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一年サタン組のよい子たち、生贄聖女を育てます!  作者: 三羽高明
七日目 一年サタン組のよい子たちは、生贄聖女の友だちです!

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魔王様の度胸試し

 サタン組の子どもたちとニエちゃんは、魔王様と共に応接室に入った。学園長はついて来ていない。魔王様が、「まずは彼らと話したいから」と言って同席を拒否したのだ。


「さて、どこまで話しましたっけ……」


 応接室のソファーにゆったりと腰掛けた魔王様は、顎に手を当てた。キュリエレーナが、「魔王様が人間の文字を勉強した理由のところからです」と生真面目に返事する。


「ああ、そうでしたね」


 魔王様は軽く笑った。


 魔王様は魔界で一番偉い悪魔だ。そんな彼とこんな近くで話をしている。それもこれも自分たちが、『魔王様から預かった生贄用の人間を育てる』という大役を仰せつかったからだ。


 サタン組の子どもたちは、それがどれだけの重要な役目だったのか、今更のように認識した。


 しかしながら、自分たちはその任を全うできなかった。皆は生贄にされた人間と接する内にいつの間にか親近感を覚え、最後には彼女を殺させまいと逃がそうとした。


 それは、自分たちに生贄を預けた魔王様を失望させるような決断のはずだ。


 だが、今の魔王様は、少しも怒っているように見えなかった。それどころか、自分たちとの会話を楽しんでいるようでさえある。そのことが皆には不思議に思えて仕方がなかった。


「私、昔はこの学園の生徒だったんですよ」


 魔王様は唐突に昔話を始めた。


「君たちくらいの年齢では、やったことのある子はいないかもしれませんけど、この学園では代々、度胸試しとして初等科の上級生や中等科の生徒たちが、森を探検する『習わし』があるんです」


 魔王様は規則違反の行為のことを、さも伝統行事のように言ってのけた。コーマックが少し笑ったが、ルインに肘で突かれて笑顔を引っ込める。


「私もそれで森に入ったことがありました。初等科の四年生の頃でしたね」

「でも、魔王様ならそんなの余裕でしょう?」


 エドが言った。


「だって魔王様、すごく強いじゃないですか。さっきだって……」

「今は確かにすごく強いかもしれませんが、昔はそんなことはありませんでしたよ」


 魔王様は緩くかぶりを振った。


「少なくとも、一緒に探検していた悪友とはぐれて泣いてしまうくらいには、強くはありませんでしたね」


 意外な過去に皆は目を瞠った。魔王様は昔のことを思い出しながら苦笑いする。


「危ない生き物に追いかけ回されて食べられかけて……下手したら死んでいたでしょう」


 魔王様がどんな恐怖を味わったのか、皆にはよく分かった。つい先ほどまで、自分たちも同じような思いをしていたのだ。


「私はそんな危険から無我夢中で逃げました。その内に、ある場所に入り込んでしまったのです。そこが『人間界』でした」

「えっ、どうしてですか?」


 マリリンが思わず声を上げた。魔王様は、「多分、知らない内に人間界へ続く道――『通路』を通ってしまったんでしょうね」と答える。


「『通路』は、一定の場所に常にとどまっているわけではありません。誰も気が付かなかっただけで、昔はあの森にもあったのでしょう。今も存在するのかは分かりませんが」


 探し求めていたものが案外近くにあったのかもしれないと知って、皆は少し複雑な気分になった。そうと知っていれば、わざわざワイバーンを探し回ったりはしなかったのに。


「当り前ですが、『人間界』ですから、そこには『人間』が住んでいます。私はそこで、初めて本物の『人間』を見ました」


 他の悪魔たちと同様に、魔王様もその時までは人間を見たことがなかったらしい。魔王様は、ニエちゃんにチラリと視線を向ける。

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― 新着の感想 ―
[一言] 魔王様は規則違反の行為のことを、さも伝統行事のように言ってのけた。 …………さては魔王様、学園長を閉め出したのはこれが理由だな!(迷推理) 学園長に堂々と言えることではない(笑)
[良い点] 魔王様が生徒達やニエちゃんを想いやっていて良かったです! 学園長とは大違いですね。後、魔王様が昔、泣き虫だった上に 人間界に行ってたこともおどろきでした。 [気になる点] 2つ質問がありま…
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