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一年サタン組のよい子たち、生贄聖女を育てます!  作者: 三羽高明
七日目 一年サタン組のよい子たちは、生贄聖女の友だちです!

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森の中で

 森の中は、ほんの少し先さえも見えないほどに暗かった。キュリエレーナはランタンを掲げ、ニエちゃんと手を繋ぎながら先頭を歩く。皆はその後ろをついて来ていた。


 後方確認はニエちゃんに任せ、キュリエレーナはひたすら前だけを見つめて足を進めていた。


 だが、進む度にあちこちの茂みや木々が影の形を変え、時折それが怪物の姿に見えるものだから、内心は生きた心地もしなかった。きっと皆も同じだろうとキュリエレーナは思う。


 それでも自分たちは進むしかないのだ。キュリエレーナは、帰りたいという弱音がどこからともなく湧いてくるごとにニエちゃんの方を見つめ、自分たちの使命を思い出すということを繰り返していた。


「確か姉さんの話だと、森に入ってすぐのところを流れている小川をずっと辿っていけば、ワイバーンの巣に行き着くんだって。姉さん、実習でそこに行ったらしいよ」


 後ろからは恐怖を紛らわせようとしてか、わざと大声で話すレジーの声が聞こえてくる。彼は年の離れた姉がいるのだ。皆はレジーの姉がもたらしてくれた情報をもとに、ワイバーンを探していた。


「巣かあ……。ワイバーン、いっぱいいるんだろうなあ……」

「何、怖いの? コーマック」

「そ、そんなわけないでしょ! 僕はただ……」


 レジーにからかわれて必死で言い訳しようとしたコーマックの言葉を遮って、誰かが悲鳴を上げた。それがマリリンのものだと気が付いて、キュリエレーナは足を止めた。


「ど、どうしたの!?」


 キュリエレーナは辺りを警戒しつつ、マリリンの元に駆け寄る。


「平気……。暗くて足元がよく見えなくて……」


 ランタンの光りを向けてみると、マリリンの片足が川の中に入り込んでいる。魔物に襲われたのではないと分かって、キュリエレーナはほっとした。


 マリリンは苦笑いして、川の中から上がろうとした。しかし、その途端に彼女の体が傾く。気が付いた時には、マリリンは水の中に落ちていた。


「マリリン!」


 キュリエレーナは、ランタンをニエちゃんに預けて、水の中に飛び込もうとした。だがそれよりも早く、水の中から『何か』がにゅっと伸びてきて、川辺にいたレジーの足首を掴み、マリリンにしたのと同じように、彼のことも水の中に引き込んだ。


 ランタンの明かりが一瞬照らしたその『何か』は、水かきのついた手だった。


「半魚人だ!」


 誰かが叫ぶ。ルインが、「皆、水辺から離れて!」と注意を促した。水中では、魚と同じ下半身を持つ半魚人の影と、小さな少女と少年の影が揉み合いになっている。


「半魚人の嫌いなもの。乾燥、陸地……ええと……」

「のんびり弱点なんて考えてる場合じゃないよ!」


 エドがルインを遮り、コーマックと協力して近くに生えていた木を魔法でなぎ倒し、水の中に落とした。


 派手な水音と飛び散る飛沫。キュリエレーナはびっくりしてその場に尻もちをついてしまったが、驚いたのは半魚人たちも同じだったようで、四方に散っていく様子が見えた。


「レジー! マリリン!」


 ニエちゃんが水の中から這い上がってきた二人を救助する。レジーもマリリンもずぶ濡れで真っ青になっており、半魚人に捕まれた腕や足が赤くなっていたが、命に別状はなさそうだった。


「無茶しすぎだよ、二人とも」


 ルインがエドとコーマックをたしなめた。レジーやマリリンが倒れてくる木にぶつからなかったのは、単に運が良かったからだ。二人は、「ごめんね」とレジーたちに謝った。


「いいよ。そんなことより、先を急ごう?」


 レジーは気丈にも立ち上がると、キュリエレーナの方を見て言った。マリリンもニエちゃんに支えられながら、「そうだよ」と小さい声で言う。


「水の近くは危険ね」


 キュリエレーナは心臓が早鐘を打つのを感じつつ、また同じことが起きて皆を危険に曝すわけにはいかないと、対策を考え始めた。


「川を見失わない範囲で、距離を取りながら進みましょう。あいつらは陸にはあがって来ないと思うし……」


 不意に近くの茂みから何かを引きずるような音がして、キュリエレーナは話をやめた。一行に凍り付くような沈黙が落ちる。


 息をするのも忘れそうなほどの緊張感の中、全員が茂みを凝視していると、そこから現れたのは、重たそうな頭を低く下げた一頭の牛だった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 森に入って早々に魔物の襲撃! しかもまたなんか出た。 まだ小さい子が通う学校をこんな危険な森にくっつけて建ててしまってよかったのか……
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