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ブラックテイルな奴ら  作者: 小松広和
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マリーの策略

第九十三章 マリーの策略


 小百合が帰ってから数日が過ぎようとしていた頃。最近マリーの機嫌がすこぶる良い。

「ねえ、このテーブルとこのテーブルならどちらが好き? 私はこっちが好きなんだけど、ここは四郎に選ばせてあげるわ」

どちらも豪華すぎて好きではないのだが、どうでもいいことなので俺は適当にマリーが好きだといった方を選んでおいた。

「そうよねぇ。四郎もこちらを選んでくれると思っていたわ。やっぱり私たちって気が合うのよね」

「じゃあ、このタンスは?」

俺は面倒臭くなって顔を上げると芽依とブランシェが食事をするテーブルに座ってこちらを見ながら何かを話している。

「ねえ四郎。カーテンはやっぱり白よねぇ」

「ああ」

「次は一番大切なものよ。私のドレスなんだけど・・・・」

「ちょっとマリーさん」

「どうしたのよ、芽依」

「さっきから聞いていたら妙な流れに話を持って行ってません?」

「どういうことよ?」

「今マリーさんが手にしているカタログ。ウエディングドレスが載ってません?」

いつもの芽依らしからぬ話し方だ。ん? ウエディングドレス?

「おいマリー、どういうことだ?」

「今、王室の横に私たちのスイートルームを造っているところよ。完成したらあなたはここを出てその部屋で私と暮らすの」

「突然何を言い出すんだ!?」

「小百合もいなくなったことだし、もう結婚を決めてもいい頃じゃない?」

「な、な、何―!?」

突然のプロポーズに俺が戸惑っていると、

「そんなのお兄ちゃんがオーケーしても芽依が許さないよ」

「へえ、あなたに何ができるって言うの?」

「力ずくでもお兄ちゃんは渡さない」

「この世界で私に勝てると思う?」

「勝てるよ!」

「じゃあ、試してみる?」

マリーが右腕をあげると、ブランシェが芽依の前に立った。

「何よブランシェ。そこを退きなさい」

「私は芽依の見方。あなたの黒魔術は全て無効にする」

「ありがとう! ブランシェさん」

「芽依。二人で協力して暴君候補を倒しましょう」

「誰が暴君候補よ!」

ちなみに俺は何もできず、ただこの様子を見守っているのであった。

「さあ、四郎一緒に来なさい。建設中のスイートルームを見せてあげるわ」

「お兄ちゃんに触るな!」

「何よ。魔術が使えないなら物理的に攻撃をするまでよ。芽依ぐらいのちびなら楽勝よ」

「ふん、こう見えても私は書道五段なんだからね」

子供のけんかが始まった。マリーには悪いがどう見ても互角だ。身長がほぼ一緒なのだから当然の結果なのかもしれないが、一応小学生と高校生だ。マリーちょっと情けなくないか?

「ブランシェ。この二人をなんとかしてくれ」

「私に任せて」

けんか相手が一人増えただけだった。

「わかった、わかった。三人とも止めてくれ」

「あら? 私と一緒に来てくれるの?」

「お兄ちゃん、行っちゃ駄目だよ!」

「まあ、三人とも落ち着け。俺はまだ誰とも結婚なんてするつもりはないから」

「四郎が私と結婚するのはもう決定事項よ。この国の誰もが知っているわ」

「どういうことだ?」

「お触れを出したのよ。プリンセスが結婚するって」

「おい! 何を勝手に」

「そうだよ。結婚相手の返事も聞かないで決めるのはおかしいよ!」

「いいのよ。次期王である私の言葉は絶対なの」

「お兄ちゃん、日本に帰るよ」

「急に何を言い出すんだ?」

「ここにいるとお兄ちゃんが危ないよ。ねえ、ブランシェさん」

「私はどうなるの?」

「そんなの私が許すとでも思ってるの?」

もう何が何やらわけがわからない。

「お前達またもめてるのか?」

マリーのお姉さんがやってきた。またまた助かったー。

「お姉ちゃん。どうしたの?」

「ちょっと四郎君に話したいここがあってな」

「私たちの結婚のこと?」

「おう、そうだったな。四郎君おめでとう。しかし、よくこんなわがまま娘と結婚する気になったな」

「誰がわがまま娘よ!」

「そのことなのですが、いつから結婚の話が出ていたんですか?」

「三日前だったかな?」

小百合が帰っていった次の日だ。

「それがどうしたのだ?」

「いえ、俺は結婚するなんて一言も言っていませんので」

「どういうことだ? ベチャ・ウン〇」

「いいじゃない。どうせ結婚するんだし」

「なるほど、我が妹が勝手に決めていたことでしたか。どうもおかしいと思っていたのだが。それはすまぬことをした。お詫び申し上げる」

「いえ、お姉さんが悪いわけではありませんので」

「ちょっとー、私の結婚を邪魔するのならたとえお姉様といえども許しません」

マリーが右手を大きく挙げると人差し指が光り始めた。

「ほう、それで? 何をするつもりだ?」

お姉さんが低いトーンで聞くとマリーは右手を下げて、

「ごめんなさい」

と素直に謝った。この二人かなり魔術の実力があるようだ。

「四郎君、報告したいことがある。すまぬが私の部屋に来てくれぬか」

しゅんと下を向くマリーを後にして、俺はお姉さんと部屋を出た。

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