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一年サタン組のよい子たち、生贄聖女を育てます!  作者: 三羽高明@『廃城』10/7電子書籍化
三日目 一年サタン組のよい子たちは、生贄聖女とお話しがしたいです!
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悪魔語教室、開幕!

「天高くそびえる魔王城、登れやブロッケン山、ああ誇り高きデーモン学園、デーモン学園」


「でーもん、でーもん」


「勇ましく広がる魔王城、来たるはワルプルギス、ああ素晴らしきデーモン学園、デーモン学園」


「でーもん、でーもん」


 サタン組の子どもたちは、校歌を歌いながら廊下を歩く。ニエちゃんは、分かっているんだかいないんだか分からないような合いの手を入れていた。


 外は温かい日差しが降り注いでいて、ニエちゃんの言う通りのいい天気だった。校庭の遊具で下級生が遊び、木陰では上級生たちが昼寝をしている。


 だが、サタン組の子どもたちは彼らに混じろうとはせずに、花壇の縁に腰掛けたニエちゃんの周りに集まって、コーマックやレジーに負けじとばかりに、「これは『花』」「こっちは『草』だよ」等々、彼女に言葉を教え始めた。


「はな……くさ……」


 ニエちゃんは真剣な顔でそれを覚えていく。


 ニエちゃんの語彙が増えるのは、最初に言葉を教えたコーマックとしても嬉しいことだった。それは皆も同じようで、教えた言葉を彼女が発する度に、はじけるような笑い声が飛ぶ。


「僕、何でコーマックたちが一生懸命ニエちゃんに言葉を教えたのか、分かった気がした」


 ニエちゃんを怖がらせまいとしているのか、近くを這っていた虫を脇に退けつつ、エドがコーマックに話しかける。


「自分が教えた言葉をニエちゃんが話すと嬉しいもん。それと比べたら、言葉を教える大変さなんて、何ともないよね」


「うん。でも、そこまで苦労はしなかったよ。案外すんなりお話ししてくれるようになったし」

 

 ニエちゃんに言葉を教えることの楽しさを共有できる相手が増えて、コーマックは上機嫌になった。


 その会話に、ニエちゃんの髪を三つ編みにして遊んでいた学級委員長のキュリエレーナとマリリンが加わってくる。


「私の勘、当たってたわ。ニエちゃんは頭がいいのよ」


「もしかしたら悪魔語って人間から見ると、意外と簡単なのかもしれないね」


 マリリンが花壇の花を摘んで、それをニエちゃん髪に挿した。おめかししたニエちゃんはいつも以上に可愛くて、コーマックは、「すごい!」と拍手してしまう。キュリエレーナは「でしょう?」とでも言いたげな顔になった。


 皆が何故はしゃいでいるのか分からずに、ニエちゃんは不思議そうな顔をしている。マリリンがポケットから小さな折り畳み式の鏡を出して、それをニエちゃんに渡した。


「これ、はな」


 ニエちゃんは鏡に自分の姿を映すと、髪に手を遣り、覚えたての単語を口にした。『花』という言葉を教えた生徒が、「正解!」とガッツポーズをする。


「ふーん。鏡に映ってるのが自分だって分かってるんだね。それくらいの知能はあるのか……」


 ルインも、ニエちゃんが新しい言葉を使ったのとは別のことに驚いているようだ。キュリエレーナが、「やっぱりニエちゃんは賢いのよ」と言った。


「それに可愛いしね」

 

 コーマックも同意した。エドが、「人間って皆こんな感じなのかな?」と首をかしげる。


「分かんない。でも、そうだといいなー。ニエちゃんくらい可愛い人間なら、私、家でも飼いたい!」


 マリリンは楽しそうに、ニエちゃんの髪をさらに色とりどりの花で飾っていった。

 

 今まで想像もしたことのなかった生き物、『人間』について考えを巡らせていることに、コーマックはふと不思議な気持ちになる。今まで未知だった生き物が、ニエちゃんの存在で、ぐっと身近になったような感覚だった。


 サタン組の子どもたちとニエちゃんは、予鈴が鳴るまでずっと校庭にいた。その時間はあまりにも楽しくて、チャイムが鳴った時は皆、夢から覚めたような表情となってしまう。


「また次の休み時間も、たくさん言葉を教えてあげるからね!」


 皆はそう約束して、ニエちゃんと共に元気よく校歌を歌いながら校舎の中へと戻っていった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 言葉すら違う、人間に知能があるとすら知られていない…… ここまでくると悪魔の子供達の知っていることなんて、どこまで信用したものか悩むレベル。 ある意味では何の先入観も持っていない「無垢」な彼…
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