やばいことになってきた
第九十七章 やばいことになってきた
その夜、ブランシェは部屋に戻らなかった。そして翌朝。
「お兄ちゃん、おはよう」
「ああ、おはよう」
「大変だよ。ブランシェさんがどこにもいないの」
「そうか・・・・」
「ブランシェさんがいないと芽依困っちゃうよ」
「確かに心配だな」
「違うよ。ブランシェさんがいないとマリーさん暗殺計画が実行できないからだよ」
「何さらっと怖いこと言っとるんだ!」
「お兄ちゃんを芽依から奪おうとする人は消さなきゃね」
どこまで本気で言ってるやら。それにしてもブランシェは昨夜どこで寝たんだ? まさか城の外に出て行ったなんとことはないだろうな。妙な不安が胸をよぎる。
「おはよう、四郎」
突然、マリーが入ってくると芽依は慌てて何かを隠した。何だ?
「ブランシェ知らない? 部屋にいないのよ。朝早くから出かけたのかしら」
たぶん、一晩中いなかったのだと思うがそれは言い辛い。
「さあ、知らないな。ブランシェに何か用なのか?」
「朝から『ブランシェはどこにいるのか』ってお姉ちゃんに聞かれたのよ」
もしかしてブランシェがスパイだと断定して本格的に探し始めたのだろうか。そうだとしたらまずいことになるぞ。
「俺も今、芽依からブランシェがいないと聞いて驚いているところだ」
「そう、もしこの部屋に来たらお姉ちゃんに伝えて。私は暫く忙しくなるから」
「忙しくなる?」
「王位を継承することにしたの。その準備が複雑で大変なのよ」
「王位を継承するって、どうしたんだ急に?」
「王になってしまえば誰も私に逆らえないわ。そしたら私は晴れて四郎と結婚できる訳よ」
「でも、それはお姉さんに注意されていなかったか?」
「王の命令は絶対よ。お姉ちゃんといえども逆らえないわ」
「そんな理由で王位を継承するのか?」
「いいじゃない! 私はどんな手段を使っても四郎と結婚するんだから!」
これまた大変なことになったぞ。ホワイティアの時と変わらない状況になってきた。
マリーが部屋から出て行くと芽依は隠していたノートを取り出して何かを書き始めた。
「何だよそれ?」
俺がそのノートを取り上げて書かれている内容を見て驚いた。
「マリーさん暗殺計画その百五十二?」
「ふふふ、見たわね」
「い?」
「これでお兄ちゃんも暗殺計画員の仲間だよ」
「まさかこれってその一からあるのか?」
「当たり前じゃない」
何かいつもの芽依じゃない!
「同士よ。一緒に計画を成功させ、将来を共にしようぞ。そしてついでにこの国を奪おうぞ」
「おい、大丈夫か?」
芽依がナイフを取り出す。
「な、何!?」
「さあ、この血判状に血印を」
かなり本気だったー! 俺は慌てて芽依から逃げるのであった。