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笑顔の続きをまた見せて!  作者: 小林汐希
6話 新しく始まった日常
11/40

【6-1】




 年が明けて、近くの公園で俺は美穂が来るのを待っていた。


「ヒロくんおはよう」


「美穂ちゃん遅いぞ?」


「えー、遅刻してないよ?」


 少し頬を膨らませているところも、本当に微笑ましく見えてしまう。


「……よし、じゃ行こうか」


「あー、ヒロくん逃げたぁ!」


 二人とも、上下スエット姿だ。


 それまで朝はギリギリまで眠っていたかった俺が、どうしてもこんな夜明けと共に活動するようになったかといえば、彼女との生活が発端としか言えない。



 二人で行った初詣で、彼女の体力づくりが最大の課題になっていることを聞いた。


 美穂が予定しているのは、心臓外科手術。そのためには、とにかく回復のための体力を蓄えなければならない。それが不足していると、せっかく手術自体が成功しても、普段の生活に戻って来られなくなってしまう。


 そのために、朝晩に軽いウォーキングから始めているという。


 それに付き合うと約束した。


 幸い仕事も平日の9時から。職場の新宿への通勤時間も30分ほどの好立地だ。夜はその日によって残業もあったり時間が不規則だけど、朝ならできる。


「ヒロくん眠そう、昨日何時に寝たの?」


「この週末までの資料まとめなくちゃならなくてさぁ……。日が変わる前には寝たと思うんだけどなぁ……」


 あくびをかみ殺しながら答える。


 それでもこうやって、まだ人通りもほとんどない通りを、美穂と二人並んで歩くのも決して悪い話じゃない。




 俺はこれまで以上に学校時代や今の仕事の話題を、彼女は家や病院、その時に気付いたことをいつも話し合った。


 時間に追われて生活していない美穂は、季節や普段は見過ごしてしまうような些細なことまで気づく。


「お仕事中に寝たりしちゃダメだよ?」


「寝たら、それこそアウトだ」


「今日は何時まで?」


「少し打ち合わせが入ってるから9時くらいには帰ってくる。無理しなくていいぞ?」


「ううん、また駅の前で待ってるよ」


「分かった。もし長引くようなら連絡する」


「じゃあ、行ってらっしゃい」


 美穂は、いつも俺の部屋の前まで送ってくれる。最近は、これがないと1日が始まらないようになっている。



「それでも、だいぶ陽が延びたよな」


 通勤の電車に揺られながら感じるようになったのも、美穂の影響が大きいだろう。


 机を並べていたあの当時から、俺自身もいろいろあったけど、美穂もどことなく他の女子とは違うように感じていた。


 どことなく儚い存在。大きな力でなくとも簡単に壊れてしまいそうな。


 もちろん体のことがある。当時はそう思っていて当然だった。


 それだけじゃないと、彼女と再会して気付いた。環境の変化を非常に敏感に感じとることができる。


 花や鳥の姿で季節の移り変わりを感じるだけじゃない。気温だけじゃなく、きっと気圧の変化も感じているに違いない。雲の形なども見て教えてくれる天気予報は、テレビで見るお天気キャスターとは比べものにならないほど正確だ。


 裏を返せば、それだけ繊細な存在なんだ。自然と体の変化がリンクしている。


 それを理解するためには、やはり彼女のことをもっと知らなくてはならないと思うようになっていた。


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