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一年サタン組のよい子たち、生贄聖女を育てます!  作者: 三羽高明
七日目 一年サタン組のよい子たちは、生贄聖女の友だちです!

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悪魔と人間の友情

 私には記憶がない。


 私が覚えている最初の光景は、机や椅子がたくさん並べられた室内で、子どもたちが私の周りをぐるりと取り囲んでいるところだった。


 私は過去のことを何も覚えていなかった。でも、今自分が置かれている状況が普通ではないということだけは分かった。


 私と違って角と牙が生えた子どもたち。理解の出来ない言葉。それに私は檻の中にいた。まるで囚人のように。


 けれど、そんな異常な状況に置かれていても、不思議と怖いとか屈辱だとか、そんなふうには感じなかった。


 きっと、あの子たちが、あまりにも純粋な目で私を見つめてきたからだろう。敵意が全く感じられなかったのだ。ちょっとひねくれた子もいたけれど、今ではすっかり仲良しだ。


 だから、自分が何だかおかしな扱われ方をしていると知っていながら、一応はあの変な状況を受け入れることができていたのだ。


 でも、私はその内にとんでもない事を知ってしまった。私は生贄だった。もうすぐ死ななければならない運命。逃れられない死の手が、私を掴もうとすぐそこまで迫っていたのだ。


 そうと知った時には愕然とした。それでもパニックにならずにすんだのは、皆がいてくれたからだ。


 サタン組の皆は本当に良い子たちだ。あの子たちは、私の悲惨な運命に同情してくれた。そして、自分たちの身の危険も顧みずに、私を助けようとしてくれたのだ。あの森の中で何度も命の危険に曝されながらも、決して私を見捨てようとはしなかった。


 皆、私が生き延びるために全力を尽くしてくれていたのだ。だったら、当事者の私が自分の未来を諦めるなんて、許されるはずないではないか。


 でも、運命は残酷で、結局私は捕まってしまった。後に待ち受けるのは死だけだ。


 ――そう思っていたのに。


「生贄に……しない……?」


 先ほど魔王様から聞いたセリフがにわかには信じられずに、皆は一瞬呆然となった。私もポカンと口を開ける。


 まだ上手く話すことはできないが、皆から教えてもらったおかげで、魔界の言葉の聞き取りはほとんど完璧にできるようになっていた。


 皆の反応が私と同じようなものだったことから察するに、きっと私の聞き間違いではないだろう。


 しばらくすると、皆の間に興奮がゆっくりと広がっていった。そして、最後にそれは爆発した。


「ほ、本当ですか!?」

「ニエちゃん、助かるんですね?」

「やったー! ニエちゃん、死なないですむんだよ!」


 マリリンが感激のあまり私に抱き着いてきた。エドははしゃいで辺りに小さな花火を出す。魔王様は自分の方に飛んできた火の粉を指先で軽く払いながら、その様子を微笑ましそうに見ていた。


 私は目を瞬かせる。まだ何が起きたのか、上手く理解できなかった。


「何で……何でですか?」


 コーマックが破顔しながら魔王様に尋ねた。魔王様は、「人間と仲良くできるというのが、私の思い込みではないと分かったからです」と言った。


「もしかして魔王様、そのために僕たちに生贄用の人間を預けたんですか?」


 何かに気が付いたようにルインが言った。コーマックが、「どういうこと?」と尋ねる。


「だからさ、魔王様は確かめたかったんだよ」


 ルインがいささか興奮状態で、それでも冷静に自分の推測を語る。


「魔王様は人間と悪魔が仲良くできるかもしれないと思っている。でも、他の悪魔はそう思わないかもしれない。どっちの意見が正しいのか、分からなかった。だから、悪魔が人間と上手くやっていけるのか確かめるために、僕たちと人間を交流させたんだ。……『実験』ってことになるのかな?」


「君は賢いですね。その通りですよ」


 魔王様がルインを褒めた。ルインは真っ赤になって、「ありがとうございます」と小さな声を出す。


「幼い悪魔は良くも悪くも純粋です。ですから、正しい答えを出してくれる相手として、最も相応しいだろうと判断しました。それに、デーモン学園は私の母校ですからね。後輩たちがどんなことをするのか、興味がありました」


「じゃあ、もし僕たちが、『人間』となんか仲良くなれないって思ったとしたら……」


「私も、自分の中に芽生えていた、『人間と悪魔は仲良くできる』という考えは、間違いだったと考えざるを得なかったでしょうね。そうして伝統に則って、彼女を『生贄』としていたでしょう」


 魔王様が私の方を見た。皆は少し顔色が悪くなる。きっと、私の――『ニエちゃん』の運命が自分たちの両肩にかかっていたというのを、今ありありと実感したのだろう。


 私は、何となく魔王様に抗議したくなった。どうして命のやり取りなんていう重大な事柄を、こんな年端もいかない子たちに押しつけてしまったのだろう。


「君の言葉を借りるのなら、『実験』のことは、あくまでも周りには伏せていました。学園長を初めとしたこの学園の関係者にもです。もし私の真意が分かってしまえば、『人間と仲良くできる』という『演技』をされてしまう可能性もありますからね。でも、それでは意味がないでしょう?」


 確かにあの学園長なら、魔王様におもねろうと、そんなことをするかもしれなかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 小さな子供達になんて責任を! とニエちゃんが怒るのは当然ではある…… 隣のヤンチャな二人が騒ぎを起こさなければ生贄ってことをすっかり忘れて、最終日にやっと気がついて阿鼻叫喚になっていたかもし…
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