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一年サタン組のよい子たち、生贄聖女を育てます!  作者: 三羽高明
七日目 一年サタン組のよい子たちは、生贄聖女の友だちです!

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新しい友だち

「でも魔王様、たった一回しか『人間と悪魔が仲良くできること』を証明していないのに、そんなふうに判断しちゃっていいんですか?」


 真面目なキュリエレーナは、ふと気にかかることを思い付いたようだった。


「『仲良くできる』ってもっといっぱい試さないと、納得しない方もいるんじゃないでしょうか?」


「このクラスには賢い子が多いですね」


 魔王様は少し感心したようだった。キュリエレーナは、ルインに負けないくらい赤くなった。


 キュリエレーナやルインが賢いということを、私は前から知っていた。ちょっとだけ優越感を覚えて、魔王様に抱いていたトゲトゲした気分が和らぐ。


「確かに一度だけでは説得力に欠けるかもしれません。ですが、『ゼロ』よりは『一』の方がずっといいと私は思いますよ」


 魔王様も、どうやらキュリエレーナと同じことに気が付いていたみたいだった。


「『二』以降は、魔界と人間界の交流のあり方が変わってから確かめてもいいのではないかと思っています。あまり慎重になりすぎると、好機を逃してしまいますからね」


「好機?」


「私は、『ニエちゃん』が生きている内に、魔界と人間の関係を変えたいと思っています。彼女は人間側の貴重な生き証人ですから。そうでしょう?」


 魔王様が私に問いかける。私は「うん」と答えた。この際だから、自分の意見も言っておこうと思ってさらに続ける。


「みんなといるの、たのしかった。みんな、だいすき。ともだち、です」

「私は、この言葉を他の悪魔たちに聞かせたいんですよ」


 きっとこういう発言をずっと聞きたかったのだろう。魔王様は満足そうにしていた。


「人間の寿命は、我々からすればあまりにも短い。それでも私は、『ニエちゃん』に、魔界と人間界の懸け橋となってほしいと考えているんです。それは、人間でありながら、悪魔たちと『友だち』になったあなたにしか頼めないことだから」


 魔王様は私に向かって手を差し出すと、恐らく魔界ではほとんどの悪魔が聞いたことのない言葉で話し始めた。でも、私にはきちんと理解できた。


『次は私と友だちになりませんか? これからの我々の延々の平和を願って』


 私だけではない。それが人間の言葉だということは、サタン組の子どもたちにもすぐに分かったみたいだ。でも、彼が何を言ったのかを聞き取れるほどには、皆はまだ人間の言葉を理解していなかった。


 私は通訳をしてあげることにした。


「あのね、まおうさま、わたし、ともだちにしたい、っていってる」


 まさかの申し出に、サタン組の子どもたちは沸き立った。「ニエちゃん、返事は?」と皆が急かしてくる。


「うん、えっとね……」


 私は返事に相応しい言葉を考えた。魔界のトップからの依頼だ。それなりの言葉で答えを返す必要があるだろうと思ったのだ。


 でも、魔王様が差し出している手を見て思い直した。彼が求めているのは、立派な言葉なんかじゃないと気が付いたからだ。私は腕を伸ばす。


「よろしく」


 飾らない言葉と共に、私は差し出された手を取った。それは、私と魔王様が友だちになった瞬間だった。


 サタン組の子どもたちの喜びは、いよいよ最高潮に達した。もう『ニエちゃん』が死んでしまうと心配しなくていい。それどころか、魔王様まで『ニエちゃん』の友だちになってくれた。こんなに素晴らしいことが他にあるだろうか。


 きっと、そんなふうに感じているのだろう。


 私が生贄の任を解かれたと分かった時と同じくらいの歓声が上がる。魔王様は、湧きかえる子どもたちを嬉しそうに見つめていた。


 私も皆と同じくらいに気分が高揚していたけれど、その前に一つだけ言っておきたいことがあって、魔王様に人間の言葉でそっと話しかけた。


『魔王様、先ほどの言葉、『ずっと』っていう意味なら、『延々』じゃなくて、『永遠』だと思います』


 私の囁き声は魔王様以外には聞こえていない。魔王様は、「これはこれは……」と苦笑いした。


「私も勉強が足りませんね。彼らを見習わなくては」


 窓の外では、朝日が高く登っている。


 私の一日は、いつも誰もいない教室から始まっていた。


 けれど、今日は違う。私の隣には友だちがいた。私たちは、隣り合って朝日を見つめていた。


 きっとこんな光景は、今はまだ魔界中、どこを探しても見当たらないに違いない。でも、こういう一時がいつの日にか、何でもないありふれた日常の一部になるのかもしれない。


 今日という日がそのための一歩になることを願いながら、私は、ここに集った悪魔――友だちたちと一緒に、終わることのない幸福を噛み締めていた。

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