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笑顔の続きをまた見せて!  作者: 小林汐希
4話 昔は昔、今は今
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【4-1】




 翌月、竹下と俺は二人で電車に乗り、湾岸のテーマパークに来ていた。


 あの日の偶然の再会をしてから、何度もメッセージを交換した。


 昔懐かしい話で記憶合わせをしてから、これまでのお互いの経歴を話していき、これまでのブランクを埋めていった。


 そのあとで行きたいところや、興味のあるところなどを二人で話し合った結果、ここに落ち着いた。


 本当は初めての場所としては厳しいかなと思っていたけれど、リクエストしてきたのは驚いたことに彼女の方だった。


「そのかわり、小田くんには物足りないと思わせちゃうかもしれないけれど……」


「そんなことない。そんなに気にしてたのか?」


 本当は小さい頃からずっと行きたかったけれど、みんなと同じアトラクションは乗れなかったり、どうしても体調で制限されてしまうことが多かったから、彼女自身がいつも躊躇してしまうと打ち明けてくれる。


「じゃぁ、行きたいのを我慢する方がもっと物足りない結果になっちまうだろ」


「うん、分かった。ありがとう」




 12月、クリスマスのシーズンに入っているため、混雑も予想どおりだった。


「やっぱり、混んでるねぇ。でも、やっぱりテレビで見ていたのとは違うなぁ」


 そうだろう。毎年のシーズンになればテレビで必ず紹介されるのだから、そこに行きたくても行けないというジレンマを解放させたのだから、混雑くらい気にもしていないようだった。


「竹下……、大丈夫か? 無理はするなよ?」


「うん。元気だよ。それに暖かい服だから大丈夫」


 白いふっくらとしたウールのロングコートで、ワインレッドのスカート、寒くないようにと黒い厚手タイツにショートブーツ。


 ピンクとグレーをチェックにしたマフラーと、甲のところにリボンアクセントがついた手袋と完全装備だ。


 事前に夜は海風で寒いと言っておいたから対応してくれたみたいだ。これなら夕方以降の冷え込みにも耐えられるだろう。


「それならいいんだけど、具合悪くなったら、すぐに言ってくれよ?」


「もぉ、小田くん心配症だなぁ。そこまで重病患者じゃないよ私? でも、ありがとうね」


 この人混みの中で、なぜ竹下が大丈夫といった理由が少しずつ分かってきた。


 一般的に人気のある絶叫系の乗り物には不安があるから避けることになる。これが同時に混雑しているアトラクションからは少し離れることを意味するから。小さな子どもたちでも乗れる物が中心になり、待機列もそこまで伸びない。


 そして、食事時間もずらし、休憩時間を多めにはさんで、よく見るアトラクションの攻略計画などは一切組まずに、本当に散歩デートというような形にしたことが、竹下も安心して楽しめる理由になっているようだった。


 確かに、この形が組めるのは、竹下のことを分かっている自分だから。彼女もそれを理解してくれていたからこそ今日の計画を発案したのだろう。


 つまり、竹下美穂とここで1日を過ごすには、他の奴じゃダメなのだと……。



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