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一年サタン組のよい子たち、生贄聖女を育てます!  作者: 三羽高明
七日目 一年サタン組のよい子たちは、生贄聖女の友だちです!

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サタン組の覚悟

「……皆……平気……?」


 幸いにも、地面はすぐに水平に戻った。目を回しながらキュリエレーナが尋ねると、暗闇のあちらこちらから、「……うん」「何とかね」等の声が聞こえてくる。


 先程の衝撃でランタンは壊れてしまったようだ。エドが近くにあった枯れ木を集め、魔法で小さな炎を灯すのが分かった。


 そこに集まってきた子どもたちは、顔や手に擦り傷を作り、服はところどころ破れ、ひどい有様である。中には足を引きずっている子もいた。はぐれた子がいないのは不幸中の幸いだろう。


「なおす。みんな、きて」


 ニエちゃんが気遣わしそうな口調で言って、子どもたちを自分の周りに集めた。顔から泥を払いながら、コーマックがルインに、「ここ、森のどのへんかな?」と尋ねている。


「分からない。滅茶苦茶に走り回ったから」


 ルインが首を振る。キュリエレーナは、どうやら完全に森の中で迷子になってしまったらしいと察した。


 しばらくして、無事に全員の治療が終わった。だが、誰も動こうとしない。と言うよりも、動こうにもどちらへ進めばいいのか分からなかったのだ。


「これからどうしようか……」


 誰かがポツリと呟いた。だが、それに答えられる者はいない。


 キュリエレーナは、今更のようにこの計画の無謀性をひしひしと実感していた。


 このままではワイバーンを見つけるどころか、そこら辺の魔物の胃袋に収まってしまいかねない。ニエちゃんを逃がすにしたって、もっと上手いやり方があったかもしれないのにと、後悔がとめどとなく湧き上がってきた。


 恐怖と絶望で皆は憔悴していく。そんなサタン組の子どもたちを見て、ニエちゃんは「ごめんね」と言った。


「わたし、たすける……しようとして、みんな、けがした、です。ここ、あぶない。……かえるみち、さがそう?」


 ニエちゃんの声は辛そうだった。彼女は、皆がひどい目に遭ったのは自分のせいだと考えて、責任を感じているらしい。


 だが、そうと気が付いた子どもたちは、「そんなのだめだよ!」と一斉に彼女の意見に反対した。


「そんなことしたら、ニエちゃん、死んじゃうんだよ!」

「そうだよ! 僕たちはまだ帰れない! ニエちゃんを助けるまでは絶対に!」


 どれだけ絶望の淵に立たされようが、『帰る』という選択肢は、まだサタン組の子どもたちには存在しなかった。


 だって、帰ってしまえばニエちゃんは『生贄』にされてしまうから。それはサタン組の子どもたちにとって、この森で永遠に彷徨い続けるのと同じくらい、起こって欲しくない未来だった。


「私たちは、ニエちゃんを助けるためにここにいるの」


 キュリエレーナは、ニエちゃんを説得するようにその手を握った。


「皆、ちょっと大変な目に遭うくらい覚悟してたわ。……そうよね?」


 キュリエレーナが尋ねると、力強い頷きが返ってくる。それはまるで、ニエちゃんだけではなく、自分自身をも鼓舞しようとしているかのようだった。


「ね? だから、ニエちゃんは自分のせいだとか、そんなふうに思っちゃ駄目。皆がこうしたいって思ったから、こうなっちゃっただけなんだから」

「でもね……」


 キュリエレーナは説得を続けるも、ニエちゃんはまだ納得がいかないようだった。


 だが、彼女は反論の言葉を紡ごうとして口を閉ざした。炎の明かりが届かない闇の中から、聞き覚えのある、「グエッ、グエッ」という声が聞こえてきたのだ。それに気が付いた皆は、真っ青になった。


「まさか、さっきの……?」

「きっと回り道して追いかけてきたんだ!」

「まずいよ! 早く逃げないと……!」


 皆は立ち上がろうとした。しかし、途端にすぐ近くから、低く唸る獣のような声がした。炎の赤に照らされた茂みを縫って姿を現したのは、巨大な狼の魔物、フェンリルだ。


 フェンリルは喉を鳴らしながら、こちらに詰め寄ってくる。キュリエレーナの悲鳴は声にならなかった。皆と一緒に竦み上がったまま、じりじりと後退することしかできない。


「ル、ルイン、念のために聞くけどさ……」


 エドが掠れた声を出した。


「フェ、フェンリルって……こんな見た目だけど、草食だったり……する……?」

「……しない」


 ルインは別の返事ができればよかったのに、と言いたげな声をしていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] ゴブリン(雑魚)とフェンリル(神獣だっけな)の共演! この最前席の駄賃は命なのか!? (訳:絶体絶命\(^o^)/)
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