生贄聖女の行方
「……ところで君たちは、初めて本物の『人間』を見て、どう思いましたか?」
突然の問いかけに、サタン組の子どもたちは少し戸惑ったが、答えを思い付いた子から次々に声が上がる。
「えっと……可愛い!」
「お話ししてて楽しいです」
「僕の名前を書いてくれた時は嬉しかったな……」
「ゼリーが好きなのが意外でした」
皆が口々に話すのは、ニエちゃんとの七日間の思い出だ。それを傍らで聞きながら、ニエちゃんも、「わたしも、たのしかった、です」と言う。
「君たち、本当に仲がいいんですね」
魔王様はどこか満足そうに、サタン組の子どもたちの話を聞いていた。
「君たちが感じたことをまとめると、『人間は悪魔とそこまで変わらない』ということになるでしょうか」
魔王様は、ルインが学園長に放った台詞と同じようなことを言った。
「昔の私もそう感じましたよ。だから、人間の文字を勉強してみたんです。人間のことをもっとよく知りたかったから。と言っても、魔界には人間界の文字を扱った文献なんかはほとんどないので、学ぶのはかなり苦労しましたが……」
どうやら幼い頃の魔王様は本物の人間を見て、知的好奇心を覚えてしまったらしかった。
「それと同時に、私の中にある思いが芽生えたのです。私たちは大して変わらない。それなのに、どうして魔界と人間界の間にはほとんど交流がないのだろう。我々は、その気になれば、仲良くなれるのではないだろうか、と」
「なれます!」
その言葉に真っ先にコーマックが反応した。「ね、レジー!」と、隣にいた友人にも同意を求める。
「僕たち、ちゃんと知ってます!」
「そうですね。君たちは知っているでしょう」
魔王様が頷く。
「と言うよりも、今回の件でそのことを知ったと言う方が正しいでしょうか。それこそが、私が知りたかった答えです」
「答え?」
何やらよく分からないことを魔王様が言い出したので、皆は少しきょとんとした。魔王様は微笑んで、「結論から申し上げましょう」と言った。
「私はこの人間――君たちが『ニエちゃん』と名付けたこの人間を、生贄にするのはやめにしようと思っています」




