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ブラックテイルな奴ら  作者: 小松広和
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ブランシェはどこに

第九十五章 ブランシェはどこに


 俺は慌てて部屋に戻ると辺りを見回した。やはりブランシェはいない。

「どうしたのよ。慌てて」

「ブランシェは?」

「あなたが出て行って暫くしたらどこかに行っちゃったわ」

まさかそんな。

「どこに行ったか知らないか?」

「知らないわよ」

俺は慌てて部屋を飛び出す。

「どうしたのよ急に」

「ブランシェを捜してくる」

捜すと言ってもどこを探せばいいんだ? 俺は当てもなく廊下を走った。お姉さんの部屋を通って王室の前を通過する。いろいろな人に出会うがブランシェには会わなかった。

「ブランシェ。どこにいるんだ」

早くブランシェに会いたい。そして疑いを晴らしたい。でないと不安が広がるばかりだ。この城内に白魔術を使えるのはおそらく二人。ブランシェとホワイティー。俺は息が切れて立ち止まると廊下の壁にもたれかかって頭を抱えた。

「ブランシェ。なぜいないんだ?」

盗み聞きをお姉さんにばれて逃げてるんじゃないよな。お前はスパイなんかじゃないんだろ? だったら俺の前に現れて『違う』って言ってくれよ。

 俺はぼちぼちと来た道を帰り始めた。もしブランシェがスパイだとしたらいつから俺を騙していたんだ? ホワイティアは俺たちが黒の国に行くことを見越してブランシェを俺に近づけていたのか? だとしたら計画が壮大すぎるだろ。あの結婚式も嘘だったというのか? それはない。現に帰ってこいと行ってきている。だったらブランシェをスパイにするタイミングなんてないはずだ。やはりブランシェはスパイなんかじゃない。でも証拠がない。

 俺が王室の前にさしかかったとき新しい扉の部屋が見えた。扉が開いたままなので中が見える。

「この部屋ってマリーが言っていた造りかけの新居か?」

マリーの趣味に合っている部屋だ。中にはホワイティーとアンジェリカが何やら作業をしている。

そうだ! ホワイティーだ。ホワイティーが俺たちの話を聞こうとしていたのかもしれない。ホワイティーのアリバイがなければブランシェが犯人である確証も下がる。

 俺は慌てて部屋に入るとホワイティーに話しかけた。

「ここで何してるんだ?」

「あら四郎様。私たちはマリー様の新居の飾り付けをしております」

「そんなこともメイドがするのか?」

「力のいる家具の設置とかはもうできておりますので、細かな飾り付けは私たちの仕事です」

「そうなんだ。で、いつからその作業をしているんだ?」

「はい二時間くらい前です」

二時間前ならお姉さんの部屋から盗み聞きをするのは無理か。

「二時間この部屋にずっといたのか?」

「はい、ずっと作業をしておりました」

「一回も部屋を出ずにか?」

「本当っすよ」

アンジェリカがぼそっと答える。これでホワイティーには完璧なアリバイができてしまった。

「ありがとう。気にしないでくれ」

俺は肩を落とし部屋から出る。盗み聞きをしていたのはブランシェである可能性が高まった。

俺が自分たちの居間に戻るとマリーと芽依がもめている。

「あ、お兄ちゃん。マリーさんたら酷いんだよ。ブランシェさんがいなくなったら急に強気な態度になって芽依に命令するんだよ」

「ブランシェの白魔術がなければ私のもんよ。怖いものなんて何もないわ」

「その言葉そのままお姉さんに言うぞ」

「ひ、卑怯よ!」

やはりマリーにとって一番怖いのはお姉さんのようだ。

「お兄ちゃん、ありがとう」

芽依が俺に飛びつく。

「ちょっと芽依! 何してるのよ!」

「ところでブランシェはまだ戻らないのか?」

「どうしてブランシェのことをそんなに気にするわけ?」

マリーが芽依を俺から引き離そうとしながら聞く。

「ちょっと聞きたいことがあるんだ」

「ブランシェが何かやらかしたの?」

「そういうわけじゃないんだが」

「さっきお姉ちゃんにも同じことを聞かれたわ」

そうか。俺がいない間にお姉さんが来て聞いて行ったのか。

「ブランシェは何もやってないよ」

俺はそれだけ言うと芽依から離れソファーに腰掛けた。

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