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一年サタン組のよい子たち、生贄聖女を育てます!  作者: 三羽高明
七日目 一年サタン組のよい子たちは、生贄聖女の友だちです!

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友だちのために

 その日の夜、日付が変わる時間帯に、サタン組の子どもたちはこっそりと学校に集合した。エドが職員室に忍び込み、ニエちゃんの檻のカギを取ってくる。


「みんな……なに……?」


 檻が開けられ、外に出たニエちゃんは、キュリエレーナが持ってきたランタンの明かりに照らされ、不可解そうな顔になった。今までこんな時間にサタン組の子どもたちがやってきたことがないものだから、驚いているようだ。


「あのね、ニエちゃん。私たち、ニエちゃんを助けてあげたいの」


 マリリンが状況を説明した。


「ここにいたら、ニエちゃんはひどい目に遭うの。生贄にされるの。死んじゃうんだよ。だから、今夜中に学校を離れないといけないの。さあ、一緒に来て」

「みんなと、いっしょに……?」

「そう、皆でニエちゃんを守ってあげるから」

 

 サタン組の子どもたちは、一様に決意の籠った表情で頷く。そのただならぬ雰囲気に押されるように、ニエちゃんは、「わ、わかった……」と返事した。


「こっちよ!」


 キュリエレーナを先頭に、皆は廊下を進む。こんな時間帯なので学校には誰もおらず、学園の外に出るまでは順調に物事が進んだ。


「さて……」


 ここからが正念場だ。皆は眼前に広がる学園の裏手の森を見つめながら、事前に考えた作戦を頭の中で繰り返す。


 ニエちゃんは人間界から来た生き物だ。そのため、ニエちゃんが安全に暮らせるのは、故郷である人間界だろうというのは皆にも想像が出来た。問題は、どうやってそこまで行くかだ。


 人間界と魔界は遠く離れているだけでなく、行き来するには専用の『通路』を通らねばならない。


 本来なら魔界の掟によって、『通路』の使用は禁止されているのだが、サタン組の子どもたちはニエちゃんを故郷に帰すために、その決まりを破ろうとしていた。


 『通路』の場所は時と共に変化する。現在デーモン学園から一番近い『通路』は、ずっと東の山を三つ越えた先にしかなかった。とても徒歩で行けるような距離ではない。


 公共の乗り物を使えば早く辿り着けるだろうが、ニエちゃんの姿を誰かに見られるわけにはいかない。そのため、人目につくような交通手段はあくまで避けなければならなかった。


 そこでサタン組の子どもたちは、無謀とも思える方法を取る事にしたのだ。


「ルイン……竜笛、持ってきた?」

「もちろん」


 エドに尋ねられ、ルインは懐を叩いて、しっかり頷いてみせた。


「それ、お父さんのなんでしょう? 勝手に持ってきてよかったの?」

「仕方ないよ。本当のことを言うわけにはいかないんだし。後でこっそり元の場所に戻しておくよ」


 心配そうな顔をするマリリンに、ルインは肩を竦めた。


 竜笛とは、竜族を操る時に使う笛のことだ。珍しい品で、誰もが持っているようなものではないのだが、運良くルインの父がコレクション用に一つ所有していたので、彼は今回の計画のために、それを黙って持ち出したのである。


「じゃあ、行きましょう」


 キュリエレーナが皆を促し、一行は森の中に足を踏み入れた。


 デーモン学園の裏手には、広大な森が広がっている。


 この森には、危険な生き物や植物がたくさん潜んでいて、上級生が度胸試しに使ったりもしているのだが、本来は高等科にならなければ入ることを許されない場所だった。


 それでもサタン組の子どもたちは、あえてこの森の中に入ることを選んだ。彼らはワイバーンを探しているのだ。


 ドラゴンの近縁種であるワイバーンは体が大きく、個体によっては何十人も乗せることができ、しかも遠くまで飛べる。サタン組の子どもたちはワイバーンを利用して、『通路』まで行こうと考えたのだ。


 それでも、ワイバーンは気性が荒く、扱いの難しい魔物である。竜笛を吹けば多少は大人しくなるらしいが、それもどこまで効くのかは分からない。


 修練を積んだ悪魔なら、魔物の方から勝手に言うことを聞くようになるのだが、幼い悪魔であるサタン組の子どもたちには、到底望めそうもない芸当だった。


 それでも、彼らは一刻も早くニエちゃんを魔界から逃がすために、手段を選んではいられなかったのだ。


 本当は皆森に入るのは怖かったし、ワイバーンになんて近づきたくもなかった。それでも大切な友だちを助けるためならばと、勇気を振り絞ることにしたのである。

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