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ブラックテイルな奴ら  作者: 小松広和
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まさか

第九十四章 まさか


 お姉さんの部屋もそろそろ見慣れてきたな。俺はお姉さんの部屋へ入ると当然のように椅子にかけた。

「妹のわがままにも困ったものだ。四郎君、迷惑をかけているな」

「いえ、俺を好きでやっていることですから悪くは思っていません」

「君はなかなか人間ができておるな」

「ありがとうございます」

「我が国には必要な人物かもしれん。いっそのことマリーと結婚してみるか?」

「突然何を言い出すんですか!」

「ははは冗談だ」

お姉さんの冗談は本当に笑えない。きっと人を笑わす才能がないのだろう。しかし、なぜか冗談を人一倍言いたがるから不思議だ。

「だが国中をあげて結婚の準備に入っておる。今更後には引けない雰囲気だ」

お姉さんは額に指を当てて俯いている。

「冗談でしょ?」

返事は返ってこない。

「あのう、お姉さん?」

「そうか。お姉さんと呼んでくれるか!」

「あ、いやそういう意味では・・・・」

「そこまで決心していてくれたか。嬉しいぞ!」

「ちょっと待ってください」

俺は慌てて両手を前に出して振った。

「ははは冗談だ」

マジ笑えないって!

「で? 話って何ですか?」

俺はため息交じりに聞く。

「ああ、そうであったな。例のスパイの件だ」

「何か進展があったのですか?」

「それが全くないのだ」

「だったらどうして呼び出すんですか!」

「君の周りに変化はあったか?」

「何もありません。城に出入りする人物で不審な人はいましたか?」

「全くいないのだ」

「と言うことは聞き取りを行ったことで警戒をしているってことですかね」

「そうなるのだが、解せぬことが一つある。聞き取りされたことをホワイティアがどうやって知ったかだ」

「すると、あの三人は城から出ていないのですか?」

「ああ、一歩も出ていない。テレパシーなどの白魔術を使った形跡もない」

「するとスパイだと疑われたことをホワイティアは知ることはできない訳か」

俺は天井を見つめて考えた。

 ホワイティアが知らないとするとホワイティアが偶然にメッセージを送るのを控えたことになる。そんなことあり得るのか? しかし、現にホワイティアの使者はこの城に出入りしていない。ということは何らかの方法で聞き取りされたことを伝えているはずだ。

「テレパシー以外で情報を流すことはできないのですか?」

「うーむ。思いつかんな」

「何人も使って伝言ゲームのように伝えているとか?」

「その方法が成立しているとなると黒魔族の中に裏切り者が多数いることになる。あの事件以来、城の者が外出をする際の行き先を見張らせていたのだが、怪しい行動をした者は誰一人としていなかった」

「ますます謎が深まるばかりですね」

「正直、暗礁に乗り上げた感がある」

俺とお姉さんは腕組みをして黙ってしまった。

 するとその時。

「誰だ!」

お姉さんは突然大きな声を上げるとドアを開けて部屋から飛び出した。

「どうしたんですか?」

俺も慌ててお姉さんの後を追った。

「何者かがこの部屋の様子を探っていたのだ」

「どうやって?」

「白魔術で部屋の様子を見ていたと思われる。いわゆる透視術の一種だ」

「白魔術の気配を感じたと言うことですね」

「ああ、しかしメイド達はこの部屋で我々が話していることは知るまい。一体どういうことだ?」

確かに俺たちがここに来たことを彼女らは知らないはずだ。

「誰かに聞いたのかな?」

「知っているのはあの部屋にいたメンバーだ。突然君の行き場所を聞くのは不自然すぎる」

「それもそうですね」

「一応マリー達にも聞いてみるとしよう。ブランシェは私と君が部屋を出て行くところを見ているからおそらく私の部屋に行ったと推測するのはたやすいだろうが」

「まだブランシェを疑っているのですか?」

「すまぬ。ブランシェはスパイの話を知らないのだったな」

え!? 俺の脳裏に嫌な予感が走る。ブランシェはスパイの話を知っている。

『本当は言ってはいけないことだと思うが俺は敢えて言うことにする。よく聞いてくれ。実はこの国にスパイが潜入しているらしいんだ』

と言う言葉が蘇ってくる。でも、まさかそんな。ブランシェがスパイだというのか!?

「どうしたのだ? 顔面が蒼白になっているぞ」

お姉さんが心配そうに俺を見ていた。

「大丈夫です」

俺はブランシェにスパイの話をしたことを言わなかった。いや言えなかったと言うべきか。ブランシェがスパイな訳がない。

「俺の行き先を誰かに聞かれたかマリー達に聞いてきます」

俺はそう言い残すとお姉さんの部屋を出た。

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