしなんか変な形の布だし……」


「うううううう、私は、お兄ちゃんがね、喜んでくれるかもって思ってね、それでね、心を込めてね……」


「わ、わかったよし、もらうもらう! ありがとう」


「ふふ。そうそう、私が悲しそうにしたら受け取ればいいの」


「立ち直り早いわ」


 妹にそう突っ込みつつも、心を込めて作ってくれたのは確かだと思うので、僕は妹の手作りの膝掛けを大切にカバンに入れたのだった。  





 というわけで今僕の膝には膝掛けがある。


 そうだ。これを寒がりの山越さんに貸してあげるのがいいかも。


 特に山越さんは、膝掛けが必要そうだ。


 

 なぜなら、スカートが短いからである。


 なんで冷たい空気が直接太ももに触れるようにするのだろう。


 わからないけど、僕は時々、山越さんの太ももを見て、寒そうだなあ、と思ったりする。特にやましい気持ちはない。ないのは嘘。でも少なめな自信がある。


 ぶるるるるる。


 めっちゃ震えてるよ、山越さん。


 今は朝。


 教室には、僕と山越さんしかいない。山越さんは電車の本数が少ないところから通ってるので早く登校しなければいけないらしく、早くから教室にいる。


 僕は妹がうるさいので、早く登校した次第である。


「今日寒いねー」


 山越さんが話しかけてきた。


「寒いな……膝掛けいる?」


 お、ほら言えたぞ。いくら僕でも隣の席の女の子に膝掛けを貸すくらいはできるのだ!


「あー、欲しい。けどこれ……膝掛けなの?」


「らしいぞ、妹によればな」


「うわあ、妹さんの手作りなの? 可愛いなあ」


 山越さんは感心して、膝掛けを目の前に広げた。


「使ってもいいの?」


「どうぞどうぞ」


 山越さんは膝掛けを太ももの上に乗せた。


「……」


「あったかい?」


「ちょっとはあったかいけど、それどころじゃないくらい寒い」


「まー、たしかに教室の暖房入れたばっかりだしな。しかもここ、陽がささないし」


「うん、というわけでさ、抱きついていいですか?」


「え?」


「おしくらまんじゅう的な」


「え……」


「いやなの……? あ、ごめんね」


「あいや、嫌ではない、わ、わかったよし! やろうやろう。寒いもんな」


「うん、寒い」


 山越さんはぶるると震えた。


 そして僕の方に椅子を寄せて……そして僕に腕を回して………胸が当たりそうで、顔もすぐ目の前で……やばいっ。触れる。


「あはははははっ! おーもしろ!」


 突然笑い始めた。


 そして元の位置に椅子を戻して、隣の席らしい本来のポジションに落ち着く。


「うわ、もしや僕をもてあそんでた?」


「まあねー、あー、朝教室で二人でいるからこういうこともできちゃうね?」


 まだ少し笑ってる山越さん。あんまり寒そうじゃない。少し頬は冷えてるのか、赤いけど。


「はー、まあ……そうだな」


 僕はそう返して、朝から校舎周りをランニングしている野球部の人たちよりも疲れてるんじゃないかと思った。


「ま、今日もがんばろー」


「おー」


 主導権が山越さんにある教室で、僕は小さく山越さんに従ったのであった。


 

 ☆    ○     ☆



「いやー、今日のお兄さんは面白かったよ」


「それは妹としても誇り高いですね。だいたいお兄ちゃんは、八十三パーセントの確率で面白い反応をしますから」


「そうなんだ〜」


「そうなんです」


「いやほんとね、ほんとに抱きつかれると思ってめっちゃ身構えてたの。可愛くない?」


「見たかった……今度私もお兄ちゃんにやってみようかな」


「うんうんやるといいと思う」

 

「よし絶対やろ」


「それにしてもあなたもお兄さんに負けずと劣らず可愛いわね。膝掛けプレゼントしちゃったりして」

 

「あ、あれはお兄ちゃんを困らせるためで、別に本気で受け取って欲しいとは……」


「ふふふ。お兄さんのこと大好きなのね」


「………………みとめます。でも結構、山越先輩もお兄ちゃんのこと気にしてますよねなんだかんだ」


「え? あ、まあね。朝行くと早く来てる人があんまりいないのよ」


「ふーんです」  


「うわ、生意気ね。バイオリン教室の先輩なのよ一応」


「はい。改めてふーん」


「うう」


「お兄ちゃんのプレゼント選びとか一緒にしに行きます?」

 

「なんで?」


「反応はやっ。まあまあ。また今度にしましょうかねえ」


「なんか……もてあそばれてる気がする」


「私はお兄ちゃんと違って、もてあそぶ側ですから」


「あら」




 午後の喫茶店のすみの席。


 何やら話が盛り上がっている二人の女の子がいた。


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