面接、ホワイティー編
第八十一章 面接、ホワイティー編
続いてやって来るのはホワイティーというメイドらしい。名前的には一番怪しい。
「今度はスパイのことを言わないでくださいね」
俺は一応念を押してみた。
「ああ、大丈夫だ。さっきは一人目ということで緊張したのだ」
「それを聞いて安心しました」
コンコン。
「ホワイティーです。入ってよろしいでしょうか」
ここのメイドは礼儀正しい人が多いようだ。さすがお城だけのことはある。
「どうして座らぬのだ」
「座ってもよろしいでしょうか」
「あ、ああ、座っていいぞ」
何かいやな予感が・・・・
「実はこの城にホワイト国のスパイが潜入しているらしいのだ。それが誰か今から調べようと思っている」
「お姉さん!!」
俺は思わずツッコミを入れていた。
「おう、そうであった。今の言葉は忘れてくれ」
「私がスパイだと疑われているのですか?」
ホワイティーが過剰反応を示す。
「いや、そういうわけではない。ただスパイがいるとの情報を得たので、そなたではないかと疑っているだけだ」
「ホローになっていませんよ」
俺はそっとお姉さんに告げた。
「今の言葉も忘れてくれ」
「信じてください。私は決してスパイではありません。確かに私はホワイト国から亡命してきました」
え!?
「でもピピプル様から受けたご恩は決して忘れません」
「どういうことですか? よかったら聞かせてください」
俺は思わず口を挟んでしまった。
「はい。私の母は城に駐在する兵士でした」
「お父さんじゃなくてお母さんが?」
「はい、父は専業主夫です」
そうか。この世界ではよくあることなのかもしれない。ちょっと固定観念に縛られていたようだ。俺の中に差別意識が存在しているのか?
「すみません。変なことを言って」
「いえ、別に気にしていませんので。話を続けさせていただきますね」
「お願いします」
「母はある時ミスを犯しました。捕虜の移動中、捕虜の一人を逃がしてしまったのです。王様は大変怒り、母を処刑しようとしたのです。私がまだ小さかったこともあり母は必死で城を抜けてきました。そして城の兵士たちに追われる中、私たち親子は命からがらこの国に逃亡してきたのです。もちろん敵国からの亡命ということで誰からも祝福されることはありませんでした。その時ピピプル様が私たちを擁護するお言葉を国民に伝えてくれたばかりか、住む家や仕事まで与えてくださったのです。更には成長した私を城に招いてくれました。ピピプル様は本当に心の広いお方です。そんなお方を裏切るようなことは絶対にいたしません」
「本当ですか?」
「ああ、おそらく」
覚えてないんかい!
「それは何年前の話ですか?」
「十年前です。私が八歳の時でした」
十年前だと王というのはホワイティアではないか。
「ちなみに白の国が攻め込んできた場合、あなたはどうしますか?」
「もちろん私の命に代えてもピピプル様をお守りいたします。それが一番の恩返しだと思っていますので」
「どんな方法で守るつもりですか?」
「私は自分の命と引き換えに相手の動きを止めることができます。止められるのはわずか十分足らずですが、かなり広範囲の敵を止めることができるのです。もちろん一生に一度しか使えない魔術ですが」
「すごい覚悟ですね。では、ホワイティアとは連絡を取っていないということですね」
「もちろんです。私たちがここに来たときホワイティア様は八歳でしたので実際にあったこともありません」
「なるほど、わかりました」
これで二人目の面接も終わった。ホワイティーはソフィーナ以上にスパイではなさそうだ。あれ? ホワイティアは十年前に八歳って言ってなかったっけ? ということはホワイティアって十八歳なのか!? てっきり23歳くらいだと思っていた。思わぬ発見に驚いてしまう俺であった。それどころではないのに。
「ところでお姉さんておいくつなのですか?」
「何のためらいもなく女性に年を聞くとは君もなかなか強者だな」
「すみません!」
「いや、かまわぬ。二十五歳だ。マリーとは九歳も年が離れておる」
ということは十五歳で国民にホワイティーを擁護する言葉を発したのか。俺も今十五歳だが大変な違いだ。