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ブラックテイルな奴ら  作者: 小松広和
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ブランシェさん捕まっちゃうよ

第九十九章 ブランシェさん捕まっちゃうよ


 俺はとっさにブランシェを抱きかかえると大きな声で叫んでいた。

「ブランシェ。大丈夫か!」

「お兄ちゃん、ブランシェさんどうしちゃったんだろう」

「たぶん極度の緊張が続いていたからじゃないかな?」

「大丈夫?」

「とにかく医者に診てもらわないと」

「でも、みんなのところに連れて行ったらブランシェさん捕まっちゃうよ」

俺は思わず天を仰いだ。確かに芽依の言うとおりだ。

「どうしたらいいんだ?」

俺は小声で呟く。

「どうしようお兄ちゃん」

「命には代えられない。医者を呼んで来よう」

俺はそっとブランシェを床に置き小さな声で囁いた。

「少しだけ待っててくれ。今医師を連れてくるからな」

するとその時ブランシェの目が動いた。

「ブランシェ!」

「私は‥‥大丈夫‥‥」

「ブランシェ、気が付いたのか」

「だから‥‥私を‥‥離さないで‥‥」

「少しだけの我慢だ。待っててくれ」

「駄目」

ブランシェは俺の腕にしがみついてきた。意外に力がこもっている。

「病気を治す白魔術は高度すぎて私には使えないけど・・・・」

急に話さなくなるブランシェ。

「おい、大丈夫か」

「大丈夫・・・・」

「おーい。どう見ても大丈夫とは思えんぞ」

俺は思わずブランシェを揺する。

「使えないけど何なんだ?」

「自分が病気かどうかは白魔術でわかる。私は内科的には病気じゃ・・・・」

「何で話が途切れるんだ! 絶対に大丈夫じゃないだろう。今、医者を」

「待って。私に悪いところはない。おそらく食べていないので栄養分が脳に行き渡ってない低血糖状態になっただけ。だから心配しないで」

「十分やばいだろうが! ちょっと待ってろ。すぐ戻るから」

「駄目。立ち上がることだってできるから」

そう言うとブランシェは俺の腕を強く引いて立ち上がろうとして再び寝転んだ。

「お腹がすいて力が出ないよー」

どこかで聞いたフレーズのパクリっぽいが緊急事態なので許されるだろう。

「芽依、飴を持ってるよ。食べてブランシェさん」

「ありがとう」

俺たちは部屋の隅にその辺に山積みされている箱で簡易ベッドを作りブランシェを寝かせた。

「でもよく見つからなかったな。みんな白魔術の痕跡をたどって捜していたのに」

「白魔術を使うとまずいと思って青魔術でバリアを張っていた」

「青魔術ってそんなものが使えるのか?」

「私のお父さんは魔術学校の先生だから昔に教えてもらっていた」

「そうか。それで見つからなかったんだ」

「青魔術のバリアは水の膜だから全ての気配や匂いも消せる。あっ! 私の着ている服は殺菌の魔術で綺麗な状態だから」

そこまでは聞いていない。

「白魔術の殺菌は黒魔術より強力」

「でも、白魔術を使っても大丈夫なのか? 使ったらこの位置を特定されそうな気もするが」

「青魔術のバリアの中では白魔術を使っても外に漏れないので大丈夫」

「そうか。それで見つからずにいたのか」

 その後俺たちは食事のたびに自分たちの食料を少しずつくすねてブランシェの所に運ぶようになった。ほとんど捨て猫を内緒で飼っているのと同じである。

 ブランシェの体力がすっかり元通りになったのは更に三日後のことであった。

「いつまでもこんな生活を続けるわけにはいかないよなあ」

「私のことは気にしないで」

「そうはいかないだろう」

「でも、私がここにいると四郎さんに迷惑がかかってしまう。いっそ捕まった方が」

「お前はスパイだと思われている。捕まって無事に済むとは限らないんだぞ」

「信じてもらえないかもしれないけど、私はスパイじゃない」

「じゃあ、どうして逃げたりしたんだ? 話を盗み聞きなんてしたんだ?」

「本当のスパイを捕まえたかったから。こっそり探っていた。スパイがいたら四郎さんが危ない」

「探っていた?」

「あのメイド三人の様子を探って怪しいところを捜していた」

「それで何かわかったのか?」

「何もわからなかった。でもあの三人以外考えられない。一番怪しいのはホワイティーだと思っていたけど」

するとその時、扉が開く音がした。

「こんな所にいたのね。ブランシェ」

「マリー。しまった! バリアを張ってなかった!」

「四郎が毎日こそこそ出かけるからおかしいと思って後をつけてきたのよ。まさかこんなとこにブランシェを隠している何てね。さあ、ブランシェ行くわよ」

「ちょっと待ってくれマリー!」

「駄目よ」

マリーは有無を言わさずブランシェの腕を引っ張った。

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