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ブラックテイルな奴ら  作者: 小松広和
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俺は信じる

第八十三章 俺は信じる


「やはり一番怪しいのは白の国から来たホワイティーだ。しかし彼女は経過から考えてもスパイとは考えにくい。では残りの二人がスパイであると仮定すると、考えられるのは君の部屋のメイド以外で白の国から派遣されたスパイが潜入し彼女らに託した場合だ」

「そうですね」

「ところが白魔術の使い手からは微妙ではあるが特殊な反応があるのだ。だが、現時点でこの反応は二名以外出ていない。つまりスパイは入り込んでいないことになる」

「なるほど。あれ? 二名ですか?」

「一人はホワイティー。そしてもう一人は・・・・ブランシェだ」

「まさかブランシェを疑っているんですか!?」

俺の声が自然と大きくなる。

「スパイと決めているわけではない。ただ可能性としてあり得ると言うことだ」

「そんなことは絶対にありません」

「えらく自信があるようだな」

「ブランシェは俺を守るために白魔術を使い続けて倒れたんです。そんな人がスパイな訳がない!」

「倒れたところを見たのか?」

「いえ、それは・・・・見てませんが・・・・」

「では倒れたとどうして知っている」

「ホワイティアが言って・・・・まさか、そんな!」

「大丈夫。スパイかどうか探るだけだ」

「ちょっと待ってください。ブランシェは俺をホワイティアから守って動けなくなったんです。彼女の行動が全て芝居だったなんてとても考えられません」

「君の気持ちはよくわかっている。しかし万が一スパイだったら君自身が危ないのだ。わかるだろう」

俺は俯いたまま暫くの間何も言えなかった。ブランシェの態度が全て偽りだったなんてあり得るわけがない。

「わかりました。調べてください。俺にできることがあれば何でもします」

「おう、そうか。感謝する」

「でも、もし彼女がスパイだったら、俺は誰も信じられなくなるかもしれません」

俺はそれだけ言い残すと、何も考えずに自分たちの部屋に戻っていった。

「ようやく戻ってきたわね。それで? 生命保険には入ったの?」

忘れていた! 俺はお姉さんの部屋に避難していたんだ。

「さあ、最後の言い訳を聞かせてもらおうかしら?」

マリーは腕組みをしてこちらを睨んでいる。答え方次第では本気で最期を迎えるだろう。

「よく聞いてくれ。当然な話だが俺は無実だ」

「だったら何で芽依があんなこと言うのよ!」

「それは芽依の嘘だ。お前を諦めさせる作戦だ。信じてくれ!」

「一緒に寝てたじゃない!」

「違う。それは今までもよくあることだったんだ」

「何ですってー!!!」

「いや、そういう意味じゃない。芽依が小さいときに『怖くて眠れない』とよく俺の部屋に来て一緒に寝てたんだ」

「それは本当?」

「ああ、本当だ。信じてくれ!」

マリーが俺の話を信じかけている。もう少しだ。

「何だったら芽依に小さいときの話を聞けばいい。きっと同じ話をするだろう」

「わかったわ。聞いてみる」

助かったー

 と、その時芽依と小百合が入ってきた。

「あ、ダーリン! 嫁をほったらかしてどこに行ってたの?」

芽依! 変な言い方をするな!

「ぎゃあああああああ!」

もの凄い衝撃が俺を襲う。

「あなた! 大丈夫!?」

芽依が駆け寄ってくる。

「ぎゃああああああああああああああ!!!」

衝撃がグレードアップした。誰か助けて。そ、そうだ。ブランシェ! ブランシェはどこにいるんだ?

あれ? 急に痛みがなくなったぞ? もしかして逝っちゃったのか?

「どうして四郎さんにこんなことするの?」

ブランシェ!

「お兄ちゃん。どうして? どうしてこんなことになっちゃったの?」

「お前のせいだろうが!」

どんな状況であっても突っ込みチャンスが訪れたら的確に突っ込むのが俺のライフスタイルだ。

「今、回復させるからあまり大きな声を出したら駄目」

ブランシェの回復魔術で俺の体はみるみる治っていく」

「ありがとう」

俺は思わずブランシェを抱きしめてしまった。

「ちょっと・・・・」

マリーと芽依の声が小さく聞こえる。小百合は驚いた表情でただ見ているだけだった。

「どうしたの? いつもの四郎さんじゃないみたい」

「あ、ごめん・・・・こんな人がスパイなわけない・・・・」

「え? 何? 何て言ったの?」

「何でもない。突然変なことしてすまなかった」

「あ、まだ離れちゃ駄目」

ブランシェが俺にしがみつく。

「もう、勝手にしなさいよ!」

マリーは大きな声で叫ぶと部屋を出て行った。

「ラブラブ中悪いんだけど、私明日の19時にここを出ようと思ってるの。四郎君は・・・・ううん、何でもない」

小百合の言葉は小さくフェードアウトしていった。

「じゃあ、帰る支度してくるね」

小百合はゆっくりと部屋を出て行く。何度も何度も振り向いて。

「もう、お兄ちゃんが誰と何しようが芽依と結婚するのは決定事項なんだからね」

芽依は走って部屋を出て行った。俺はそっとブランシェから離れようと試みたがブランシェが腕に力を入れてうまくいかない。

「ブランシェ。俺はお前を信じている」

「え? 何?」

ブランシェが俺から離れた。

「本当は言ってはいけないことだと思うが俺は敢えて言うことにする。よく聞いてくれ」

俺はブランシェの両肩を持って目を見つめた。

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