面接、アンジェリカ編
第八十二章 面接、アンジェリカ編
いよいよ三人目だ。名前はアンジェリカと言い、とても美人なのだが、このメイドは只者ではなかった。ノックもせず突然入ってくると、
「一体どうしたんですかー」
と言ってのけた。当然もう座っている。
「実はこの城にホワイト国のスパイが潜入しているらしいのだ。それが誰か今から調べようと思っている」
お姉さんて・・・・もしかして頭が弱いのか?
「あ! それ私でーす」
「それは誠か!」
「冗談よ。冗談」
アンジェリカは口に手を当てケラケラ笑っている。
「冗談はよさぬか。私は信じやすい人間なのだ」
「へー、そうなんだー。単純だね」
これはいくら何でも怒るぞ。何しろこの国の第一人者で王族の一人だからな。ホワイティアなら間違いなく死刑だろう。
「うむ、よく言われる」
すんなり認めた! ていうか百戦錬磨の武将にこんなこと言う奴がいるのか?
「へー、やっぱりー」
お願いだから止めてくれ。お姉さんが突然怒り出したらとんでもないことになる気がする。
「ところで君は一日に何回くらいこの者の部屋に行くのだ」
「三回くらいかな」
「それだけか?」
「だって、あたしはサボるの好きだしー。後の二人がやってくれるからー」
俺はそっとお姉さんに聞いた。
「この城のメイドを雇う時に面接はしないんですか?」
「なりたいと希望してきたものは全て雇うことにしているが、それがどうかしたか?」
これはスパイが楽々入り込むわけだ。
「特にホワイティ―なんかー、一人に方がいいって言う時あるしー」
「すると君は部屋に入るときは誰かと一緒なわけか」
「そうだよ。一人で仕事するの大変だし―」
そう言えばアンジェリカが部屋の掃除をしているのを見たことがないな。
「よくわかった。では、後の三人にも聞いた質問をしよう」
「別にいいけどー」
「もし、ホワイティアがこの城に攻めてきたら君はどうする?」
「そんなの真っ先に逃げるに決まってんじゃない」
こいつはー! 忠誠心ゼロか!
「君の得意魔術は何だ?」
「あたしってほとんど魔術使えないしー。てか、あたしが魔術で人を助けるなんて有り得ないんですけどー」
これを見る限り『ブランシェは本当よくできたメイドだったんだな』とつくづく思う。
アンジェリカが部屋を出ると俺とお姉さんは腕組みをして考えた。
「三人ともスパイをしそうにもありませんね」
「ああ、さりげなく探るつもりであったが失敗したようだ」
それはあんたのせいだろうが!
「だが、この三人でないとなると‥‥誰が」
「ホワイティーはここに来た流れから考えるとスパイとは思い辛いし、今のアンジェリカは一人で部屋に来ていないとなると考えにくいですよね。となるとソフィーナがお金に困ってやってしまったんでしょうか?」
「だが、この三人な中で一番まじめでしっかりしているのがソフィーナなんだ。給金も十分に支払っている。今更お金に困ることはなかろう」
「となるとホワイティ―? でも、あの熱弁が嘘だったら凄いレベルのスパイですよ。わずか八歳の時からスパイとして訓練されていたことになる」
「この三人でないとなると‥‥」
お姉さんは急に黙り込んだ。
「どうしたんですか?」
お姉さんは言いにくそうに俺を見て口を開いた。